まじかよ。異世界にも加齢臭って存在するのか・・・。
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異世界に来てから数日がたった。
いまだ救世主として祭り上げられる事に違和感を覚える。
魔法も剣もいまいちだがそれでも皆、根気強く俺に稽古を付けてくれた。
ただ、座学のほうは思いの外はかどった。
元の世界で親父に強制させられていたせいでもあるだろう。皮肉にもあの親父に感謝せねばならない時が来るとは。
「ムーン様。会議の時間です」
俺の名前は抱月だ。しかし、こちら側の者にとってはなかなか発音しづらい様なのでムーンと名乗った。
様をつけるなとも言ったがそれは断られた。
「失礼する」
軽く頭を下げてから、部屋に入る。
戦略会議に俺が参加するのは初だ。いやむしろ、これほどの短期間で参加させて貰えるという方が以上だが。
「よし、そろったな。まずはムーンのために現状確認から行こうか。カッラー、頼む。」
一番隊、隊長のカッラーが腰を上げる。俺に剣の稽古を付けてくれている人だ。
「はっ。現状の兵力は53名。ペイジ様とレックス様、そしてムーン様を抜いた50名は一番隊から五番隊までに編入されています。
トロイト王国は我らの存在を把握していますが、サン・ピエールの王女ペイジ様が我らの元でご存命なのは把握しておりません。
よって王国は我らをそこまで脅威と見なしておらず、たまに兵士間の衝突がおきるぐらいです」
「まぁ真っ向からやり合ったら壊滅するのは目に見えているがな。今後の課題はどうかつての同盟国の協力をあおぐかにある」
レックスがカッラーの説明に付け足す。
「サン・ピエールの兵は皆、処刑されたのか?」
「いや国を捨てた者は、トロイト軍に組み込まれた。その多くは村の衛兵として派遣されている」
成る程な・・・。謀略が俺の頭の中で形作られていく。
元の世界でも自分の出世のために謀略を巡らすのは得意だった。
「なら村を襲おう。兵力拡大を望める」
「それは駄目だ。村を壊滅させれば、さすがにトロイト王国も兵を派遣するだろう。今、奴らと衝突するのはまずい」
「いや、村を封鎖して正義の名の下に作戦を行うんだ。トロイト人の役人と兵士を殲滅し尽くせば、王国に報告されることもない。
元サン・ピエールの兵士には王国再興後に貴族にすると言って仲間にすれば良い」
「私は反対だ。目先の勝利ではなく再興後の事も考えるべきだ。貴族の数が増える事は国が乱れる事に他ならない」
カッラーが口を開く。他の隊長達もそれに続くかの様に頷いた。
「確かにそれは正しい意見だろう。だが、俺は国を裏切った兵士との約束を守るつもりなど毛頭にない。
兵力の規模が大きくなれば、自然と仲間が増える。十分な兵力を確立できたときにそいつらを処分すれば良い」
室内がざわつく。確かに過激な発言ではあるだろう。だが今は騎士道なんぞという下らない精神に捕われている場合ではない。
「皆、様々な意見があると思うが私はこの意見に賛成だ」
レックスが俺を擁護する。結局、レックスのこの一言で村の偵察後、俺の計画を実行する事になった。
「まさか、あんたが賛成してくれるとはな」
皆が立ち去った後、二人きりになった部屋でレックスに話しかける。
「俺も驚きだ。召還された当初、正義とか抜かしていた奴がこんな作戦を立案するなんてな」
「手段がどうであろうと結果が悪でなかったら俺はかまわない。それよりさ—」
俺は異世界に来てからの疑問をレックスにぶつける。
「王女は俺が嫌いなのか」
「あ?」
明らかに怪訝そうな顔をされた。
「いや、ずっと俺の事を睨んでるし、あまり会話してくれないからさ」
やはり加齢臭が原因なのだろうか。王女とはいえ10代の少女、イケメンの救世主が召還されると思いきや人生の荒波に揉まれまくった30代。
そこに加齢臭が加われば嫌われるのも当然だ。
だがレックスは腹を抱えながらおかしなことを言い始める。
「いや・・・お前の発言が可笑しい訳じゃない。王女は本当に報われないなと思ってさ」
「なぜなのじゃ!」
ボフっとペイジが投げた枕がレックスを直撃する。
「いえ。なぜなのじゃと仰られましてもムーンは王女様に嫌われているのではないかと心配しておりました」
「嫌いではない!むしろ・・・す・・・す・・・ひゃぁぁぁ!!」
ペイジは布団に包まってゴロゴロしだす。言葉使いも王女風になっておりどこからどう見ても恋する乙女である。
「私はあの目に恋をしたのじゃ・・・冷たくて相手を射るような鋭い眼光・・・あぁぁぁぁ!!なぜ私の思いがムーン様に届かぬのじゃ!」
「恐らく、王女様が睨んでいるからではないかと」
王女のご乱心を目の当たりにしてもレックスはあくまで冷静に助言を続ける。
組織の手前では指揮者として威厳ある態度を要求される王女。それが解放されるのはこの一時しかない事をレックスは知っていた。
「睨んでいるのではない!見つめているのじゃ!これもそれも・・・御主のせいじゃ。どうせ、御主がムーン様に良からぬ事を吹き込んでいるのであろう!」
「だとしても、王女様の視線は些か鋭すぎます故」
ペイジはうわぁぁぁぁんと奇声を上げながらレックスに手当り次第者を投げつける。
一方レックスは真顔でそれを受け止めていた。これが彼女とレックスの日常であった。
前書きの意味が分からなかった人は人虎伝を読む事をお勧めします。
評価して頂けると作者が発狂して虎になります。ご注意ください。