やべぇ、自殺する前に嫁さん抱くの忘れた!
!駄文注意報!この小説には駄文注意報が発令されております。三島由紀夫や太宰治を愛してやまない純文学大好き系読者様がお読みになられると吐き気や腹痛を発症します。ノロウイルスと大変症状が似ております。ご注意ください。
ネオンはどこまでも強欲だった。
どこもかしこも光り輝き、一片の闇すら許さないとでも言うかの様にその存在を誇示していた。
俺はその光に呑み込まれそうになり軽いめまいを覚える。
今はただ、落ち着きたいんだ。
光よりも闇の中に包まれながら。
親の言う通りに勉強を続け、良い大学を出て、大手銀行に就職した。
出世コースからはなんとか外れなかったし、婚約者もできた。
「何だ良い人生じゃないか。今、以上に幸せになりたいなんて強欲だなぁ」と人は言う。
確かに良い人生だ。出世のために上司に膝を屈し、必死に自分を取り繕い、仲間を蹴落とす。
嗚呼、死にたくなる程、良い人生だ。
ならいっそ・・・。
俺は上の空で交差点をよぎる。つんざくかんばかりの女の悲鳴。
まばゆい光が俺を照らした。
2tトラックが俺を跳ね飛ばす。
体が宙を舞う。走馬灯こそ見なかったが、代わりに些細な事を思い出した。
昔、ゲームが好きだった。勇者になりたかったんだ・・・俺。
尤も隠れてやっていたゲームは全て親に没収されたが。
「くだらない。お前は自分の人生だけを考えれば良い」父の口癖だった。
お父さん・・・俺はあなたの事が大嫌いでした。そう、こぼして口端を吊り上げる。
それとほぼ同時に地面に叩き付けられ俺は死んだ。
「はぁ・・・ッく・・・はぁ・・・ッッ!!」
一体なんなんだ。現状が把握できない。
確かに俺は死んだはずだ。
東京都S谷の交差点。2tトラックに衝突し、地面に叩き付けられた衝撃で。
その後まばゆい光に包まれ現在に至る。
推測するにここは天国・・・いや、俺が送られたという事は地獄か?
だとすれば俺を睨みつけているあの女は鬼ということか。
鬼には角があって赤か青だとばかり思っていたが。
するとあの大男は閻魔か。自ら出迎えてくれるとは関心だ。
「男、俺が分かるか?」
日本語とは明らかに異なる言語。だがなぜか俺には理解できた。
「ああ、問題ない。あんたが閻魔か。
俺は閻魔というのは赤くてもっと恐ろしい外見とばかり思っていたよ」
男は俺の言葉に眉をひそめる。それから意味を理解したのか急に笑い出した。
一通り笑い終えると彼は真面目な顔で俺に真相を告げる。
客観的にはもう一度、生きられるから幸せで、
俺にとってはまた生きなければいけないという最悪な事実を。
「残念だが、ここは地獄ではない。ましてや天国でもない。ただの異世界さ」
その後、俺はここが異世界だとなんとか信じる事ができた
いや、信じる事がができた事にそもそも驚きだが、あんな魔法や見た事のない動物を見せられれば信じざる終えないだろう。
それと同時に、自分の立場も把握した。
どうやら俺は救世主らしい。王国ではなく反王国派の。
「驚いた。転生したら王国の勇者になるとばかり思っていた」
「ふっ、王国の魔導士だけ召還ができるわけがなかろう」
大男、いや組織の副団長、レックスが口を開く。
確かに一理ある。俺は、たまたまこちら側の魔導士に召還されたという訳か。
「一つだけ、聞いても良いか?」
ここが異世界なのは分かった。自分も現状も理解した。
だがこれは、この世界で・・・いやこの組織で活動するためには聞いておかなければならない事だ。
「この組織は何のために国に反旗を掲げている?
元の世界ではいろいろあくどい事をやってきた。だからせめてここでは、正義のために動きたい」
「それは正義をどの方向から捉えるかによるだろう。我々は王国からしたら間違いなく悪だが、ここにいる皆のは正義を信念に活動している。
そもそも。異世界から召還された御主は現状逆転の切り札となりうる。貴様が正義じゃないので参加したくないという理由で解放するわけにはいかんよ」
団長である赤髪の少女ペイジが口を開く。
「だからこそ聞きたいんだ。納得して組織の活動に参加するために」
ペイジが俺を睨む。恐らく10代の少女とは思えない鋭い視線。
だが。俺は目を逸らさなかった。逸らしたら負けだと思った。
「レックス。話してやれ」
そう言って少女は部屋を後にする。
その後、俺はレックスから大まかな説明を受けた。
短く言えばこの組織の目的はサン・ピエール王国の再興だ。
そしてペイジを女王として擁立する事だという。
かつてサン・ピエール王国を滅ぼしたのはトロイト王国。
長い間、両国には亀裂が生じていたのだが交渉に来たのトロイトの使者をサン・ピエールの兵士が早まって刺し殺した事によって大戦は決定的となった。
両者の軍事力は拮抗していた。しかしトロイト王国が勇者召還を成功させたことによって一気に戦局が傾いた。
結果はトロイト勝利。王や妃は処刑された。しかし数名の兵とレックスは王女を守りながら城の脱出に成功する。
「王女の侍女であり無二の親友であった者が王女の身代わりとなり処刑された。王国再興は彼女の願いでもある」
この目的は明らかに正義ではないだろう。しかし悪という事もできない。
この不条理さがこの世界が現実だという事を俺に知らしめた。
一話目はシリアス重視でした!二話目からほのぼのも入って参ります。
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