平凡な私の、よくある失恋話
平凡な女の子の失恋話です。
失恋と思っているのは、彼女だけ?
ーなんでこうなったんだろう?ううん、いつかはって、分かっていたことじゃないかー
涙を流すな、前を向け!
自分を叱咤する。先ほど目撃した光景を思い出しては、泣きそうになる自分に。
つい、5分前。道路の反対側を歩いている男女2人に目を見開いた。通り過ぎていく人が振り返るくらいの、美男美女だ。お似合いだな、ティーンズラブ漫画が好きな自分なら、そのままその美男美女で妄想でもしそうなくらいだ。
自分の知り合いじゃなければ。いや、知り合いって言うよりその男性は、自分の、いわゆる、彼氏、じゃなかったか?
付き合って5年になる。知り合ってからはもっと。近所で、幼稚園から知っている。中学生2年生までは、友達のように接していた。できなくなったのは、3年生にあがり、受験という難関にぶつかり始めた頃。
もともと彼は、見た目がよかった。両親の良いところを存分にもらっていた。運動もできた。2年生のころ、バスケットのせいか、いや、父親が背が高いから遺伝かな、背も伸びた。
そりゃあ、周りがほっときません。キャーキャー言われてました。彼はその女性のキラキラした眼差しを、笑顔で、爽やかに、受け止めていた。
私は、まぁ何もかも平凡な、普通の女子で。
そんな平凡な私が、スターと友達なのだから、喜べばいいのに、なんだか、くやしくて、もどかしくて。
それから、ちょっと疎遠になった。
なのに、なぜか高校も一緒で、相変わらずスターの彼は、高校デビュー?(ちょっと意味違う?)なのか、女性をひっかえとっかえ。サイテーな男のはずなのに、次々に手を挙げる女子がいるもんだからいけないのだ。その時の私は、彼には嫌悪感すら抱いていたのに。
ただ、ー教室の、校庭の、中庭の、体育館のー
それは、隅っこだったり、人垣の後ろからだったり。ともかく、彼からは見えない所から、見ていた。
そんな、昔の友達だった、くらいの関係が、なんで彼氏、になったかは、まぁ、今更言っても、なんだけど。高校2年の終わり頃、私の人生の大転機が訪れた。
でもー彼氏ーになったからと言っても、彼が変わるわけもなく。ー彼女ーの私が、こんなんだから、群がる女性達を追い払えるわけもなく、いつも彼の周りには女性の、ー友達ーがいて。
だけどね、彼は、私を一応、彼女らしく接してくれた。学校の行き帰り(近所だからね)はいつも一緒だったし、休みは、部活がなければ(バスケット部ね)、恋人らしく映画とか、夢の国テーマパークとか、デートした。上の名前で呼んでいたのも、下の名前で呼ぶようになった。一緒に勉強して、一緒の大学に行った。手をつないだ。キスをした。
私のハジメテは、全部彼だった。
だけど、だけど、どこかで、卑屈な私はいた。
漫画みたいにはいかない、どこぞの平凡な女の子に、キラキラの王子様があらわれる、みたいな、ありきたりなストーリーが現実にはならないことを、自分に言い聞かせていたのだ。いつ彼に捨てられても、みっともなく縋ってしまわないようにって自己防衛してたのだ。
で、冒頭に戻る。
その日、彼と会う約束だった。数日前までは。
「ごめん、その日用事ができたわ。」
「そうなの?そりゃ残念。」
「あー、ちょっと、ほら、淳とさ」
「あー、淳君ね、そっかぁ、いいよ、友達は大事にしないとねぇ」
「うん、まぁそんなとこ。悪いな。」
彼の親友の淳君が、最近彼女とうまくいってないらしいことは、チラッと聞いてたし、愚痴やら、相談やらあるのかな、そりゃ友達優先だよねって。デートはお流れになった。
暇になった休日をどうしよう、漫画あさりに行こうかな、服見に行こうかな、って出かけなければ良かった。満面の笑顔の彼と、微笑む美女のツーショットに出会わなかったのに。腕なんか組んじゃってさ。
親友と会うって言っといて、違う彼女とデートかよ。
いつ、捨てられても、って思っといて、現実を目にすると思考は停止するものだ。追いかけて、パンチの一つでもお見舞する根性があればな。
でも、今の私は、打ちひしがれて、泣きそうに立ち尽くしている。そりゃあ、あんなイケメンの男がいつまでも私なんかに満足するわけないよ、高校時代のアイツを思い出して!たくさんの見目麗しい女子と付き合っていたじゃないか!
どんどん自分を卑下して、捨てられることを納得しようとしていた。
意地なのか、なけなしのプライドなのか、10分立ち尽くした後。涙は流さず、自宅に帰った。
で、小一時間。自分の部屋で泣いて。ちょっと考えて。
よくある漫画のよくあるパターンで、彼にメールした。
[今日貴方を見かけました。今までありがとう。さようなら。]
平凡な私の、よくある失恋話。
初投稿
読んで頂いた方。ありがとうございます。
次は、彼視点。ちょっとR要素ありで。