ソフトクリーム
梨鳥家は、シチューを、カレーと同じようにご飯にかけて食べます。
ご飯派はいても、器は別々とか、パンだろ派とか色々派閥はあるかと思いますが、作ってよそってテーブルまで持って来て貰えるなら、器別だろうがパンだろうが甘んじて受けます。
ただ、ベストはライスオンザシチューです。
なのでしゃびしゃびのクリームシチューは駄目です。
こてこて煮詰めた濃い味のドロドロが良いです。
自作自演する食には、品とか見た目とか気にせず、ひたすら白米に合うか、合わないかを己に問い続ける梨鳥です。
さて、シチューにはパン派の胸を掻き乱しつつ、本題です。
【教習所の先生】
Twitterで仲良くして頂いている方が、運転が不慣れと仰っていて、思い出した話。
ちょっと身の上話っぽいのでイヤですが、字数が寂しくなるのでこんな話から始めます……
梨鳥の実家は女なぞ高校卒業でいいじゃないか、という原始時代の狭間にあったので、梨鳥は商業高校を卒業しました。
そして、やっぱり文学を勉強したかったのですが、文学なにそれオイシイの? 大学なんぞに金は出さんぞと言われまして、そこをなんとかしてケロと頼みまくって、前借で短大ならヨシ、とギリッギリでお許しが出てなんとかそれっぽい短大へ入ったのですが、毎月払わなくてはいけないお金をバイトで稼ぐ為に文学どころでは無かったよ。なにしに行ったの梨鳥。
今思えば自腹なら大学へ行けば良かったYO!
なので、運転免許なんて、そんな余裕ないなぁ、と諦めていたのですが何故か「免許はとらなかん」みたいに協力的で、お金も出して貰えました。というか、ゴリオシでした。
梨鳥、『学んできなさい』と協力して貰えたのが嬉しくて嬉しくて、勇んで教習所へ行きました。
その二年位前に、よしぴろが免許の試験に一向に合格しなくて父を激怒させ、やや病んだ時期があったので、さぞ過酷な所なんだろう……教習所恐ろしや……と思っていました。
ちょっと逸れますが、梨鳥の父は辛さが売りの台湾ラーメン店へ行き、
「おいおいお~い、(へいへいへ~いみたいな感じ)マイルドな匂いだなオイ! 大丈夫きゃ~!? オイオヤジ、店で一番辛いの持って来い! 辛く無かったらわかってんだろうな!」
と憎たらしい&面倒臭い感じで店主に絡み、ラーメンが到着して啜った瞬間、あまりの辛さに咽込み
「辛!? なにしやがるこの野郎!」
と激怒する人です。家族は止めません。止められません。でも、店主に
「オメーが激辛頼んだんだろうが!」
と一括され、「んだよ……」と急に勢いを無くし涙目で食べる、そんな人です。
そんな父の激怒は避けたいので、梨鳥はワンパン合格をしなければなりません。
よしぴろは試験会場の傍に「合格の呪文を唱えてくれる人がウロウロしてるから、その人に千円払うと良い」とアドバイスをくれましたが、別に教習所に通って見ればなんも難しい事はなかったのでその呪文屋さんのお世話にはなっていません。
さて、ようやく教習所のお話しです。
ちょっと父の日が近いので台湾ラーメン屋の話をしたくなってすみませんでした。
教習所には、先生がいます。
この人たち本当に度胸あるな、運転したことない人の助手席に座るなんてクレイジーの極みだと思っていましたが、あちらの席にもブレーキがついてるんですよね。
事務的に乗って、事務的に教えて下さる方が梨鳥は好きでしたが、なんか、常にわくわくしてる先生が苦手でした。
減速が遅れたり切り返しのタイミングをしくじったりすると『ひゃっは~!ダメダメ!』と、やたらテンションをあげるので、穏和な梨鳥も「殴ろうかな」と思わず思ってしまう先生でした。
高速道路体験と急ブレーキ体験の時間が一番好きと言っていました。
危ないシーンを求めてやまない姿勢で今も生きているのでしょうか……。
なので、高速道路体験は華麗に彼のコマをさけ、別の先生のコマをバイト休んでまでして取ったのですが、彼が一番心に残る先生になりました。
その先生はトンパチと呼ばれていました。
トンみたいで、目がパチクリしていたからです。
トンパチと、三人の生徒が乗り込み高速指導が始まります。
たまに見かける女の子と、ちょっと梨鳥より上な感じの初見のお兄さんと、梨鳥です。
同乗する女の子と、先生が来る前によろしくね~! などと話していたら、彼女が
「そう言えば、最後に寄る○○パーキングで、美味しいソフトクリームがあって、頑張ったね、って先生が奢ってくれたって、友達が言ってた」
と言いました。
なんと、そのソフトクリーム神、聞けばテンション高男先生だと言うではありませんか。梨鳥が悔しがっていると、
「でも、トンパチも人良さそうだし、他の先生でもその話聞くから、きっと食べれるよ」
「そうかな! 楽しみ」
しかし、いざお目当てのパーキングに着いてちょっと休憩となると、トンパチは「○○分にここに集合」と言って、ササッと消えました。
「トンパチ(ソフトクリーム)がいない!」
梨鳥たちはがっかりして、オープンテラスみたいな場所へ行きました。
すると、隅っこの席で、トンパチは独りでソフトクリームを舐めまわしていました。
「うわ、トンパチ……」
「てゆーか、口の周りヤバくない?」
トンパチはクリームを口の周りに沢山つけていました。
○○分まで時間は其ほどないので、我々に素知らぬ顔で合流するために急いで食べているとしか思えませんでした。
「……なんだアイツ」
「ちょ、どうする?」
と夢破れた(でもトンパチは悪くないのですが……)梨鳥と女の子が眉をしかめていると、お兄さんが
「怖いよ……オレ買ってくるから!」
と、買って来てくれました。
梨鳥たちは目がハートです。
今までソフトクリームに夢中で視線にも入れて無かったクセに、急にカッコ良く見える不思議。
ソフトクリームで女の子二人釣れたお兄さんですが、カノジョがいたので、帰り道で二人にブーイングを受けました。
女の子ってホントどうしようもないですね☆
ああ、テンション高男先生にすれば良かったです。
今となっては楽しい思い出です。
ソフトクリーム……食べたいです。