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愛はナイフになる

『ママ、ゾンビって骨が無いんだよ』


と、息子に言われたので、根拠を問うと


『〇〇君が言ってた』


出た出た~、〇〇が言ってたとかアテにならん話はないかンな、と、「ゾンビに骨はある」派の梨鳥、翌日登園時に〇〇君に


『〇〇君、残念だけど、ゾンビに骨あるよ』


と伝えました。

昨夜、反論を予想して「何故オバサンは、ゾンビに骨があると思うのか」を、園児にも解りやすいよう、寝る前に頭の中で考え、心の中で一人問答を何度も繰り返してちょっと寝不足な梨鳥に、〇〇君はアッサリ「わかった」と、頷きました。

「ブロックを誰よりも高く積めるか」に夢中な彼の表情は『どうでもいい』でいっぱいでした。


目の前のものに夢中の姿勢、見習わなくてはいけないな、と思いました。

御託を述べた途端に森羅万象が面白く無くなるって、わかってたはずなのに、梨鳥いつの間にかその事忘れてたよ!

〇〇君、ありがとう!!



さて、ハートフルな話はここまでです。

今日は愛する者を愚弄された時のお話です。

ずっと書きたかったのですが、中々その時のテンションになれず書けずにいました。

結構前の話になりますが、暇つぶしに聞いて下さい。


去年の夏に、旦那の両親が子供を一日キャホーしたいというので「一日と言わずに一か月くらいどうぞ」と言いたいところをグッと堪えて、夫婦でキャホーとドライブに出かけました。

別に旦那はキャホーじゃなかったかもですが、梨鳥はキャホーでした。

梨鳥がキャホーなら旦那もキャホーだと思いたいので、旦那もキャホーだったかもです。

さておき、大人だけなら、多少並んでいたり、大人だらけだったりする飲食店に身軽に飛び込んで行ける!

という事で、通りがかったちょっと並んでいるラーメン屋へ立ち寄りました。

看板には『肉辛みそラーメン』の文字が迫力のある毛書体で如何にも『肉辛みそ』を強調して殴り書きされています。

お腹も空いていたので、梨鳥のテンションはマックスです。

「肉辛! 肉辛!! 辛さ調節にんにく唐辛子!!」と大興奮でした。

どの程度の辛さから始めるか、否、まずは調節をせずに出されたスープを一口飲んで、店の「これがベスト」のレヴェルを見てやろうではないの、しっかし、うあああ~肉辛みそとかマジでそそるな、コノコノ!

と、地蔵の様に寡黙な旦那の横で一人はしゃぐのすら苦ではない程でした。

しかしですね、席に着いた途端小さなスタンドメニューが目に付きました。


『酸辣湯はじめました』


梨鳥はですね、酸辣湯がラーメンの中で一番好きです。その上を行くのは甘味が一切抜けたサンホン麺なのですが、漢字が一緒だった気もするのですが、とにかく〇〇屋のサンホン麺を愛している。文章が乱れるほどに。

数多の食べ物の中でも群を抜いて酸辣湯は順位トップクラスです。

受刑前に選ぶと思います。

口の中があの味で終わるなら本望です。

酢に唐辛子。または、唐辛子に酢。

刺激+刺激。最高。片栗粉のとろみが舌にまとわりついて刺激が長持ちするのも良いです。

この刺激からはサラッと逃れられんぞ、つらいか……? しょうがない、ちょっと甘味を加えてやろう……甘酸っぱいであろう、しかしやはり辛味でジンジンするであろう、ン? ククク、どうじゃどうじゃ……的な……ああ、グッジョブ……好き。愛してる。愛してる。アイワズスーパーエム。

肉辛みそ? ハンッ、しょーもない! 

迷わず酸辣湯麺を注文しました。

選択肢など酸辣湯を前にすれば一瞬で蒸発するのです。


しかしですね、結果を先に言うと、超絶クソ不味いドブ水みたいな酸辣湯麺が来ました。


メジャー麺では無い分、一般受けを狙ったのでしょうか。

辛味も酸味も控えめ、にも関わらず、佐藤さんが幅を利かせまくっていました。

佐藤さんは酸辣湯の場合、スパイス的な、そういう役割をしなきゃいけないのに、我が物顔で甘味を主張してきます。

酸辣湯はスイーツではありません。

酸辣湯の主戦力はラー油と酢のダブルヒーローなのです。

それなのに、10話の内せいぜい2話くらい出ていれば良い佐藤さんを前面に出すとは何事でしょうか。

稚拙【あなたはカッパと恋に落ちます】でも、カパ郎と里緒奈の恋模様を描かなければいけないのにエロガッパが前面に出て来てブクマが減り続けている。

頭に来ました。

幸い、酢がテーブルに備え付け調味料としてラー油などと並べてあったので、二十週くらいまわしかけました。ラー油も鬼神の表情でぶっかけました。

多少マシになりましたが、怒りは収まりませんでした。

こんなのは酸辣湯じゃない。

これを初めて口にした人が「うわ、なにこれ酸辣湯やべぇ」ってなって他の店でも酸辣湯を避ける様になったら・・・?

いつしか酸辣湯は売れない→販売しない→梨鳥の口にお届けが出来なくなる!!

そうなったらもう、ディストピアですよ。ディストピアの意味あんまわかりませんが、そういう雰囲気の世界ですよ!!

受刑する時にどうしてくれるんですか?


と、ムラムラとした怒りが収まらなかったので、ご意見アンケート用紙にこの熱いパトスを書きこむことにしました。今までそんなものを書いた事が無かったので、とても緊張しました。

しかし一言欄が小さすぎる。

一言で言うなら「不味い」ですが、何故まずいのか、どうしたら改善するのか、そして、取りあえずこの絶望的な消費者の気持ちをぶつけさせて欲しい。

なので、(裏へ続く→)と記載し、B5用紙いっぱいにもてる筆力すべてを入魂して書き連ねました。


凄く不味かった事。とにかく不味かった事。ここまで食べ物を不味いと思ったのは以前メイド喫茶で出たヘドロの様な珈琲くらいだった事。しかし、あれは飲み物な事。

特に不味いと思ったポイントは、佐藤のヤツが大きい顔をしているからだという事。

酢を二十回回し入れた事。

(そのせいで隣の奥さんに、ジッと見詰められた事。味覚障害なんじゃないかと思われたかもしれないと不安な事)

辛味が完全にやる気が無い事。辛味の涎かこれは? くらい辛さに隙があった事。

旦那の肉辛みそをつまみ食いした結果、この辛味くらいはせめて欲しいと言う事。

今後の酸辣湯の行く末についての不安。

〇〇区のラーメン屋の酸辣湯を見習ってほしい事。

〇〇屋のレベルまで行かなくてもいいが、バー〇ミヤンレベルに位はなって欲しい事。

そして、バー〇ミヤンの酸辣湯より二百円高い事。(これについては佐藤さんへつぎ込んでいる分を減らせばなんとかなりませんか、という事)

肉辛みそラーメンにすればよかったと思った事。


それはもう、魂を削って書くとはこういう事だな、と初めて実感した出来事でした。

こうして初めてクレーマー体験をしたのですが、「なろう」感想欄でもたまにお見かけしますね。

もしかしたら、本気で文章が好きな人の魂の叫びかもしれません。

といっても、そこは佐藤さんと仲良くしたい梨鳥です。








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