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書店男  作者: 桝田空気
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お問い合わせ死闘篇

どうも、桝田空気です。


ワタクシ、実は書店員をやっておりまして、毎日本屋さんで働いております。


本が好きなので、本屋さんになったー!という、ケーキが好きでケーキ屋さんになったー!みたいな、非常に単純バカな理由でこの仕事につきました。


しんどいことも、いろいろとありますが、まあ、なんとか楽しく働かせてもらっております。


今回はみなさんに、本屋さんの日常というものを、少しだけご紹介させていただきます。



さて、我々書店員は、一日に何回も、お客様から本のお問い合わせを受けます。



雑誌の発売日やコミック、小説の在庫確認。定期購読の申込みなどいろいろありますが・・・。やっぱり一番多いのは、



「○○という本はないですか?」



といったご質問。



タイトル、作者、出版社。


この3つがわかればお店の検索システムにかけて、在庫状況、いまお店にあるかどうかを調べることができます。



しかし、たまにこんな困った質問もあります。



「テレビでやってたアレ、あの本ない?」



タイトル不明、作者不明、出版社不明。



手がかりは、テレビでやってたアレ。



それだけの情報で本を探せと平気で頼まれます。ここでワカルカボケフザケンナコラと逆上してはいけません。ここは落ちついて、お客様にいろいろ質問して、どんな本かを特定するのです。



「どんな番組でその本を知りました?」

「NHKなんやけど」

「NHKテキストですかね?基礎英語とかきょうの料理とか」

「いや、ドラマなんやけど。昔の、武田信玄のやつ」

「大河ドラマですか?風林火山」

「そうっ!それ、思い出した!風林火山、それの原作がほしいんやけど」



ここでどうにか、その本が井上靖の「風林火山」だと分かります。



こうして根気よく質問を繰り返し、手がかりを見つけられれば、多少無茶な問い合わせでも対応できるのです。



しかし、中にはこんな強者もいます。



「あのな、すげえ本なんよ!その、ほら、あれ、すげえ本!ある?」



タイトル不明、作者不明、出版社不明。



手がかりは、すげえ。



ここでワカルカボケブッコロスゾコラと、お客様の胸ぐらをつかんではいけません。冷静に、質問です。



「どこでその本のこと知りました?」

「忘れた」

「ほら、何か広告で見たとか、テレビで紹介されてたとか」

「知らん」

「・・・・・・どんなジャンルの本ですかね。マンガですか?小説ですか?」

「だから知らんて。とにかくすげえ本なんよ。わからんかなあ?」



・・・・・・さすがにお手上げです。探せないものは探せません。



そのことを伝えて、お客様にあやまります。するとお客様は顔をしかめ、

「何や、使えんなあ」

と舌打ちをもらし、お店を出ていかれます。



ここでお客様に真空飛び膝蹴りを喰らわせ、掌底で殴り倒し、床にはいくつばらせ踏みつけながら、

「ほらすげえ本がほしいんだろ!?これなんかどうや!どや!」

と叫び、お客様の口内に「壇蜜写真集」をぐりぐりとねじこんでさしあげたいという衝動に襲われますが、行動にうつしてはいけません。じっと我慢です。



でも本屋さんだって人間です。あんまりこんなことが何度も続くと、頭がクルクルパーになって何をしだすかわかりません。



これを読んでるみなさんは、本屋さんに本を探しにいくときは、どんな本を探しているのか、きちんと特定してから問合せをするようお願いします。







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