ご。
「――ぇ! ちょ――! ――ばっ!」
俺の耳に途切れ途切れではあるが、椿の声が聞こえてきた。
「ねぇ! ちょっと!」
今度ははっきりとした音声。寝起きに大声を出されるとイライラするのと同じく、耳の奥までその声は響き渡る。かなりウザい。
「起きなさいっていい加減っ!」
何故か二の腕を叩かれる。何で二の腕、何で。
「……な、なに」
俺は、虚ろな目を無理矢理開けて辺りを確認してみる。
やっぱりだ。
そこは俺の予想通り、自室。――そう、ゲームを開始した時のあの部屋だった。
……なるほど、ゲームクリアだったのか。
「ちゃんと目覚しなさいよ! ほら早く」
隣の椿に頬をぺちぺちと叩かれる。
「あぁ……ああ、わかってるからやめろ」
「わかった? ならやることはひとつね」
「やること?」
ゲームクリア後のこの余韻にやることなんてないだろ、いずれにせよもう少し休ませろよ。
「やることなんて決まってるじゃないの!」
何言ってんだよこいつ。何が言いたいのかさっぱりわからない。
それが俺の顔にも表れていたのか、椿は続けて言った。
「ゲームよ、ゲ・エ・ム」
「……はぁ」
「わかった?」
――なるほどね、ゲームね、ゲーム。
え? ゲーム?
「…………はぁん? お前今俺ら何し終わったあとだと思ってるんだよ? ゲームだぞ。ゲーム終わった後に立て続けにまたゲームか!? えぇ!? お前そうやってまたゲー――――」
すぽっ、と。何かが俺の頭にフィットした。
耳を覆うこの感触。
…………これはっ!
「ああっ! お前!」
と、言うが早いか――。
そして、残酷かつ理不尽にも俺は、またもや再び視界が暗転することになる。
5でしゅしゅしゅ