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適当なノリで適当な冒険を  作者: 行方 行方
あーるぴーずぃー
4/9

④。


 ――RPGの王道というのは。


 雑魚敵を倒し、まず最初は小ボス。

 それから中ボス。

 そしてラスボスという流れで倒していく。


 その過程を楽しむものである。


 だがこの過程が当然、テンプレート、当たり前だと、誰が決めただろうか――。




   ■ ■ ■ ■ ■




「ねぇ……ミスト? これってやっぱり――」

 魔王城だよね? と言いたかったのだろう。だが、その言葉にミストが割って入る。

「街だよー」

 街だよーじゃねぇよ。明らかに真ん中に黒々とした城があるじゃねぇか。

 ミストにはそれが普通だからだろう、まったく気にする素振りはない。


 いや、異常なのはこのだらだら少女ミストではなく、俺達だろう。

 魔王は最後に倒すものだ! と勝手に決めつけ、弱い敵から順に悪を滅ぼしていく。

 だが、冷静に考えてみれば最初に敵の指揮官である魔王を倒せば、軍勢をまとめ命令を下す者がいなくなるということであり、簡単に敵の士気を下げ混乱に陥れることができるはずだ。

 でもそれはドラマ性に欠ける。RPGというのは主人公が段々と敵を倒しつつ成長していき、最後に魔王を倒すことが主軸となるゲームだ。

 それなのに最初から目的の魔王を倒してしまうと、ゲームクリアになってしまう。


 ん?

 ――ゲームクリア?


 まてよ、つまり俺は今ゲームクリアの鍵が目の前にあるってことじゃないのか?

 だってそうだろう。

 別に世界平和がRPGの目的じゃないだろ、村長に「世界を脅かす悪を滅ぼしてくれー」的なこと言われた設定なだけであって別に「世界平和頼むわ」って言われてないしな。魔王だけ倒しゃいいんだよな。

 と、いうことは、だ。

 今から俺ら二人がするべき事はひとつしかない。


 そう、目の前に魔王の本拠地があるんだからそれは――。


 乗り込む他ないだろう。


「ミスト。悪いがここでお別れだ」

「へー」

 ミストは相変わらず無関心な様子。

「報酬の世界平和は多分きっと恐らく確率としては訪れるはずだから」

「ほえー」

「じゃあな!」

 俺は椿の手を引っ張って走りだし、斜面を下る。

 別れ際には少し呆気無い気もするが、あんまりしんみりとした感じも似合わない気がする。

「わぁっ! ちょちょちょ危ない危ない!」

 街の城壁が一部繰り抜かれたような、その正門へと猛ダッシュしていく。




   ▼ ▲ ▼ ▲ ▼




 日を同じくして。

「さあっ」

「うっし」

 魔王城、入り口。

 門は固く閉ざされている。

「早速どうしたもんか……開かないぞ、門」

「もう最初からクライマックスのはずが、入り口で詰むなんてね……でもさ、あたし達短剣しか持ってないじゃない? こんな装備でどうやって戦うつもりなの?」

「誰も真っ向から戦う何て言ってないだろ」

「え? なにそれ」

 不思議そうに俺を見る椿。

「えと、つまりだな。不意打ちだ、不意打ち……おわかり?」

「わかるわよ不意打ちくらい! 刀とかの、刃じゃないところで叩くみたいな……?」

「それみね打ちだろ」

「あっ」

 バカだ絶対こいつバカだ。おそらくここまでバカな勇者は今まで出たRPG作品の中でこいつがダントツだろう。

 試しに……。

 俺は門をノックしてみる。普通の家屋なら親切そうなおばあちゃんなんかが出てくる所だが――。

 そして、城の上の階から声が聞こえてきた。

「ほいほーい、いまでまーす」

 返事軽いなおい。

 予想外に軽めの返事だった。

 コツコツコツと階段を下りる音が聞こえたかと思うと、上の階にいた住人が姿を現す。

「こちらまおーですが」

「ああぁぁっ! おまえ……っ!」

「あーどもー」

 このだるけた声。だらだらな雰囲気。やる気のないオーラ。

 門を挟んで向かいにいたそいつは、間違いなく。


 傭兵のミストだった。


「なんであんたここにいんのよ!」

 椿がもっともな質問をする。

 そうだよな、まずそうなるよな。

「えー、いやー。雇われちゃってー」

 ミストは近くにあるレバーを使って親切にも門を開けてくれた。

「はぁ!?」

 椿が驚きを隠しきれず大声を張りあげた。

 いや、まぁそうなるよな。

「あのー。魔王? がちょっと旅出たっぽくてー、代わり? みたいなー」

 みたいなーじゃねぇよ! 魔王自分の城空けて旅出てんじゃねぇよ、お気楽かよ。

「つまり、今はお前が魔王なんだな?」

「そだよー」

 ということは、だ。


 そう、現実世界に戻る方法は二つ。

 死ぬか、そのゲームをクリアするかである。


 しばらく沈黙。

 椿のほうを見やり、アイコンタクトを交わす。

 結局最後には「ゲームだし、情を挟むほど親しくもない」といった理屈で、俺は行動に移すことに決めた。


「許せミストっ!」

 俺は懐から短剣を抜いて、逆手の状態でミストの脈打つ白い首筋に突き立てた。

 切り口の隙間からどくどくと溢れんばかりの鮮血が流れてくる。ミストも驚いた表情、目を見開いたまま硬直して動かない。

 と、視界がだんだんと黒く染まっていく。

 ミストは最期、こう言った。

「……げーむくりあ」

 そして、俺の意識はそこで途絶えた。

 4ですよー

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