Ⅲ。
「どーもー、山賊でーす山賊」
その人影、もとい俺と椿の肩くらいの身長の少女はかなりだらけた声色で言った。
「……は? 山賊?」
「山賊って、あの怖いやつ?」
俺と椿が二人して質問を飛ばす。
その山賊は特に俺達を攻撃するでもなく、やる気の無さそうに答える。
「山賊と言ってもー、私ようへいなんでー。べつに本物の怖い山賊という訳ではないんですー」
傭兵?
「……つまり、雇われてるって事か?」
「まーそういう感じですねー」
なるほど、雇われてるだけなのか。山賊(仮)みたいな感じか。それなら別に怖くもない。
「よし、近くの街まで案内しろ傭兵」
「私はミストって言うんですよー」
「じゃ、じゃあ、ミスト。近くの街まで案内しろ!」
二度目は語気を強めてみる。
「ほうしゅうによりますー」
報酬か……。
今俺達二人が持ってる金目の物なんて短剣くらいしかないな。もっとも、短剣すら価値が無い物だろうけどな。
だが、ひとつだけ。
ひとつだけあるかもしれない。
「そうだな~」
そう言って俺は少し間を置いて続ける。
「報酬は――――」
「――――世界平和で」
「なにふざけた事言ってるんですかー?」
まぁそうなるわな。
「いや! これは何の確信もないんだが……世界平和! 世界! 平和にするから! マジで! これマジだから! ほんと信じて!」
別に世界を平和にできる自信も無いんだが、ラスボスを倒す=平和、ってことだろ? RPGなんてそんなもんだろう、多分。
ラスボス倒せば現実に戻れる訳ですし、何言ってもいいっしょ!
この男、かなり性格が悪い。
「んー。……山賊も報酬少さそーだし、どーしよーかなー」
「いやいや! そこは俺らについてこようよ!」
ゴリ推し。
「そ、そうよ! 一緒に行きましょ!」
さっきまで黙って俺を掴んでいた椿も俺の味方についてくれる。
それからはかなり強引にミストを説得して(説得するのに一時間かかったとは言えない)近くの街であるクロックスという街まで案内してくれることになった。
● ● ● ● ●
「わあぁぁぁあっ!」
感激したように椿が両手を合わせる。
「やっとこさ森抜けられたなぁー。あーマジ疲れた」
先ほどの森はもう過ぎて、高地にあるこの場所から見下ろした先には首都だろうかと思うほどに大きな石造りの街が広がっていた。
街全体は石の城壁とでも言うべきか、数十メートルにもなる壁で覆われていて、その中に街があるような造りだ。
「結構でけーんだな――――は?」
あれって。
アレだよな。
俺は街のど真ん中に位置している"それ"を凝視。
それは、紛れも無い。
悪魔城である。
3ですね