2。
目の前一面、樹、樹、樹。
椿がパンを焼いた家のさらに先に見えた森に俺達二人はいる。
「なんかここ雰囲気怖いんだけど……つばさ?」
さっきまでいた家にあり、今現在羽織っているロングコートを椿がぎゅっ、と掴む。怖がりなんて案外可愛い所もあるものだ。
ちなみに俺のコートは黒色で椿が白。椿曰く「キャラに合っててなんか性格悪そうで似合ってるよ(笑)」だそうだ。
"そうびかくにん"の結果俺は短剣一本で椿は短剣と木の棒だった。全部合わせて攻撃力3といったところだろう。某スライムが一匹でも出てきたら絶対負ける。死ぬ。
「あのさ……」
「……な、なによ」
「……いや、手ぇ放してくんない?」
「は……はぁ? 放す訳無いじゃない」
何で放さなくちゃいけないの? とでも言うように、椿。
「いや……くっつかれても困るし普通に」
「待って待って待って待って! 可愛い女の子が服を掴んで後ろからわたわたついてきてくれるのに何でそんなあんた無反応なの!? もっと喜んだり恥ずかしがったりしてもいいのよ?」
可愛い女の子は普通そんな事言わない。
「あーもういいよ! 早くここ抜けるぞ、そうすりゃ早い話だし」
俺は足を早める。
それに合わせるように椿がとことこ後ろに続く。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「まだ出れないのぉぉぉ? もうやだよぉぉぉ」
俺の後ろから聞こえる嘆き声。
シカトしながら歩く。
「ねぇぇぇぇちょっとぉぉぉマジこの森暗すぎ怖いってぇぇぇぇ」
コイツいつの間にこんなウザキャラになったんだよ。
こんなにう――――――――ッ!?
俺は、草陰が少しざわついたのを見逃さなかった。
すかさず短剣を構える。いささか頼りないが、無いよかましだ。
「だ……誰よ……?」
椿も察した様子で、さっきよりも強い力で俺のコートを握り締めた。
――……と。
勢い良く陰から何者から飛び出る人型の影。
その姿は――――――
女の子?
2ですが