ストーカーは弥山に登る!
除夜の鐘をついた後、彼に続いてアパートへ戻ろうとした私であったが、
「……?」
彼はアパートとは逆の方向へ歩き出す。
不審に思いながらも、コーヒーを飲みながら後を追うと、ついた先は宮島行きのフェリー場。
そう言えば元旦は特別にこの時間帯でも運航しているんだっけか。
どうやら彼は宮島で初日の出でも拝むようだ。切符を買って、彼に続いて船に乗る。
真夜中なのであんまり見えないが、甲板に佇む彼と私。ちょっとロマンティックじゃない?
「……」
しばらくして宮島に到着する頃には、私はふらふら。
そう言えば私は船酔いする人間だった。甲板に出るんじゃなかった。
「……!」
上陸して彼の後をつけていると、いつのまにか鹿に囲まれてしまう。
この間世界樹で狩りすぎた仕返しだろうか。
混乱させられていると、彼が鹿せんべいを買ったようで私を囲んでいた鹿が一気に彼に群がる。
流石私のパラディン様。知らず知らずのうちに私をいつも助けてくれる。
その後彼と私は社殿に向かい、御賽銭を入れてお参りをする。
今年こそ彼に勇気を出して告白して結ばれますように。
しかし勇気を出すのは私の仕事だし、彼と結ばれるかを神様に頼るのはよくない。
訂正。ストーカーしてることがばれませんように。
社殿を出た後彼が向かった先は弥山の麓。
どうやら弥山の頂上から初日の出を拝むつもりらしい。
彼と山頂で初日の出、いいね、ロマンティックだね。
意気揚々とロープウェーに乗ろうとする私だったが、彼は当然のように登山コースに消えてしまった。
これだから体育会系は……と心の中でぼやけながら私も彼を追う。
「……! ……!」
そもそも登山をするなんて聞かされていないので、登山対策をしていない私は途中でバテバテ。
幸い彼も途中で休憩をしたり、靴の紐を頻繁に直したりしているので彼の姿を見失うことはないが、この調子で初日の出に間に合うのだろうか?
「……! ……♪」
それでも愛の力とやらで何とか初日の出に間に合った私。
やっと休めると頂上でお茶を飲んで休憩をしていると、一筋の光。初日の出だ。
「……! ……♪」
すごい! キレイ! 苦労して登山した分、感動もひとしお。頑張って登った甲斐があった。
携帯電話でパシャパシャと写真を撮りながら、彼との山頂デートを楽しむのだった。
どうやら彼は下りはロープウェーを使うらしい。
よかった、下りとは言えどもう体力がきつかったんだとホッとして彼に続きロープウェーに乗るが、
「……」
予想以上にロープウェーは怖かった。山頂は落ちる危険性がないけど、ロープウェーは今にも落ちそうだ。
結局怖くて目を瞑る。彼も風景も見りゃしない。




