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ストーカーは頑張って歌おうとする!

『ストーカーに餌をあげないで!』第8部に相当

「今からカラオケ行く奴集合~」

「ウチ行く~」

「わしもわしも」

 とある放課後、クラスメイト達がカラオケの算段をしている。

 私はカラオケに行ったことがない。

 女子高生の聖地らしいが、喋る事の出来ない私には無用の場所なのだ。

 一生カラオケに行く事なく、虚しい人生を送るんだろうなとため息をつきながら彼が帰るのを待っていたのだが、

「俺も行っていいか?」

 彼がカラオケ参加を決めると共に、私もカラオケデビューを決意するのだった。



 しかし残念ながら私は彼のように、クラスメイトに『私も行きたい!』などと言うことはできない。

 そもそもクラスメイトと全くコミュニケーションを取っていない私が急にそんな事を言いだしたら、周りだって困るだろう。私は喋る事が出来ないだけで、そこらへんの常識は弁えているつもりだ。



「……」

 なのでいつも通り、彼含めたカラオケに行く集団をつきまとうのだ。

 カラオケ店に到着。彼等のグループが部屋を予約した後、すぐに隣の部屋を予約しようとするが、

「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」

「……」

 ここで持ち前のコミュニケーション能力の無さを露呈。

 喋らずに身振り手振りで予約する私を、きっとこのバイトは何しに来てるんだろうと思っていることだろう。

 しかしカラオケは歌うだけの場所ではない、他人の歌を聞く場所でもあるのだ、とカラオケ初デビューの癖にわかったような口を叩きながら彼の隣の部屋へ。



 部屋に入った私は何とも言えない開放感を味わう。

 こういう多人数向けの部屋に1人でいるのって心地よい。

 ……そんな思考だから私は孤独なのか、とダウナーに浸りながらも、

 本来の目的を果たすべく壁に耳を当てる。

 けれども彼の声は聞こえず、どうでもいいクラスメイトのノイズが聞こえるばかり。

 1時間程して、ようやく彼の声が聞こえてくる。

 明らかに外した音でアイドルソングを歌っている。

 こっちは真面目に聞いているんだから、そういうふざけた事をしないでほしい。

 とぷりぷり怒っていると、

「いやー、俺この曲大好きなんだよね。この曲歌ってる女の子とかいたら惚れちゃいそうだよ」

 壁の向こうから彼のそんな声が。

 すぐに私は彼の歌っていた曲を探し出してそれを入れる。



「……! ……!」

 イントロに合わせて、精一杯声を出しているつもりなのだが、残念ながらまったくでない。

 そうこうしている内に時間がやってきて、カラオケに来て曲を流すだけというほろ苦いデビューに終わった。



 しかしここでめげないのが私。

 部屋に帰った私はインターネットでさっきの曲を探してカラオケ音源を流す。

 歌う練習をするというのも勿論あるが、隣の部屋にいる彼に自分のセンスを知らせるのだ。

 隣の部屋からこの曲が流れてきたことできっと彼は、

『お、隣の部屋の住人、俺と好みがあうなあ』と思うに違いない。

 いずれ私が彼に告白する時、私が隣の部屋に住んでいたことも打ち明けるだろう。

 その時彼は『まさか八咫烏さんが隣の部屋に住んでたなんて! そういえば昔、隣の部屋から俺の好きな曲が流れてきたぞ! 音楽の趣味が合うし、うまくいきそう!』と私の告白を受け入れてくれやすくなるはず、完璧だ!

 我ながら素晴らしい作戦だと小躍りしながら、延々とその音源を流す。



 数日後。

「おう龍巳、お前がこの間言ってたあのアイドルソング、こないだテレビで紹介されてたぜ」

「あー……俺もうあの曲あんま好きじゃねえや」

 あ、あれぇ?

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