ストーカーはお弁当を作りすぎた!
今日は体育祭。彼と二人三脚!
ゲン担ぎに、朝からカツを揚げることにする。
彼の部屋を見ると、彼もどうやらカツを食べているようだ。
こんなところで行動が一致するなんて、二人三脚の練習で相性がぴったしになったようだ。
「……」
まずい、食べ過ぎた。吐きそう。
運動している間にゲロったら恋愛的にも社会的にもゲームオーバーなので頑張って耐えよう。
『宣誓! 我々はスポーツマンシップに乗っ取り……』
ジャージに着替えて、少し膨れたお腹をさすりながら開会式。
私の出番は基本的に午後しかないので、午前中は彼の応援に徹することになる。
綱引きで先頭に立ち一生懸命声をあげて綱を引いたり、玉入れで力みすぎたのか私の方に玉が飛んで来たり、彼の一挙一動が全てカッコいい。
借り物競争で私を借りてくれないかなあと密かに期待していたが、残念ながら彼のお題は『メガネ』らしい。こんなことなら変装セットのサングラスを用意しておくんだった。
そういえば、彼の両親は来ているのだろうか。
彼の両親は有名な武闘家でほとんど修行という名目で仲良く旅行しているらしい。漫画みたいな話だけど、私も人の事言えないし。
授業参観にも来たことがないし、彼を信用しているから一人暮らしさせているのだろうけど少し薄情じゃないだろうか? 私は別に両親は嫌いだからどうでもいいけど、彼がたまに両親と電話をしているのを隣の部屋で聞いている。こういう晴れ舞台くらい見に来てあげればいいのにとまだ見ぬ彼の両親に憤りを覚えながら観客席を眺める。
それにしても警備員の人が多いなあ。そんなに必要なんだろうか?
……いや、警備員じゃない! よく見たらウチの人間だ! お前らは帰れよ!
苛立ちながらも午前の部が終わり、お昼の時間になる。
隅っこでぽつんと座った私は、一人寂しくお弁当を開く。
重箱に敷き詰められた大量の豚カツ。
そう、私は彼にお弁当を食べて欲しくてカツを作ったはいいが、
恥ずかしがり屋なので彼に手渡すことなんてできやしない。
そこでクラス全員分作って振る舞おうと考えて、朝からたくさん揚げたわけだ。
しかし冷静になってみれば、クラスメイトに振る舞うことすら私にはできなかった。
振る舞えてもクラスメイト全員におかずを振る舞う女の子とか、正直キモいよね。
というわけで自分一人では食べきれないお弁当を前にため息をついていると、
「お、うまそうじゃん。たくさんあるし、1つ頂戴?」
「……! ……♪」
なんと彼の方から私に接近してきた。
たくさんあるので1つとは言わず彼にたくさん豚カツを食べさせる。
「うぷ……ところで、親御さんと構成員……じゃなかった、執事の人は応援に来てるの?」
豚カツを食べながら彼がそんな事を聞いてくる。
「……」
いくら彼とは言え、今の私にその話はタブーだ。不機嫌そうになりながら、保護者席の一角にいる警備員もどきを指し示す。
「だったらこの残りのお弁当、応援しに来た人に配ったらいいんじゃないかな?」
「……!」
なるほど、確かにそれは名案だ。いくら彼が大食いでもこんなたくさんの豚カツは食べきれないし、処理に困っていたところだった。納得した私はお弁当を彼に手渡す。
「俺に渡してきて来いと?」
「……」
けれど私はあいつらと目を合わせるのも嫌なので、代わりに彼に行ってきてもらうことに。
お弁当を連中に渡しに行った彼が、その中の一人と談笑している。
私は正直家を捨てたいが、彼は家の人間に気に入られそうな人となりをしているし、私と彼が結ばれたら彼が後を継ぐみたいな展開になっちゃうんだろうか、うーん。




