ストーカーは守護霊に愛されている!
とある金曜日。いつものように彼と一緒にネットゲームをしていた時のことだった。
『そし、それじゃあダンジョン行こうか。回復薬とか持った? 忘れ物ない?』
『はい、だいじょう……ああっ!』
とある事実に気づいて思わずそんな声をチャットであげてしまう。
ネットゲームのチャットで『はい、だいじょう……ああっ!』なんて、あまりにも不自然な発言だけれど、普段喋れない分チャットでは人間味溢れる発言をするようになっているのだ。
『どうしたの?』
『ごめんなさい、ちょっと学校に忘れ物しちゃって……、すいません、落ちます』
学校に課題を忘れていた。結構量のある課題だし、提出が月曜日の1時間目なので取りに学校に行かないと間に合わない。私は学業は真面目なのだ。
というわけで、部屋を出て学校に行くことにしたのだが……
「……」
怖い。冷静になって考えれば夜中に喋れない女の子が一人で学校に行くだなんて、かなり難易度が高いのではないだろうか。
別に課題を取りにいくなら、明日の昼間でも問題ないし、部屋に戻ろうと来た道を戻ろうとし、
「グルルル……ヴァウワウ! ガルル……ウォォォォォォン!」
「……!」
犬の鳴き声が聞こえてきて、全力で走り出す。
「バウ! ワウ! ガルルルル……」
「……!?」
走っている途中の道でも犬が吠える。オルトロスにケルベロスにティンダロスにヘルハウンド……犬に怯えながら全速力で走り続けた結果、結局学校についてしまった。
「……」
ここまで来たなら仕方がない。学校に侵入しようと閉まっている正門によじ登ろうとするが、運動音痴な私では難しい。それでも以前のお風呂場の仕切りに比べたらよじ登れないことはない。3分くらいかけて、手を真っ赤にしながらも何とか侵入成功。
「……」
次なる関門は校舎への侵入。
しかしさっきに比べれば、こんなミッションちょちょいのちょいだ。
「……♪」
私はポケットから針金を取り出すと、扉の鍵をそれでこじ開ける。
ストーキング技術を磨こうとピッキングの練習もしていたが、こんなところで役に立つとは。
校舎の中に入った私は自分の教室を目指していたが、
「タチサレ……タチサレ……」
「!?!?!?!?」
いきなり後ろからそんな声がして、心拍数が跳ね上がる。
怯えながら辺りをキョロキョロするが、誰もいない。
幽霊なんているはずがない、今のは幻聴だと自分に言い聞かせていると、
「コレヲノメ……コレヲノメ……」
「……!?」
今度はゴロゴロと後ろからコーヒーが転がってきて、恐怖で足がすくんで漏らしそうになる。
幽霊なんているわけない、幽霊なんているわけない……いや待てよ。
仮に幽霊がいたとして、コーヒーをくれるのだから善い幽霊に決まっている。
きっと私の守護霊だ、だったら何も怖くはないとコーヒーを拾ってごくごくと飲み、意気揚々と教室へ。
再び鍵を針金でこじ開けて、電気をつけて自分の机を探し、課題をカバンに入れて任務完了。
後は帰るだけ……なのだが。
「……♪」
誰もいない教室。つまり何をやってもOKということである。
彼の椅子に座って、彼の机に頬ずりをする。今の私は彼と一体化しているも同然。
そうだ、一度やってみたいことがあったんだ、この際してみよう。
立ち上がった私は辺りを見渡して誰もいない事を確認すると、彼の机の角にスカートの辺りを押し付ける。
ヤバイ! すごく気持ちいい!
夜の学校、彼の机で〇〇しちゃう背徳感と快楽が一度に合わさって脳内麻薬が溢れまくり。
とてもじゃないけど好きな人には見せられない、恍惚の表情で数分間行為を愉しむ。
「……♪」
行為を終えてやりきった顔をしながら教室を出ると、
「……!?」
教室の前に男の人が倒れていた。
……死体!? と思った時には既に私は涙目になってその場から逃げ去り、学校を出て再び犬に吠えられながら部屋に戻るのだった。
後で聞いた話だが、あの日倒れていたのは死体ではなく、何者かに襲われて気絶してしまった宿直の先生らしい。
危なかった。もしも先生が気絶せずに私の教室まで来ていたら、とんだ大惨事になっていたかもしれない。
きっと私の守護霊が、私を守るために気絶させてくれたのだろう。
守護霊にも応援されているのだ、絶対に彼と結ばれるぞ!




