ストーカーは漏らしそう!
『それではただいまより、焔崎高校文化祭を開始致します!』
そうして始まりました文化祭。
まずは彼と一緒に、お化け屋敷で脅かし役をすることに。
「……」
「似合ってるね」
「……♪」
白い布を被ってドットイートのゲームに出てきそうなお化けになった私と、マントを羽織って、ドラキュラになった彼。白い布を被っただけで似合っていると言われるのは、正直どう受け止めればいいのかわからない。
ドラキュラと言えば処女の血を好むらしい。
「何だかコスプレしてたら血を吸いたくなってきたよ。吸わせて?」
「……!?」
「ははは、冗談だよ」
彼に首筋を噛まれてちゅうちゅうと血を吸われて喘ぐ自分を想像して、物凄くドキドキした。
「吸わせろおおおおおおおおお!」
「……!」
彼は大声も出して迫力満点、ばっちりと脅かし役をしているが、
声を出せない上に布を被っただけのちんちくりんな私は、むしろ癒し。
しかも恥ずかしがり屋なので人前に出たら隠れてしまう。脅かし役失格だ。
「よし、合体攻撃だ」
「??? ……!!」
そんな私を見かねたのか、彼が何と私を肩車。
すごい、これが背の高い人の光景か……と感嘆していたが、私の股間を彼の頭に押し付けている形になっていることに気付き、顔が真っ赤になる。布を被っているし辺りが暗いので悟られないけど。
「ぐおおおおおおおおおおお!」
「……!」
私を肩車した彼は叫んだりその場で回転したり、何だか彼は自分の父親なんじゃないかと錯覚してしまう。
「流石に疲れた……あ、ありがとう」
「……♪」
結局交代時間まで彼は私を肩車し続けた。流石に疲れたのか汗だくになってゼーハー言っている彼にお茶を差し出す。
「ところで俺、今からお化け屋敷入ろうと思うんだよね。やっぱ自分達の作ったものを客目線で体験してみたいっていうか、君はどうする?」
「……! ……♪」
なんとここで彼から願ってもないお誘いが。
目を輝かせてコクコクと頷き、楽しい彼とのお化け屋敷デート。
「まだお化け出てないんだけど」
「……♪」
お化け屋敷なら怖がるフリして彼に抱きついても何の問題もないはずだと、入ってすぐにしがみつく。
しばらく彼にしがみついていたのだが、
「……♪ ……?」
辺りが暗くなったところで、いきなり彼の感触が消えてしまう。
一体どこに行ったのだろうと不安になりながらその辺をうろうろしていると、
「ぐああああああああああああああああああああっ!」
「ひぃっ!」
彼が突然私の目の前に現れて大声をあげる。びっくりして私は少し叫び声をあげてしまった。火事場の馬鹿力というやつだ。
「あはは、ごめんごめん。つい驚かしたくなって。立てる?」
「……」
その場にへたりこみ、彼の問いかけに泣きながら首を横に振る私。
スキーの時は演技だったか、今回は本当に腰を抜かして立てなくなってしまった。
「本当にごめん、保健室までおぶってくよ」
「……♪」
責任感の強い彼は私をおんぶしてお化け屋敷を出る。役得だ。
しかしここで問題が発生。
「……」
途中のとある場所で指をさす。そこは……
「マ、マジ?」
「……」
女子トイレ。びっくりして少しちびった。そして漏れそう。
「連れていけと?」
「……」
好きな人に介護されて用を足すというのは上級者プレイかもしれないが、私も漏れそうなのでなりふり構っていられない。私を脅かせた彼の責任なのできちんと介護して欲しい。
けれど彼も人が多い文化祭で女子トイレに入るのは厳しいらしい。
そして私をおんぶしてどこかへダッシュする。ついた先は身体障害者用のトイレ。
なるほど、今の私にふさわしい場所だ。
「終わったら、足で地面で蹴ってね」
私をトイレに座らせて、彼が個室から出て行く。
パンツを脱いで用を足そうとするが、彼は今トイレの前で待機しているのだろうかと思うと、排泄音を出すのが恥ずかしくて、音姫をつけっぱなしにしてしまう。
トイレを終えた私が床を蹴ると、彼が迎えにきてくれて再び私をおんぶ。
「……」
「……」
彼も女の子のトイレの介護というシチュエーションには何か思うところがあったのだろうか、顔を真っ赤にしている。勿論私も真っ赤っ赤だ。
保健室についた彼は私をベッドに寝かせて、その後も私が立てるようになるまでつきっきりでいてくれた。30分程して、ようやく立てるようになった私がベッドから降りると、彼が頭を下げる。
「本当にごめんね、楽しい文化祭なのにこんなに長時間拘束しちゃって。それじゃ、俺は今から演劇を見に行くから。え? 君も見るつもりだった? わかった、それじゃあ一緒に行こうか」
「……♪」
人生万事塞翁が馬。こうして私は彼と演劇を楽しむことができましたとさ。




