ストーカーは昏睡しちゃう!
前回のあらすじ。
念願叶って彼とアドレス交換ができてウキウキな私ではあったが、私の家で文化祭の打ち合わせをすることになってしまい、私がヤクザだとばれてしまった。
「……」
彼を客間に待たせて、飲み物の準備をしながらうなだれる。
本当は少し期待していたのだ。実家に帰ったら、丁度私の世話役とかが出払っていて、誰にも会うことなく彼と私の部屋で打ち合わせをしながら良い雰囲気になる……という展開を。
最近の私は色々と神様に愛されている気がするし、そうなると思っていたのだ。
しかし現実はどうだ、家につくなり早速掃除をしていた組員に声をかけられて、その後も続々と集まってきたではないか。
どうしてあいつらは私に構いたがるのだろうか。確かに私は子供の頃からあいつらに世話されてきたし、彼等の中で私は娘のようなものなのかもしれない。しかしだとしても私はもう年頃の女の子だから、そっとしておいてほしい。
しかしどうしたものか。今まで積み重ねてきた? 好感度が、ヤクザだとばれて一気にマイナスに振り切った気がする。乙女の大ピンチだ。
……もう、勝負を決めるか?
いつか使う時が来ると思ってカバンの中に入れていた睡眠薬。
これを彼の飲み物に入れて、彼を昏睡させて、既成事実を作る!
……いける! この間見た漫画でも、似たような展開で最終的にハッピーエンドだったし!
「……」
着物に着替えて客間に戻り、机に飲み物とお菓子を並べる。
彼の方に私特製ラブポーション。
「お面に使う生地とかは、100円ショップで買えばいいかな? でもあんまり質が悪いとすぐ破けそうだね」
「……」
彼と打ち合わせとしながら、心の中で罪悪感というもやもやが駆け巡る。
こんなことをしていいのだろうか。好きな人の飲み物に薬を盛るなんて。
でも、もう私は後に引けないのだ。一発逆転を狙わないと、多分ハッピーエンドにはなれないのだ。
「あ、あそこに」
「……!?」
突然彼が私の後ろを指差すので振りかえる。
まさか組員が見張っているのだろうかと思ったが、誰も見えない。
「……?」
「ごめんごめん、俺の見間違いだったみたい」
まぎらわしいと思いながらも、気持ちを落ち着かせるために飲み物に口をつける。
「……?」
「おはよう」
「……!?」
気が付けば何故か私は毛布を被せられて寝ていた。
どうやら私は間違えて自分の飲み物に薬を入れてしまったらしい。
何て馬鹿な女なのだろうか。いや、でもこれでよかったのだろう。
彼を昏睡させて既成事実を作って結ばれたとしても、絶対私は後悔するから。
「いや、急に寝ちゃったから寝かせておこうと思って。別に何もしてないよ、本当だよ。何なら家の人に聞いてみるといいよ」
「……」
ちょっと残念。
「それじゃ、また明日ね」
打ち合わせを終えて、家を出る彼を見送る。
私がヤクザだと知っても、あまり彼の対応は変わらないように思えた。
ひょっとして、気にしていないのだろうか。
「……♪」
だったら、私も頑張ろう。正々堂々とストーキングして、彼と結ばれてやるんだ。
彼を見送った後、制服に着替えてまた彼の隣の部屋に向かうため家に戻るのだった。




