ストーカーもとうとうゲロインに!
「く……くくく……」
今日は朝から彼のテンションがやたらとおかしい。
一体何があったのだろうと台所でお弁当を作りながら耳をすませていると、
「たまにはお弁当を作ろうと思って作ってみたけどついついたくさん作りすぎてお弁当2つできちゃったよ。まあ1人で2人分食べればいいか!」
彼がいつもながらそんな独り言。なるほど、お弁当を作ったのか。
随分前のクッキーの時はそれはもう悲惨な出来だったみたいだけど、あれから彼も練習したようで料理の腕は割と上達したらしい。
お弁当2つあるなら、1つくらい貰っても構わないよね?
「いやあそれにしても改心の出来だ、誰かに食べてもらいたいよ。まあ恥ずかしいからそんなことできないけどね」
独り言の方が余程恥ずかしいと思うけど、彼も食べて貰いたいと言っているし、いただくとしよう。
「……」
いつも通り部屋を出て彼を追い、学校へ向かう。
さて、どうやって彼のお弁当を食べようか。
今日は4時間目に移動教室がある。彼より先に教室に戻ってすぐにお弁当を奪取し、教室を出て手ごろな空き教室に向かってそれを堪能する。うん、完璧な作戦だ。
4時間目が終わったらすぐにお昼を食べようと思ったのか、3時間目の授業が終わると彼はお弁当を机に2つ置いて出て行った。彼のカバンを漁る手間が省けて好都合。……いや、カバンも漁りたい。
ともかく4時間目の音楽の授業が終わるや否や、すぐに自分の教室に向かって走り出す。
ストーキングで自然と鍛えられたのか、前より速くなっている気がする。
あらかじめ開けておいた教室の窓から侵入した私は彼の机のお弁当を1つ手に取る。
……彼の作ったお弁当だし、折角なら全部食べたい。
悩んだ末、お弁当を2つ拝借した私は内側からドアを開けて空き教室へ。
「……♪」
私以外誰もいない空き教室、鍵も閉めて誰にも邪魔されない。気分はさながら輸入雑貨商。
お弁当の包みを開く。食べ盛りの彼のお弁当、それも2つは普段私が食べている量の数倍くらいはあるかもしれないけど、彼の作った料理ならいくらでも食べれちゃうとそれを口に運ぶ。
……塩辛い。味付けが単調。でも彼の作った料理だし……と黙々とそれを口に運ぶ。
「……」
昼休憩を終えて教室に戻る頃には、私の顔は相当ひどい事に。
流石にお弁当2つは欲張りすぎた。しかもお肉も野菜も塩辛くて水分たくさん飲んじゃったし。
たぷたぷのお腹をさすって気分はさながら妊婦さん。
なるべく動かないように5時間目の授業を受けていたが、
「……! ……!」
気分はつわり。5時間目の授業が終わるとトイレに直行して、
「……! ……!」
女子トイレの一室で、オロオロオロと彼のお弁当を吐きだす。
欲張って2つも食べなければ、ちゃんと彼の作った料理は私の中で消化されただろうに、二兎を追う者は一兎も得ずとはこのことか。
すっきりした私は教室に戻り、自分のお弁当の存在に気づく。
晩ご飯にでもしようと考えたが、何故かお弁当の中身が空だった。
不思議な事もあるものだ。
「ところでブログ主さんは料理の味付けって考えたことありますか? なんとなくですけど、塩を使いすぎじゃないでしょうか? そういう味付けばかりしていると将来病気になってしまいますので気を付けてくださいね」
彼の健康のためにも、私が美味しい彼のお弁当を食べるためにも、その日の晩に上から目線で彼のブログにコメントをつけるのであった。




