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ストーカーは体操服を嗅げる!

『ストーカーに餌をあげないで!』第5部に相当

「……」

 死ぬ。もうムリ。走れない。

 今日は、体育で、マラソンで、3km、無理、もうダメ、死ぬ。

 もう残りは歩きたいのに、悲しいことにまだ1kmも走ってないらしい。

 自分のペースで走ればいいものを、彼についていこうとしたのが馬鹿だった。

 最初は彼の背中が見えるくらいのペースで走る事ができたが、途中から彼がギアチェンジしたのか一気に見えなくなってしまう。



 まだ夏には入ってないというのに、今日は暑い。

 体操服が汗でびしゃびしゃだ、恥ずかしい。

 ブラ紐とか透けてないだろうか、『あいつ胸無い癖にブラつけてんのかよ』とか馬鹿にされたりしないだろうかと走り疲れたのもあってダウナーになっていると、

「頑張って」

 いつのまにか一周抜かししていたらしく、彼が後ろから走ってきて私に声をかけてくれた。

「……♪」

 マラソンの神様ありがとうと思いながら彼に微笑もうとしたのだが、汗だくで恥ずかしいのと疲れているのでちょっと変な顔になってしまったかもしれない。



 3kmを26分という女子だという事を差し引いても酷い結果ではあったが、何とか走りきった。

 マラソン疲れでその後の授業はほとんど寝て過ごし、あっという間に放課後。

 かなり汗まみれになってしまった体操服を洗濯するために持って帰り、彼の後をつけながら家に帰ろうとしたのだが、

 彼が体操服を持って帰っていないことに気づく。持って帰るのを忘れたのだろうか?



 よし、体操服嗅ごう。

 思い立ったが吉日、私は学校へUターン。

 こっそり教室に戻って、こっそり彼のロッカーを開けて、こっそり体操服袋を取って、こっそり空き教室へ。



「……♪ ……♪」

 好きな人の運動した後の体操服という乙女アイテムを前に深呼吸。

 いただきますと心の中で唱えてがばっと彼の体操服の匂いを嗅ぐ。



 ……結構臭い。

 汗の匂いって、結構相性に関係するらしい。

 臭いと思ってしまった私は彼と相性が良くないのだろうか、悲しい。

 だけど相性は良くするもの、私は匂いに耐えながら彼の体操服をしばらく嗅ぐ。

 うん、段々この匂いが好きになってきた気がする。これで彼との相性ばっちりだ。



 しかし私は許容できても他の人間がこの匂いを許容できるかと言うと難しい問題だ。

 汗臭いまま洗濯もせずにロッカーの中に放置していたら、次の体育の授業ではもっと匂いが酷くなる。

 彼がクラスメイトにそれが原因で嫌われてしまうかもしれない。

 いや、その方が私的にはライバルが少なくなって好都合……いやいや、好きな人が嫌われるのを願うなんて最低だ。

 というわけで彼が嫌われないように、乙女必須アイテムの制汗剤をカバンから取り出してシュッシュッシュとかける。

 念には念を入れてスプレー1本分使ってしまったが、これで彼の面子は保たれることだろう。

 こういう努力がいつか実を結ぶのだと心の中で唱えながら、彼の体操服を戻すのだった。




 次の体育の授業。

「お前の体操服制汗剤臭いぞ、かけすぎだろ」

「あはは……」



 ごめんなさい。

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