ストーカーはねずみ花火に好かれる!
タイトル:『花火大会』
本文: どこかよく見えるおすすめのスポットないかなー
今日は楽しい楽しい水中花火大会。
彼が行くのかどうか心配だったけど、ブログを見る限り行くらしい。
コメント:この丘なんてどうですか? 見晴らしがいいと思いますよ。
ここは頑張って彼を誘導して、一緒に花火を見なくては。
ジモッティーでも一部の人しか知らないと言われる、近くの森を抜けた丘、隠れ家的なデートスポットへの地図をコメントに載せると、
コメント:すごく見晴らしが良さそうですね! そこに行ってみようと思います! 18時くらいに!
彼がそうコメントをつける。やったあ!
ウキウキ気分で浴衣に着替えて、彼に続いて外に出る。浴衣にサングラスってちょっと合わない。
少し不満があるとすれば、彼がワイシャツにジャケットにジーパンという風情のかけらもない服装ということだ。
でも彼らしくて、これはこれでありかもしれない。
彼と一緒に花火を見て、花火のように私の純潔を散らす妄想をしながら森に入るが、虫が多くて妄想を中断せざるを得ない。
しまった、虫よけスプレーを持ってくるのを忘れていた。
蚊とかならともかく、ブヨとかアブとかに刺されたら困る。
でも今更引き返せないなあと虫刺されを覚悟していると、坂道で彼が虫よけスプレーの缶を落としたらしく、ころころと私の方へ転がってくる。
「おっと、スプレー落としちゃったよー。ま、いっか」
彼からの贈り物だと、私はスプレーを全部使い切る勢いで体にかけていく。
「おお……」
スプレー臭くなってしまったがこの際気にしない。
感嘆の声を漏らす彼と見晴らしのいい丘に到着。人もあまりいないし、いい感じ。
彼の5mくらい横に陣取って、楽しい花火大会の始まり始まり。
「……♪」
ああ、花火って綺麗で楽しいな。彼と一緒に見る花火は特に格別。
彼をチラッと見る。欠伸をしていた。
どうやら彼はあまり花火を楽しめない人間のようだ。
私は例え彼がつまらなそうでも彼と一緒にいるだけで楽しめる自己満足な女ではあるが、折角来たのだから彼にも花火を楽しんでほしい。
楽しんで欲しいなら、勇気を出して彼に告白して、恋人になって彼女として彼を楽しませるべきなのだろうけど。
そのうち彼はカバンから何かを取りだしはじめる。写真でも撮ってブログにアップするのかと思いきや、取り出したるは大量のねずみ花火。こんなところでねずみ花火をするなんて非常識にも程がある。
「……!?」
彼がそれに火をつけて放すと、まるで意思を持っているかのようにねずみ花火が私に襲いかかる。
私の周りを駆け回るねずみ花火。怖い!
「……!」
慌てふためき逃げ惑う私。暗くなってきたのでよく見えないが、彼が爆笑している気がした。
彼を楽しめることが、できたのだろうか?




