ストーカーは実家に帰る!
タイトル:『原付の免許早くとりたい』
本文:免許をとるために勉強中です
もうすぐお盆休み。残念ながら私は実家に帰って色々やらないといけない。
彼はその間に原付の免許を取ろうと、勉強を頑張っているようだ。
コメント:このページなんてどうですか? すごく勉強になると思いますよ
インターネットで試験対策のホームページを見つけて彼に知らせる。
私も後半年くらいすれば、16歳になって原付の免許が取れるわけだ。
さて、そろそろ私も実家に帰るとしよう。
「お嬢! 無事でしたか!」
「一人暮らしはちゃんとできてますか?」
「……」
実家に帰った私を出迎える謎の構成員を無視して自分の部屋へ。
それにしても、実家にいた頃の私は怠けていたなあ。
たまに社交的な事はしないといけないからそこは大変だけど、家事とか全部家の人間にさせていたし。
一人暮らしをしたことで、私の人間力とか女子力がかなりあがった気がする。
よし、たまには自主的に部屋の掃除とか料理とかをしようじゃないか。
タイトル:『試験受けに行ってきます』
本文:一発で合格してみせます
部屋の掃除をするはずが懐かしい漫画を読んでいるうちに眠ってしまい、翌日の朝には彼のブログにそんなコメントが。
コメント:頑張ってください。私も今実家で手伝いとか頑張ってます。
彼を応援すべくそんなコメントを残す。
頑張ってるよ、ただちょっと漫画が面白かっただけだよ。
今日は本気出すよ。
「いやあ桃香が料理をするなんてな、一人暮らしをさせて正解だった」
この日は親戚やらお得意先やらを呼んで宴会をすることになっていたので、本気出してその料理を手伝う。
私の作った料理を食べて大げさに感動しだす父親。かなり酔っているようだ、放っておこう。
「ところで桃香さん、好きな人とは進展ありましたの?」
何故かお呼ばれしていたらしく、私の右隣に座っている愛顔お姉様がそんな事を聞いてくる。
「……」
首をかしげる私。進展……あったのかなあ、うーん。
彼に押し倒されたり、彼にナンパされたりしているし、かなり進展していいと言っていいのではないだろうか。いやでも正体隠してるからなぁ……
「八咫烏さん好きな人いたんだ。同じクラス?」
何故かお呼ばれしていたらしく、私の左隣に座っているなぎさちゃんが平然とガールズトークに乱入してくる。あれ、なぎさちゃん男だっけ? 女だっけ? 男の娘だっけ?
「そういえば私も桃香さんの好きな人が誰か知りませんわ。秘密にしますから教えてくださらない?」
「……」
教えるべきなのだろうか? この二人は信用してもいい人間だとは思うけれど。
いや、やっぱり辞めておこう。ストーカーの恋は秘密に行うもの。
喋ってしまえばこの二人は私をサポートしてくれることだろう。
二人には申し訳ないけど、ロクな事にならない気がする。
首をふるふると振って教えないと自己主張すると、カバンからバイク雑誌を取り出して読む。
原付とバイクは全然違うらしいが、私には違いがよくわからない。
彼は今頃試験に受かって、買う原付を選んでいるのだろうか。
「あら残念。……バイク雑誌ですの? 私はもう16ですけど、原付は興味ありませんわね」
「駄目だよ八咫烏さん。高校生になったから原付取ろうだなんて、絶対事故るよ。あんまり言いたくないけど八咫烏さん運動音痴でしょ。こけるよ。俺の妹も免許取る気満々だけど、自転車ですらこけるのに心配だよ……」
私の心配をする二人。心配しなくても私は原付取るつもりはありませんって。
カッコよく原付でかっ飛ばす彼の横、サイドカーで二人楽しくツーリングを夢見ながら雑誌を読む。
え、原付って30kmしか出せないの? しかもサイドカーださすぎ!
時速30kmで走る原付の横のサイドカーに座る自分を想像したら、何だか凄く虚しくなってしまった。




