ストーカーは釣られる!
タイトル:『海に行ってきます』
本文:明日の朝10時に、前野裏三丁目の釣り具屋近くで海を満喫します!
アルバイトの期間を終えて、ごろごろする日常に元通り。
日課である彼のブログをチェックすると、何と明日は海に行くらしい。
コメント:海いいですね! 私も泳ぎたいです!
嬉々として私はコメントをつける。
やっぱりプールよりも海の方がロマンティックで私は好きだ。
ウキウキと明日泳ぐための水着等を用意。
ビーチボールとか、浮き輪とかも持っていこう。
翌日、彼が部屋を出たので後をつける。
おかしいな、海に行くはずなのにどうも彼はかなりラフな服装だ。
水着やらタオルやら必要なはずなのに、小さなカバンくらいしか持っていない。
不安を感じながらも、サングラスに麦わら帽子、カバンからは浮き輪やボールをはみ出させて私は海へと向かうのだった。
「……!?」
そして私達は無事に海に到着した。……テトラポットだらけの。
周りを見渡せば、釣りを楽しむおっさんばかり。
彼は釣具屋でレンタルの釣竿セットを借りて、それを早速海に投げ込んだ。
……釣られた! 海を満喫するって普通ビーチでしょ?
完全に持ってきた浮き輪やらボールやらが無駄になってしまった。
どうする、この間見たアニメを参考に人魚のフリして彼に釣られるかと現実と妄想をごっちゃにして悩んだ挙句、結局私も釣りをやってみることにする。
釣竿セットを借りて、餌を……餌を……うう、気持ち悪い。
ただでさえ生魚は気持ち悪いのに、餌まで気持ち悪いなんて。
餌をつけて海に竿を投げ込むとすぐに糸がびくつく。
慌てながらリールを巻くと、何だかとげとげした気持ち悪い魚が引っかかっていた。
もっとカクレクマノミとか、レインボーフィッシュが釣りたいのになあと魚をもぎとってバケツに入れようとする。
「ちょっと君、駄目だよオコゼは毒があるんだから。ほら、こうやってハサミを使わないと」
近くのおっさんが私を見かねて一通り手ほどきしてくれた。彼にされたいんだけどなあ。
手ほどきを受けて再び竿を投げる。1分ほどして何だか手の生えたオタマジャクシみたいな気持ち悪い魚が釣れた。
「……♪」
私には釣りの才能があるのだろうか、面白い程魚が釣れる。
「……」
一方彼は何故かまだ一匹も釣れていないらしい。ひょっとして私が邪魔しているのだろうか。
申し訳なくなってきたので、こっそり彼のバケツの中に何匹か魚を入れる。
「は~あ、帰るか……」
魚を一匹も釣れなくて落ち込む彼であったが、バケツに魚が入っているのを見て不思議がる。
「……♪」
良い事をすると、気分がいいね。
タイトル:『大漁です!』
本文:魚がいっぱい釣れました!
その日の夜、彼がブログに私が釣った魚の写真を載せる。
何だか物凄く虚しい記事だなと思いつつ、
コメント: すごいです! 釣りの才能ありますね!
そんなコメントをつける私は案外ド畜生かもしれない。




