ストーカーは治療してもらえる!
「今日もお弁当ありがとう。一緒に食べようよ」
「……♪」
工事現場でのアルバイト二日目、今日も変装してお弁当を差し入れ、彼と一緒にお昼ご飯。
角材の上に座る洋服姿の私と、青のつなぎでそっち系の人にも人気の出そうな彼。
「服可愛いね」
「……♪」
服を褒められてデレデレする。自分で言うのもなんだが服のセンスには自信がある。
夏の解放感と煌びやかさを併せ持つ、ゴシック&ロリータ&アバンチュールファッションだ。
「でもさ、ここへ来るんだったら、汚れてもいいような服にした方がいいよ。ほら、もうスカートに土埃がついてる」
「……!」
彼がそう言いながら私のスカートについていた土を払うもんだから、私の顔はタコさんウインナーにも負けなくなってしまう。
スカート越しとはいえ、ふともものあたりを触られるのは酷く恥ずかしい。
私は元々無言だが、彼も気まずくなったのかしばし沈黙の食事が続く。
「……そういえば君って、俺のクラスの女の子に似てるなあ」
「……!」
「わ、大丈夫?」
彼にそんな事を言われたもんだから、むせて飲んでいたお茶を噴きだしてしまう。
変装で見た目は変えられるかもしれないけれど、体格は変えられないのだ。
「そういえばここの責任者の所属しているグループ、その子の苗字と同じなんだよね。視察に来てるってことは、君はもしかして彼女の知り合いなのかな?」
しまった、珍しい名字だしそりゃバレるに決まってる。
首をぶんぶん振って否定していると、拍子にサングラスが取れて飛んで行ってしまう。
まずい、顔まで見られたらお終いだと慌ててサングラスを取りにいくも、思い切りこけてしまった。
「大丈夫? はいこれ」
情けなく地面とキスしてデザートに砂を食べている私に彼がサングラスを拾って手渡してくれる。
彼に顔を見られないようにサングラスを装着し、ぺこぺこと頭を下げる。
「血が出てるじゃないか。ちょっと待ってて、救急箱が向こうにあったはずだから取ってくるよ」
言われてみると確かにおでこの辺りがズキズキする。
すぐに救急箱を持ってきた彼が消毒液とガーゼを取り出して私の傷口にそれをつけようとするが、
「……!」
恥ずかしくてつい反射的に彼の手を払いのけてしまった。
「え、どうしたの? 大丈夫?」
「……! ……!」
ああ、親切な彼の手を払いのけてしまうなんて、私は最低だ。
ポロポロと涙を流しながらただひたすらペコペコと謝る。
「別に気にしてないよ。それよりほら、早く消毒しないと化膿しちゃうよ。ちょっとしみるけど我慢してね」
こんな酷い女にも優しくしてくれる、聖母のような彼は私のおでこを処置して、
「いたいのいたいのとんでけ~……って、何やってんだが、俺は」
あろうことか、私の頭を撫ではじめたのだ。
「……」
「……ってあれ? もしもーし……」
おでこと鼻から盛大に血を噴きだしそうな勢いで私の頭はスーパーノヴァ。
気づいた時には彼が運んでくれたのだろうか、シートの上で寝ていた。
彼に貼ってもらったおでこのガーゼ、一生剥したくないくらい嬉しい。




