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ストーカーは普通の恋愛がしたい!

 今日は彼が恋愛映画を見に駅前の映画館へ行くので、

 私もそれについていって彼と疑似的なデートを楽しむことになってる。

 楽しみで楽しみで前日の夜なかなか寝付けずに朝の4時くらいまで布団の中で悶えたが、

 寝過ごすこともなく無事に朝起きて仕度もしていつでも行けます状態。

 なのに。


「……グー」


 現在12時。彼の部屋からいびきが聞こえる。

 彼は11時の映画を見にいくとブログで言っていた。

 つまり彼は思いきり寝過ごしているのである。

 折角のデートなのに、私がどれだけの想いをこめてウキウキしながら洋服を選んだと思っているのか、と逆恨みしながらも彼が起きるのを待っていると、20分ほどで彼が起きたのかあくびをする。

 呑気なものだ、私は朝の9時半くらいからずっと正座して待機していたのに。

「しまった、寝坊した! しょうがないから、14時からの上映を見よう! さあすぐに支度して出かけるぞ!」

 寝坊に気づいた彼がいつも通り誰かに伝えているかのように大声で独り言をこぼす。

 すぐに彼が部屋を出たのを確認して、私も部屋を出る。

 まったく私がまだかまだかと待機した3時間、どう埋め合わせしてくれるんだこの野郎、責任とりやがれこん畜生。



「あれ、君も映画見に来たの? 奇遇だね」

「……!?」

 責任をとれとは言ったが、映画館のチケット売り場で彼の後ろに並んでいる私に気づいて声をかけろなんて言ってはいない。

「一人で来たの?」

「……」

 彼の問いかけにコクコクとうなずく。ああ、恋愛映画一人で見る寂しい女って思われちゃった。

「俺も好きな作品だったから見ようと思ってきたんだけどさ、やっぱ恋愛映画を男一人で見るって寂しいよね。良かったら一緒に見ようよ」

「……!」

 するとなんと、彼の方からそんな事を提案してきたのです!

 つ、つまりこれはまぎれもなくナンパ! デートのお誘い!



「あ、あれ? おーい……」

 しかし残念なことに、意気地なしストーカーな私は彼とデートするなんて心臓がいくつあっても足りないので恥ずかしくて逃げちゃうのです。

 しかしここまで来て映画を見ないという選択肢はない。

 私は女子トイレに向かうと個室でこんなこともあろうかと用意しておいた変装セットに着替える。

 前回彼に騙されてホラー映画を見せられた時と同じスタイルで、前回同様にさりげなくシアターで彼の隣に座る。



「……♪」

 うへへ、恋愛映画面白いよお、しかも彼が隣だよお。

 彼と隣り合ったまま恋愛映画見るなんて、頭がフットーしそうだ。

「……ふぁ~」

 ただ少し不満があるとすれば彼が少し退屈そうなところか。

 まあ確かに男向けではないかもしれない。内容も至って普通の、だからこそ誰にでも起こりうる、そんな恋愛模様だし。

 普通じゃない恋愛してる私だからこそ、こういう普通の恋愛に憧れちゃうのだ。

「……!」

「あ、す、すみません」

 そんな感じで独りよがりに盛り上がっていると、私の左手にポンと手が置かれる。

 勿論それは彼の右手。どうやらコーラをとろうとして手を間違えたらしい。

 彼と手が触れあうなんて、頭が蒸発しそうだ。



「……♪」

 映画を見終えた帰り道、彼の背中を見つめながら、自分の左手をくんくんと嗅ぐ。

 アイドルと握手した手を洗わないと言っているアイドルオタクを気持ち悪いと思っていたが、

 なるほどその気持ちもわかってきた。

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