ストーカーに間接キスのチャンスが!
『ストーカーに餌をあげないで!』第2部に相当
「……」
とあるお昼休憩中、自分の席でもしゃもしゃとご飯を食べながら彼がクラスメイトと食事をとっているのを眺める。
私と違って、彼は同性の友人が多い。
不良に絡まれる私を颯爽と助けてくれるような爽やかな人間性もそうだし、
男でも憧れてしまいそうなたくましい身体もそうなのだろう。
まさに私とは正反対の人間だ。
彼と自分がいかに釣り合っていないかを再認識してしまいどよんどとしてしまう。
「なんだそれ、まずそうな野菜ジュースだな」
彼が取りだした野菜ジュースの見て、彼と一緒にご飯を食べているクラスメイトが苦そうな顔をする。
見ると確かに彼の持っている野菜ジュースはパッケージからして苦そうだ。
緑の野菜はどうしてああも苦いのばかりなのだろうか。私は緑の野菜が大抵嫌いだ。
しかし今の貧相な自分の体を思うと、好き嫌いはするべきじゃなかったなと後悔する。
「苦いけど、すんげえ栄養にいいらしいぜ」
彼は一人暮らし、何かと野菜を採らない生活になってしまうのだろう。
それを野菜ジュースで補おうとするその健康管理は流石。一人暮らし初心者の私も見習おう。
「ま、まず! 無理、これ無理だわ」
しかし彼は野菜ジュースを一口飲んだだけでかなりヤバイ顔になるむせる。レア顔だ。
余程まずかったのか、彼は教室の後ろにあるゴミ箱めがけて一口飲んだだけの野菜ジュースを放り投げる。
しかし彼の投げた野菜ジュースはゴミ箱の縁に当たって跳ね返り、ゴミ箱付近に座っている私の椅子の下に転がってくる。
「……!」
何と言う僥倖か、多分私は間接キスの神様に愛されているのだろう。
私はすぐにそれを拾ってカバンに仕舞う。
周りにバレてないだろうかとキョロキョロと辺りを確認する。
クラスメイトは私に全く関心がなく気にもとめてないのか、私のねこばばに気づいた人間はいないようだ。
ちょっと寂しい。
「……♪」
教室から抜け出した私は少し離れたところにある空き教室へ。
そこの机に先程入手した野菜ジュースを置き、うっとりと眺める。
理由は勿論、この野菜ジュースは彼が口をつけたものだからだ。
つまり、今から私は彼と間接キスをするのだ。
誰もいない教室で小躍りした後、ストローに口をつけ、
「……! けほっ、けほっ」
ついつい中身を飲んでしまいむせてしまう。想像以上にまずい!
途端に気持ち悪くなった私は教室を出て、近くの水飲み場で口をゆすぐ。
折角彼と間接キスできたのに、すぐに洗い流さないといけないなんてはがゆい。