ありがちな敵の登場
「たこ焼き屋。それかパン屋さん。うーん・・・・・・甘味どころのお店もいいかな」
バイトじゃなくて仕事だぞ、と口出しをしそうになったがやめておいた。
菜々子はおやつかパンを作りたいらしい。
子どものときはなりたいものを「せんべい」とか言っていたから、中2になったんだなぁとしみじみ思う。
俺はタツノリのように「何でも立派じゃね?」とは言えない。
つい「だけどさ、菜々子。それ収入は?」と聞いてしまった。
カチンときたのだろう、答えが返ってきたのは銀髪のシルフィだった。
「不思議だよね、お兄ちゃん。そうやって考えると、どんな仕事も苦しくって、つまらないのになるんだから」
「世界一おいしいものを作るって至難のワザだしっ。だから適当になって、最初の味がどんどん悪くなることもあるじゃない。人間だからどーしょーもないことだってあるけど、常に最高の料理を目指すのってなんか格好いいなって」
うう・・・・・・言葉をちょっと間違えたようだ。妹たちは結束して盛り上がり始めていた。
俺のいないときに、よくこうやって話しているんだろう。
「あ、お兄ちゃん。人のことより自分のこと決めようね」
かなり不機嫌な様子でシルフィが言った。
夕方になった。最近父親がはやく帰れるようになってきたから、もうすぐだろう。
「今日の当番はお兄ちゃんだよね」
「へいへい」
俺はキッチンに立った。簡単な鶏肉の煮込みスープでも作ろう。
ダシを取り、鶏肉と使いかけの野菜を入れてコトコトと煮込む。
湯気がほわほわとあたりを包んだ瞬間。
辺りが真っ暗になった。
【次元航行、休息。】
そんな声が聞こえ、暗闇の中にランプが点灯する。
UFOだ!
俺は目を見張った。宇宙空間のように真っ暗なところで、CMで知ったアダムスキー型の円盤が浮かんでいる。
円盤のハッチが開き、髪をうしろでひとつに束ねた、バンドのギターが似合いそうな感じの男が姿を現す。
【おや・・・・・・敵のようだね。この次元では太陽砲の発砲は認められていない・・・・・・と。なるほど】
何かよく分からないことを言う。
【お兄ちゃんっ】
シルフィの声がした。
気が付くとキッチンだった。コトコトと鍋が揺れる音が続いている。
「お鍋吹いてるよ」
おっと。俺はあわてて火を止めた。