カスミソウ
I introduce one King……
「どうぞ」
優しく声をかけられ、おずおずと(自分からしたらかなり高価な物に入りそうな)車から降りた。流れるようにエスコートしてくれる彼とは反対に、エスコートされている自分の動きは新人の役者並にぎこちない。
(仕方ないよ、エスコートなんてされなれてないんだもん……)
そう誰ともなしに言い訳しながら、ふと上を見てみる。途端、はっとするような紺青が視界に広がった。鷹元の傘だ。濡れないようにとさり気なく差してくれるのは嬉しい、んだけど……ね。躰が触れてしまう位置を保ったまま歩くのは恥ずかしい。思わず、彼が車のドアを閉めている間に少し距離をとってしまった。しかし目敏い彼はすぐにそれに気がついたらしく、綺麗な手が私の肩へすいと移動した。……これじゃあもう逃げることなんて出来ないじゃない。
「まだ恥ずかしいとは思うけど、少し我慢してね」
優しい口調で諭すように言われて、再び羞恥心が芽生える。気付いてたんだね。ああもう。どうしろっていうの。
私の彼氏は、恥ずかしいくらい紳士なんです!