お誘い
~お誘い~
「…でさ、みんなで行こうって、遊園地。由実ちゃんも行かない?新しい乗り物もできたみたいだし。」
私は、美香の声で我に返った。どうやら、お弁当のウインナーを箸でつかんだまま固まっていたらしい。
「新しい乗り物ってどんなの?」
つかんでいたウインナーを勢いよく飲み込んだ私は、のどにひっかけてゲホゲホとせき込む。
「おばけやしき。あ、これって乗り物じゃないね。」
「え、どんなの?」
思わず身をのりだす。結構興味があった。
「『通学路』っていうおばけやしきだって。学校の帰りの通学路を再現されてて、そこで幽霊がいっぱい出てくるってやつ。曲がり角とかいっぱいあるしね。」
「へえー。おもしろそうだね。」
一緒に昼食を食べていた李菜も口をはさんだ。
「でも、あのおばけやしき、車どうしの接触事故で死んだ女の子の幽霊が出るらしいよ。しかも、学校帰りに死んだっていう。」
「えっ……」
「あ、もしかして、由実ちゃんおばけやしきニガテ?」
李菜が心配そうに聞いてくれた。
「……うん。……あ、ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
「うん。」
私はそう言って席をたった。
教室を出て、トイレではなく、隣の更衣室へと向かう。
私は、そこで泣いた。
思いっきり泣いた。
涙でぬれた顔をあげ、色あせた天井を見る。
そして、ふとあの日のことを思い出した。
「亜実……。」
気付けば声に出していた。
亜実……あいたいよ……。
どうしてこんなに早く空の向こうへ行ってしまったの?
亜実がいなくなってから、すべてがなくなってしまったよ。
すべての色がなくなってしまったよ。
明るいオレンジも、やさしい黄緑も。悲しみのブルーや怒りの赤さえなくなってしまったよ。
亜実…私はどうすればいいの?
ひとりぼっちはつらいよ……