嫌な転移者に迫られるくらいなら堕ちてみたらいいじゃないか的な話
「あの、ここはどこですか?」
突然、我が領地に黒い瞳、黒髪、肌は濃い種族が現われました。
「な、何だ。おめー」
農夫が見つけ。
手に余るので。
「見たところ、綺麗な服着ている・・」
「話が訳分からない」
「ジロー・タナカ?家門持ちだべさ」
「領主様にお預けするべ」
「「「んだ。んだ。んだ」」」
屋敷に来ました。
お父様は客人として迎えました。
「うむ。しばらく逗留するが良い」
「はい、よろしくお願いします」
農夫の報告通り話す内容は意味が分からないのです。
「僕は日本から来ました。鉄のレールの上を電車というものが通っていました」
「ほお、ニホンとは魔道大国かもしれないな。人口はどれくらいの国かな」
「え~と、一億三千万人くらいですかね」
「はあ?この国は三百万人だぞ!」
いくら身元を調べても痕跡はありません。
最初は大人しかったのですが・・・
「キャア!ジロー様、着替え中ですわ!」
「あ、ごめん、ごめん」
着替え中とか、湯浴み中にかなりの頻度で出くわすようになりました。
「お嬢様、あのジローは怪しいですわ。鍵をつけておきましょう。手配します」
「ええ、ケリー、お願いしますわ」
でも、
「あれ、ごめん。ごめん」
「ヒィ、どうして、鍵をかけたのに!」
見張りをつけておいても、ダメでした。
見張りをすり抜けたのか。
ジロー様は鍵にお構いなしに入って来ます。
「うわ。ごめん。ごめん・・メリングさん。本当にごめんなさい!」
目が笑っている。
恐怖を感じました。
「ケリー、ジロー様、怖いですわ」
「おかしいですわ・・・旦那様も注意しておりますが、偶然だったとなりましたわ」
そもそもジロー様は私の知っている殿方とは違います。
お父様が聞きましたが、ジロー様のニホンという国での役職は・・・
「ジロー殿、ニホンでは何をされていたのか?」
「え、~と、本を読んで暮らしていた・・・」
「ほお、高等遊民・・・ですかな?」
「まあ、そんなところだよ」
ジロー様は二十歳前ですわ。通常、我が王国では男子は何らかの職についているものですわ・・・・
体は大きいですが、何か別の物が入っているような気がしてなりません。
よほど裕福な家門出身なのかしら。高度な教育を受けているはずなのに。
しかし、とても浅慮にも見えます。
「ねえ。とても面白い話を考えたよ。絵師を雇って漫画を書いて売れば大もうけ出来るよ」
何か。カゲが超人的な戦闘を行う話とか、狩人の話とかそんな内容でしたわ。
「何ですの・・・読み物など、有閑マダム相手の恋愛小説か、教訓を教えるタイプでなければ売れませんわ」
「ニホンでは数千万部売れているよ。大丈夫だって」
「ゴホン、我が王国で最も売れた本は、『騎士爵の娘達への手紙』は一万部ですわ」
「遅れている!」
ええ、話がかみ合いませんわ。
お父様に対しても・・・
「ねえ。ここ子爵家でしょう。寄親っているのでしょう?僕をつれて行ってよ」
「ゴホン、侯爵閣下には年に数回しかお会いしない。お忙しい方だ」
「侯爵か・・・」
無礼な物言いです。
なるべく、接触しないようにしても。
「キャア!」
「あ、ごめん」
何故か、廊下の角でぶつかってしまいます。
「そろそろジロー殿にお金を渡して出ていってもらおうか・・」
「そうね。それが良いわね。メリングもいるし・・・・」
その話が出た頃。
急報が舞い込みました。
「大変だ。ゲール侯爵閣下が王宮の派閥抗争に巻き込まれた。戦争が起きるかも知れない!」
「女手をいるわ。私も行くのね」
ええ、非常呼集がかかりました。
何故かケリーも。
「お、お嬢様、私の祖父が急病です・・・しばらくお暇を頂きたいですわ」
「ケ、ケリー!大変。行って下さい」
私は留守番、庭師の家は離れています。後は通いの使用人たちしかいません。
「お父様、ジロー様もつれて行って下さい」
「それが、ジロー殿のあの体では馬にも乗れまい。正直、足でまといだ」
「大丈夫よ、鍵は王都の物に変えておいたから・・・」
「でも・・・」
「大丈夫よ。貴族の娘に手を出したらどうなるか。ジロー殿も分かっているわ」
「はい・・・」
今日の夜、ジロー様と二人で屋敷に残ることになりました・・・・
「やあ、メリングちゃん。今日の晩飯は何?」
ヒィ、ちゃん?そもそもいつの間にかに名前で呼んでいるわ。
「わ、私、市場を視察する用事がございますから・・・」
「あ、ちょっと、僕も行くよ!」
ええ、何とか振り切って屋敷を出ました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「グスン、グスン、私は一体どうしたら良いでしょうか」
市場に旅の占い師が来ていた。
思わず愚痴をこぼす。
魔道師が着るようなローブを羽織り。頭はベールをかけ目線まで隠れて口元しか見えない。
辛うじて女子と分かる占い師だわ。
「・・・・・・」
占い師は無言でベールをめくったわ。
「ヒイ、ジローと同じ種族?」
「シィ!」
人差し指を立てて静かにの手振りをしたわ。
瞳は黒い、肌が濃いわ。
「私は佐々木です」
「メリング・クッパーです。子爵家ですわ」
「宿屋に泊まっては如何ですか?」
「旅でもないのに宿屋に泊まったら逢い引きと思われます」
「まあ、大変ね、なら、対処法を教えます。お時間を頂いても?」
「ええ・・・」
それからしばらく市場の天幕を借りて・・・まるで舞台女優のような仕草を練習した。
「・・・これでいいかも」
「これでよろしいのかしら?本当にこんな方法で?」
「ええ、私も夜になったら、潜んでいますから大丈夫です」
「では、この衣装をお買い上げ下さい」
「はい・・・」
銀貨二枚払ったわ。
夜、部屋にしっかり鍵を内側からかけていた。
しかし、
カチャ!
鍵が自然と開いた。これは魔法ではない。まるで世の理のように開いた。
暗闇だわ。
「メリングちゃん。起きている?」
その時、私は・・・生活魔法で灯をつけた。
「ランプよ。ささやかな火を灯したもえ!」
ピカッ!と部屋を照らしたわ。
そして、ササキ様から学んだ舞台俳優のように話した。
「ォ前£気持悪レ~象さん小L+ξウだナg」(お前、気持悪い。象さん小さそうだな)
私は金髪だわ。服はササキ様から買った制服という物をかなり着崩して来ている。
すると、ジローは。膝を付いて・・・
「ウポポポポー!メリングちゃんは処女じゃなかった!精子が耳に入った!」
絶叫し始めたわ。
子供のように床を転げ回った。
「ゲットアウト?おけまる水産?」(出ていけ。分かったか?)
「こ、こんな令嬢!、嫌だ!」
その後、窓からササキ様が入って来た。
「フウ、良かったわ。上手く行ったようね」
「ササキ様、手にしているのは・・・変わった弓ですわね」
「そう、これは滑車付の弓・・・」
「まさか・・」
「そう、上手く行かなかったら殺そうと思ったわ」
「なら・・・何故、最初から・・・」
「こういうのは自分で追い払わなければいけないわ」
クスッと笑って、ササキ様は去ったわ。
その後、鍵が自然に外れることはなくなった。
ジローは部屋に籠もったままだ。
食事をドアの前に置いておく。
そんな生活を続けていたら、お父様とお母様が帰ってきたわ。
侯爵閣下の兵を連れている。
「フウ、宮廷抗争は終わった・・・ジロー殿のことを侯爵閣下に話したら、異世界から来た高等遊民級ではないかと言う」
「ニート?」
「ああ、当たり外れが大きいから我が家門では無理だ」
「どうなるのかしら・・・」
「おそらく、碌な知識も技能もないから隔離だな・・・」
「連行だ」
「ウギャアアアーーーー、プギューーーー!」
「隔離?」
「そうだ。危険な奴かも知れない」
ジローの叫び声を聞きながら・・・ササキ様が何故身を隠していたか分かったような気がしたわ。




