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第三次スーパーロボトイ大戦  作者: おれごん未来


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第5話 別人格による再起動

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 この期におよんで詩音には新たな発見がある。


「はァ!? こいつまぶた閉じてんじゃん! はぇ〜、すっげえ精巧なフィギュア。ロールアウト直後の機体? にしてはずいぶんな重装備だったから、特務機。だとしていったい——」


 気がついた。目を開けたらあおむけに寝かされていて、すっかり白くなった空を見上げている。

 ここは屋外だ。

 その視界の半分を隠すように、人物がおおいかぶさって見下ろしてくる。

 目の焦点はまだ、合わない。


「再起動できた? おはようさん」

「? 再?」

「あっと、すぐには動かないほうがいいって。まだ電脳にできちまった破損領域の修復作業中なんだろ?」


 起きあがろうとしたが、詩音にやんわりと制止される。


「デン? 修復?」

「悪かったな、こんなとこに寝かせたままで。ここのロボトイどもと来たらいけ好かなくてさあ、預けとくと何されるかわかんないって思って。アタシの地元博多の連中に任せたかったのに、明るくなっただろ? それで動けなくなっちまって。アタシも連中とははぐれたまんまでね。なんでか、通信もつながらねえでやんの」

「はあ……」


 通信が途絶えているのは工場が備えていた異次元通信の母機が失われたからである。これ以降は接触回線と、口頭による会話、各個体に備わったごく短距離の通信のみが継続して利用できる。


「なんせ夜通し救助活動に参加しててさ。んま、結局助けられたのはアンタひとりだけだったんだが。それでも命を救えたことにはかわりねえ、胸はって博多に帰れるってなもんさ。アタシは詩音、魔道大戦まどは⭐︎マジカルの星ノ宮詩音。漢字はウタにオト、シオンって呼んでくれ」

「詩音さん、助けてもらったみたいで。ありがとう」

「ううん、大したことないって。それより、アンタどこの子なんだ? 守備隊はアンタのこと知らねえみたいだったぜ?」

「守備隊? わからない、わたしは兵隊なんかじゃ。だって高校生……だった……?」

「はァ?」


 電脳の混濁、戦場であれば珍しいことではない。詩音は何度も遭遇し、それは時間と共に解決される。


「そいつぁ設定の話だろ。兵隊じゃないったって、アンタえげつない重武装してたぜ、拠点防衛っぽいやつ。ぜんぶ燃えちまったけど。だからアタシ、最初アンタがロボトイなんだと思って。なんだか胸が苦し、っとと、そうじゃなくて、胸の外装? とかいろいろがバラバラ〜って崩れたら、中から裸のアンタが」

「そうだったんだ……」

「なんでかアンタの情報が吸えねえんだよな。識別信号の部分のメモリが破損したのか、まだ付与されてなかったか。それとも、付与される予定もねえ試作止まりだったか。良かったら聞かせてよ、アンタのこと」

「名前は……まい……マイだよ。沢村マイ」

「? そんなキャラ知らねえなあ? 新作? やっぱ玩具オリジナル?」


 自身が混乱しているからか。マイは詩音と名乗った人物が何について話しているのかを正確に咀嚼できていない。

 そもそもこの、詩音とかいうコスプレイヤーのガチ勢がぐいぐいきて困る。自分は気絶からの回復直後、前後不覚もはなはだしく、そっとしておいてほしいとすら感じているのに。


「わたしは……茨城県つくば市の17歳。ここには、たしか修学旅行で来てて事故に————」

「だからそれは設定だって。それにしても、すげえよなアンタの身体」

「? そう? 普通だよ、普通体型」

「そうじゃなくって。まぶたが閉じるのもそうだし、そのう。アタシらってさ、フィギュアじゃん?」

「フィ? ギュ?」

「だからパンツはもちろん、上なんて服も脱げねえ」

「?」


 マイは好意的に受け取って、フィギュアとはフィギュアスケーターのことを指しているのかと思った。専門用語なのか、とにかく会話のはしばしにふだん使わない単語が出てくるジン物であると。

 だが様子がおかしい。詩音の服はまるで、中がすべて詰まっているかのような重さと空間の無さをおぼえる。ピッタリと身体に沿い、シワの部分にすら質量を感じる。

 その予想を肯定するように、彼女が叩いてみせたスカートは硬質な音を立てた。


「その点アンタのはそのう、なんでか、裸なんだ」

「んん!? ん゛ん゛ん゛ん゛!?」


 自身の身体にはじめて目をやって、驚いた。


「え待って!? やだ! ウソ!?」

「そうだよなぁ、わかる。アタシら女性個体ってさ、いちおう乙女の思考を持たされてんじゃん? いま言ったようにアタシは服が脱げねえ仕様だから、このガッチガチのスカートすら貸せねえのさ。だから、そこに落ちてたポケットティッシュってやつで、いちおう」

「これが!? ポケット!?」


 それはまるで布団のよう。マイにとってその白くて厚い波状に折り目のある巨大な正方形は、被災した際に身にまとう、保温となるアルミシート。

 冷静に考えればあれは極めて薄く、また銀色であった。

 下に一枚敷いてもらい、上にも同じものがかぶせてくれてある。それがティッシュとは。

 たしかにティッシュらしい。その生地っぽくはある。特徴的な山と谷の折れ目もある、分厚く、はるかに巨大ながら。

 それにも増して。

 落ちついて、目の前の美少女を見やる。覚醒も本調子となり、目の焦点が合って解像度が上がるとそれは。

 詩音と名乗る存在が、異質であることに今さらながら気づく。


「フィギュあァ!?!?!?!?」


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