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第三次スーパーロボトイ大戦  作者: おれごん未来


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第17話 プラモデル作り

 静岡から東へ向かう長距離トラックの多くは東京をめざす。ヒトの目には触れにくいその車体の天面に乗り、マイと詩音は静岡本社工場を離れ、高速道路で一路成田へ。

 マイが神妙な雰囲気でうつむきがちなのは、逃亡しなければならない置かれた境遇ではなく。


「この台風のような暴風のなかですることがプラモデル作りなんて……」

「どうせヒマなんだからいいだろ? ちょうどいいヒマ潰しになるって」

「わたしプラモデルなんて作ったことない、生まれて初めて」

「奇遇だな、アタシもさ」

「ふふ、やっぱり?」


 マイが製作中なのはアイドル衣装で、詩音はその手伝い。マイがランナーの接続部分を熱した手で握ることで溶断しては、詩音が組み立ててゆく。


「いやあ、スナップフィット様さまだよな。これで接着剤が必要だったらどんだけ時間がかかるやら」

「そうは言ってもね、ちょっとでも油断したら部品が風で飛んでっちゃうんだよ?」

「そこは気合を入れてくれ。ひとつでも紛失すると完成しなくなっかんな」

「マジっすか」


 パッケージが焦げただけで残っていた商品の中から服部分のランナーを拾い、携えてきた。これは自動人形のための部品でなく、一般販売のプラモデル。

 マイはトラックに乗るまでそれを前方にかざし肢体を隠すようにしていたが、そもそも自律して動く人形がヒトに見つかればただ事では済まない。あの時のマイの行為に対して漏れた詩音のコメントは、「まあいいけどさ」。


「にしてもだよ、この超特大の自分サイズはないよ、ない」

「ヒトじゃ“背に腹はかえられねえ”って言うだろ? それとも裸のまんまでいるのがお好みか?」

「意地悪。スッポンポンよりはマシってこと、わかってはいるんだ」


 このシリーズのプラモデルは本来ヒトの1/10サイズのもの、1/7相当である詩音やマイとは寸法が合わない。そこは詩音に妙案があり。


「いいかマイ、こっからが勝負だ」

「う、うん……!」

「一発勝負だかんな、失敗すんじゃねえぞ」

「そう言われてもね……、ほかの子の身体を延ばすだなんて……」


 服のプラモデルなんてそうそうあるものではない。そのためマイたちがいま服として仕立てようとしているのは、ダイバン社29MSシリーズの、アイドルプロフェッサーの胴のパーツ。これを服として見立て自分サイズに、熱で溶融させて引き延ばそうというのだ。


「まだ言ってんのか? 四の五の言ってらんねえだろ。いつまでもスッポンポンでいいのか?」

「それはそう。でもちょっと、なんだか、ね。この子の魂、人形の魂ってどうなってんのかなって」


 視線をトラックの、長期間洗車されず排気ガスで汚れたままの天面に落とすマイ。

 このままでは作業が進まない。


「んなもん考えたこともねえよ」


 ようは人形として完成する未来を見れず、服として消費されてしまう子に対し気が引けると管を巻いているのだ。

 詩音は痒くなど一生ならない頭を擦りつつ、あの工場火災現場を思い浮かべて。


「そうだなぁ、アタシら自動人形なら稼働を開始したとき、なんだろう。ふつうの人形なら、完成したときってことでいいんじゃね? 焦げたパッケージに入れられたまま災害ゴミに出されるより、ほんの一部のパーツでも使ってもらった方がこの子も成仏できるってなもんさ」

「そうなのかなぁ」


 そうは言っても持ち出したランナーはごく一部、その点についてマイは思い至っていない。

 プラモデルとは、箱に入っているすべてのランナーがそろって初めて全体が完成するもの。胴の部分のランナーを持ち出したということは、彼女の基準ではバラバラ死体の一部を移動させたも同じ。

 詩音はそれをおくびにも出さない。マイがそこに考えが至らないのは詩音にとって都合がいい。ようは面倒くさいのだ。

 ゆえの即答。ここまでの思考わずか1フェムト秒。


「そうだよ」

「だよね、やるよわたし……。背に腹はかえられないんだもんね……!」


 マイの右腕の能力でプラスチックパーツを熱し、柔らかくなったところで少しずつ、少しずつ延ばしてゆく。

 右脚で押さえ、右手で熱し、左手で引っぱって延伸する。


「んぎぎぐぎぎぎぎ!!」

「いいぞ、その調子だ。最悪破けたり穴があいたりしてもそういうデザインってことで押し通せる」

「うん、それは嫌。なんとかギリギリ大丈夫な線を目指して……」

「おい手ぇ止めんな」

「だって詩音ちゃんが。んががががががが(話しかけるから)!」

「おいそこ透けてんぞ! ストップストップ!」


 そこで気づいたのはマイ。


「あのさ、これってわたしが熱して詩音ちゃんが引っぱったほうが効率いいんじゃ」

「ばれたか」


 やがて。

 すべての作業を終え、着てみる。着るというか、自らの身体を芯に組み立てる。


「こんなモナカみたいに挟む服なんて初めて着たよ」

「ぜいたく言うな、アタシなんか生まれてこのかたずっとおんなじ服だぜ? しかも一生脱げねえ。アタシだって一着ほしかったっての」

「じゃあ今度作ろうよ、詩音ちゃんのぶん」

「アタシはいいや、ほかの子の胴を着んのは」

「その問題があった。 ……ん? やっぱり詩音ちゃんだって嫌なんでしょ!」


 じゃれる程度に揉めはしたが、一応の完成。

 袖部分、胴部分、スカート部分を決められた順番で合わせていくとワンピースになる。


「どうだサイズは。動きにくいとかないか」

「前後方向は分割されているから大丈夫なんだけどひねりがね、干渉するからぜんっぜん曲げらんない。それより、合わせ目は溶かしてくっつけたから大丈夫として、この丈の短さはどうなの? もうちょっとだけどうにかならなかったのかなぁ」


 子ども服のワンピースを大人が無理やり着ているに等しい。1/10サイズではスネほどもある衣装が、1/7のマイでは熱して最大限延ばしたところでやっと股下ほど。

 この期に及んでマイはすそを下方へと引っぱる。


「くうぅぅぅ……」

「おいおいおい、無茶すんな! それ以上延ばしたら本当に破れんぞ。大事なところが穴あきになってもいいのか?」

「くぅぅぅぅ!」


 フィギュアになってしまった我が身が恨めしいマイである。

 爛れたようになっている詩音の手をマイの視覚センサーが捉えた。それは昨夜、燃えるマイの外装を取り払った際に若干溶融してできたものだ。


「ねえ、やっぱやろうよ」

「別にいいってば」


 マイの熱した右手で炙り、材料のもつ表面張力による自己修復力で元の状態に近づけようというのだ。

 これまで再三の提案を断られており、しかしちょうど作業を終えたところ。先ほど通過した東名高速道の標識は海老名SA、しかも先ほどから渋滞が発生している。トラックの走行距離はまだまだ残っている、はず。

 詩音の根負け。マイが熱し、詩音が熱っせられていない方の手で叩いて整形、毛羽立っていた箇所はおよそ平坦になる。


「それでも完全に元どおりとはいかないんだね」

「別にまんまでいいのに」

「ううん、ダメ。改めて、わたしのためにありがとう!」


 マイは最高の笑顔を詩音に贈った。

 渋滞で間隔の近くなった幾つもの車両のヘッドライトが、車体上部も程よく照らす。

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