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第三次スーパーロボトイ大戦  作者: おれごん未来


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第16話 精鋭部隊強襲

 死闘だった。

 数で有利なはずのロボトイは、力量で優る2体のフィギュアに勝てない。先の16機の戦闘でそう計算結果が出た。そのため彼らがとった戦法は、射撃を捨て、肉弾での自爆作戦。

 手刀が斬り裂くよりも速く自爆。


「キャアッ!?」


 長槍が当たる直前に全弾発射。


「クッ、こいつ!」


 誘爆。

 相手に少しでも手傷を負わせ続けていれば徐々に優位に立てるという、最後に一機が立ってさえいればいいとの戦法は、ロボトイ側を着実に勝利へと導く。


「詩音ちゃん、まだ無事?」

「ああ。ふふ、やっぱキチぃか?」


 互いの無事を口頭で確認せねばならないのは、互いに敵から視覚センサーを逸らすことができないため。背中合わせとなって僚機の背後を守っている。

 詩音はひざ上ほどから右脚を失い、静止時は槍、機動時はバックパックとしても機能するALICEのおかげでやっと立てている状態。

 マイはポッキーの箱が全損、またも一糸纏わぬ姿に。いまだ消せていないボディペイントに集中力だけは救われている。


『仕上げだ、一度にかかれ!』

『応さ!』


 削り。

 削られ。

 今や死屍累々である。爆発四散か両断されたか、風穴が開いたロボトイがおり重なって沈黙する。


『まさかここまでとは。フィギュアといえどふたつ名を持つものたるや恐るべし』

「そう言うアンタだってネームドじゃねえか。知ってんぜ、百獣の王ボルトロム。蟲が巣から出ることもできねえほど恐れる存在って聞いてるぞ。そんなやつが部下を死に追いやって、手負いになってからご登場ってか。そりゃあ確実だわな」

『多対2に混ざりたくなかっただけのこと。討ち取れればよし、討ち取れずともよし。事ここに及んでは是非もなし、1対2である、いざ尋常に』


 ボルトロムは両腕の重量物を放棄する。スペースカッターとメガブラスターを無造作に地面へ落とした。


「しかも飛び道具を捨てる、か。根っからの戦闘狂らしい」

『極論楽しめればよいのだ。蟲はもとより、ロボトイ同士の手合わせにおいても並び立つものはおらぬ、と思うたが。貴殿らには期待する。さ、参られよ』

「言われなくてもぉ!」

「マイッ! うかつに出るな!」


 貫手で斬りかかったマイを軽くいなし、重心がずれたところへ無感情に獣王剣を振りおろす。


「チィッ!」


 あわや両断を、詩音が投げて寄越した長銃が防ぐ。

 エネルギーパックの中では励起されていないことから小さくて済んだ爆発は、しかしふたたび間合いを取るには都合がよかった。


「あ、危ッ!?」


 長銃は死屍累々のロボトイから。駆け寄る先の地面から拾いつつ、アンダースローで投てきを。


「バカマイッ! あんなのたまたまだぞたまたま! 5回に4回は失敗するとこだ!」

「ごめん詩音ちゃん、助かった」

『その程度か? ロボトイが疲れたなどと言うでないぞ』

「だれがロボトイだよ、こっちはフィギュアだっての!」

『フ、そうだったな』


 仕切りなおす。

 これ以降も増援は来ようが、現状すぐに駆けつける気配はない。通信の復旧が絶たれているがゆえ。


「こっちはガタガタ、アンタは……そんなでもないな。えらい丈夫なやつ」

「そうなのかな、えへへ」

「にしてもだ、このままじゃ勝てねえ」

「やっぱり? わたしも同意見」

『万全の状態であったらばとは言うてくれるなよ。戦場に於いては万全こそが稀、そのときどきで全力を尽くせ』


 詩音はまさに真理とうなずきつつも、つい笑いが漏れて。


「ハッ、言われなくとも!」


 互いにここが勝負どころと踏んだ。そのため動けない。

 すでに間合いには入っており、先に動いた方が負ける。


「…………!」


 我慢の限界を超えて。

 先に動いてしまったのはマイ。


「ェィヤーッ!」

『殺った!』


 ボルトロムは片ひざをつき、マイの突きを刀身で滑らせさばいてから、小さな体へ潜りこんでの一撃を試みる。彼の手のひらは大砲の砲口と同じ、剣を離して向けるだけで勝負はつく。

 ところがマイの輝く前腕が解除される。

 得物同士の力場の反発により滑らせていた刀身が外側へ振り抜かれてしまい。

 マイの右腕が宙を舞う。


「くうッ……!」

『なッ!?』

「チィェストォ!!」


 無防備となったボルトロムの胴を、即座に詩音の魔法の槍が突き刺した。


『……見事……!』


 動力炉を貫く一撃。

 ボルトロムは5体合体、両腕両脚は本来独自に動ける準自動人形のはず。だがコアロボットである黒ライオンがサブメカの電脳を廃していたため、即時に全機能を停止した。


「おいマイ! 大丈夫かマイッ!?」


 そこで詩音ははたとなって。


「いや、あの、クレアマリス、なのか?」

「ううん、マイだよ、わたしはマイ」

「そっか、そうだよな。フフ」


 ふたりだけの勝利。なにも生まない辛勝。

 ロボトイの増援が来たれば今度こそ。アフリカから誘引した大型昆蟲であっても必死。


「ううッ……!」

「痛いのか?」

『幻肢痛でしょうか。そんなはずはないのですが』

「どうしてだろう、頭の中の子もそんなはずないって言ってるんだけど、なんでか痛い」

「ちょっと待ってな。飛ばされた腕を拾ってくるから」

「うん。あー、うん?」


 槍を松葉杖がわりに、飛んでいった方角へ向かう。

 拾ってどうすると言うのか。詩音は自然とでた自分のセリフに戸惑いを。

 もはや交換パーツを製造する工場はなく、反逆者となった身では修理などしてもらえるはずもなく、換装は交換部品があってはじめて行える。

 唯一部品だけは戦場で拾える可能性はある。だが自動人形にとって死体剥ぎはなによりも恥ずべき行為。それにも今後は手を染めていかねばならない。反逆者とはあらゆる恩恵から外れた者を指す。

 マイに拾った腕を手渡し。しかしそれでどうなるでなし。なんの慰めにも。

 自分の脚もどこに行ったやら。爆発の圧倒的な外力により損壊させられたのだ、探す意味もない。

 自らの思いの赴くままに行動はしたけれど。

 詩音に後悔など微塵もないけれど。

 戦闘用自動人形が戦場で脚をやられては、もう。

 マイとも短い付き合いになったと——


「おま! その! 腕!?」


 マイの右腕が、なぜか元通りに。

 獣王剣により切断されたはずの右腕が、押し当てていた左手を離しても地面に落ちない。それどころか握ったり開いたり、裏返したりして確かめている。


「あはは、あんなドロドロに溶けるからね、あれを応用すればまだくっつくかなぁって。制限時間は超えてたみたいなんだけど、くっついてラッキー!」

「ははは、規格外ここに極まれりだな。なるほどな、HEAT貫手の応用か。もしや、その計算込みで突っ込んでったな?」

「あ、わかる? 合図しなくても詩音ちゃんなら反応できると思って、それで」

「なんとまあ。呆れてものも言えねえ」

「あのときも、今回も、一部の体組織は回収できなくて。さすがに今回はちょっとそれが多かったかな、右手だけ細くなっちゃった。フィーナがいうには、減ったぶん適当なプラスチックでも石でも腕のなかに入れておけばいいらしいんだけど。嫌だよねえ?」


 フィーナが告げたのは、体積さえ同じにしてしまえば外見だけは保てるという話。当然補填に用いた物質は能力を持たず、関節に置けば邪魔になる。高温に熱せられた際に熱膨張、あるいはガスを生じて攻撃を妨げる、との忠告は追加されている。

 急に他の女の名前が出てきてつい、詩音の問いかけが棘を帯びる。


「フィーナって誰だよ」

「わたしの、頭のなかのAIのヒト。サポートAIってやつ?」

「なんだ、デュアルコアの」

「名前つけたげたんだ、この子も昨日より前の記憶がなくてね。これで詩音ちゃんといっしょだよ。ALICEちゃんって子? 相談しながら戦ってた」

「ああ、うん、アタシのはちょっと違って内蔵されてはいないんだ」


 そう言って背中を見せ。


「いつも背負ってるIフィールドユニット。死んだ戦友から受け継いだユニットでさ、こいつの中にALICEも入ってる。ウルトラマシンみたいな準自動人形で、こいつがかわいいったら」


 詩音は、自分が戻った際にマイが持っていたものについて質問を。


「んで? それはなんだよ。ふつうのフィギュアの脚なんぞ持ってきても動かねえぜ?」

「ああ、うん。でも義足がわりにはなるかなぁって。それに自動人形のものは嫌、なんでしょう?」

「戦場じゃそれしかねえ時もあったが。交換パーツが手に入るまでは我慢しろってことか」


 すぐに死ぬ運命ではないのかも。そう思えた詩音だった。

 だが、自動人形との袂は分かった。博多とも。軍務を忠実に遂行する部下を、関節的とはいえマイが手にかけた。

 嫌疑を晴らす機会を与えられず、断罪されそうになり反撃を。しかも状況証拠からはかなり不利な容疑者の肩を持って。

 クレアマリスとしての記録を失って、マイとして機動しているらしいこのフィギュア。しかもどういう処置を施したのか外観を大きく変えて。本社を根こそぎ灰にした、恐るべき企てを首謀した、と思しき容疑者。


「ハァあ〜、いくらなんでもやっちまったよなァ。むしろ正しく裁かれるところをひっくり返した可能性のが高そうなんだよなァ。今回ばっかりは赦しちゃもらえんだろうなァ」


 気づくと、マイが首をかしげて見上げてくる。


「後悔、した?」

「するもんか。それに関しちゃしてねえよ。今でも正しくあろうとしたと言い切れる。ただな、その結果としてアンタひとり救うのにずいぶんとオイルが流れちまったことは、いつもどこかにとどめておかねえとな」

「うん……」


 昨夜の本社襲撃事件の重要参考自動人形としてクレアマリスが指名手配される。あの場に駆けつけたロボトイ以外にも情報は共有されていたのだ。

 それを予期し、こののちふたりは忽然と、静岡の地から消えた。

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