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第三次スーパーロボトイ大戦  作者: おれごん未来


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第14話 捕捉

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 部下が近寄ってきては電脳で指示を出し続ける詩音である。彼女とマイは結局路地から一歩も出られず、現状釘づけになっている。


「アンタは昆蟲が、この星から生じたものだとでも認識しているのか?」

「え!?」

「あれらは宇宙からさ。まったく別の生態系の頂点が、生物兵器として野に放った尖兵。フソロトゥス星系の常套手段だよ。テラフォーミングはまず、彼らを使って行われる。ところが残念かな、この星は他とは事情が異なっていた」

「ん? どこが?」

「ヒトが、この星の生物がいずれも巨大に過ぎたということさ。さしもの昆蟲もこの星の巨大生物群には手を焼きっぱなしってわけ」

「へぇ、今の今になってもこの星を制圧できていないのはそういう。じゃあさ、こんなのはどう? ロボットって大きさに制限ないんでしょ? だったら大きなロボットでバッタバッタと倒していったら早いんじゃないのかな? 恐竜みたいに。こんなコソコソせずに、ドーンと出ていってバーンとやっつける」

「そりゃあ本星の技術を使えば可能なんだろうが、逆に非効率だろ。それにもう存在だけはしてんだ、でも歩けやしねえ。今のアタシらの技術レベルでそんな巨大ロボを作ってみなよ、どうなるか」

「大さわぎ?」

「そうなりゃいいんだが。それ以前に、自重で地面にめりこんじまう。この星の地表はそんなに硬くねえ。ロボだってお粗末なもんだ、もし腕を高速でふれば関節の金属にひずみがうまれ、もとの位置にはもどせねえ。動きはスローに限る。それでどうやって動きの速い小さな昆蟲どもと戦う?」

「うむむ。じゃあさ、ヒトくらいのサイズならどう?」

「それも現実的じゃねえ。なぜならヒトに隠れてってのができねえからな。ヤツらと戦うのなら、同じサイズか、ちょっと大きいくらいが一番だ。アタシらは宇宙で標準サイズのフソロトゥス星系と同じ、ダイバン星人の規格で作られている。やつらの生物兵器と渡りあうには、アタシらのサイズがちょうどいいってことなのさ」

「ふぅん。その——」

「悪りぃ、ちょっと待って」


 マイたちがここに滞留しているのは、マイに移動手段がないから。ヒト目を憚っての移動手段を持たないから。ようは日が暮れるのを待っている状態。

 それで博多の派遣部隊はわざわざ、詩音の指示を仰ぎにここにやってきては現場へと戻ってゆく。それもこれも通信が不通になってしまったのが原因である。


「んで? なんだった?」


 マイは、自動人形たちがヒトに対して正体を明かせない理由について気にはなりながらも、それよりも緊急度の高い話題を新たに思いついた。

 恨めしそうにポッキーの箱のなかを見やりながら、詩音へ相談を持ちかける。


「あのさ、勢いで描いちゃったんだけど。これって、落ちるよね?」

「ハァ?」


 マイはボディペイントのことを心底後悔している。


「だって、おっぴろげよりはまだいいかと思って! あとで消せると思って! もし落ちなかったらどうしよう……」


 詩音は盛大に巨大な嘆息をしてから。


「バカなことやってらとは思っちゃいたが。消しゴムだと無理だろうな、たぶん中まで浸透してるはず。延びて、黒くなる。有機溶剤なら落ちるだろうが、前のような透き通った肌には戻らんよ」

「そんなぁ〜」

「それに溶剤で落とすんならいろいろ溶けるぞ。最悪乳首は無くなる」

「黒くなる! やだ!」

「ちげえ、無くなるっつったんだ」

「それもイヤ! ん!? このさい逆にアリなのかもしれない?」

「変わったやつだ、フィギュアが恥ずかしがったり乳首の心配をしたり。思考は乙女に近くとも、同時にアタシらは合理性を持たされている。どうもアンタはそうじゃないらしい、合理も不合理も一緒くた、まるで——。いや、まさかな」

「えなあに? なんて言おうとしたの?」


 そこへこれまでとは異なる集団が飛来した。

 明らかに敵意を向けた状態、携えた銃の筒先がマイたちを向いていないだけ。


『邪魔をする』

「なんだアンタら? 物々しいな」

『博多基地所属の、星ノ宮詩音少佐殿と見受ける。此度の助力に関し礼を言おう』

「なんだよ先任、火事場で会ったろ? それより、さっきのあいつらが騒動の元凶か? ダイバン本社はずいぶんと恨まれてるらしいな」

『さにあらず。此度の一件はやつらではない』


 詩音が指したあいつらとは甲蟲のこと。それをボルトロムは否定した。


『あれら超大型昆蟲は会敵のタイミングこそが初上陸を許した瞬間である。一方、本社工場の襲撃は実に8時間も早く行われたのだ』

「なんだって!? それじゃあ!?」

『うむ、襲撃犯は別にいる』


 討伐隊はそれ以上詩音との問答を好まない。自分たちの要求を優先する。


『よって星ノ宮殿、大人しくしてもらいたい』


 銃口が向いた。大人しくとは、逮捕ではなく投降せよという明瞭な圧力。


「ちょと待てちょと待てちょっと待てィェ! さっきから殺気立ってんなとは感じちゃいたが! アタシか!? アタシが何かしたってのか? いい加減にしねえとこっちだって黙っちゃねえぞ!?」

『貴君には関係ない。用があるのは貴君がうしろに隠す、その賊だ』


 詩音は振り向き、マイと視覚センサー同士がぶつかる。


「この子のこと!?」

「んぇ!? わたし!?」

『さあ渡せ。我らに協力せよ』

『ここで渡せぬと言うのであれば、貴君も同罪とみなし排除の対象になる』

『あなたが後ろに隠すその者はアフリカ方面軍司令官クレアマリス、現在は第一級の被疑者に指定されています』

(……またクレアマリスの名前が出た……?)


 超雷神以外の発言からも出たその名前に、詩音は警戒を示す。なぜその名が。なぜこの子が。

 と同時に。

 昨夜は自身のセンサーの誤認ではなかったと。憧れのひと、フィギュア解放の先駆者であると。幾度となく眺めた資料とはまったく、似ても似つかない容姿であるが。

 混乱のなか、平静を装い問う。


「一応聞くぞ、容疑はなんだ」

『本社襲撃の主犯と目されている』

「ッな!?」


 そのような世迷言、たやすく信じるわけには。だが一方で、彼らの分析に一理あると認めざるを得ない。なんの根拠もないと軽々に断ずることはできず。

 思い当たることがないではない。たしかに、あの災禍によって頭部に損傷を負い、記録を失い、過剰とも言える機体性能をもち、炎の中から出てきた。

 なにより。

 あの戦場に、いた。

 詩音に戦慄が走る。

 マイとは、仮初めの存在であった可能性が浮上した。

 騙すための。

 欺くための。

 思考はまとまらず、憲兵団もそのための猶予を与えない。


『わかったらそこを退け』

『煩わせるな』

『それとも、煩わせるつもりが?』


 どうやら自分も一味と認識されていると詩音はさとった。

 彼女は見やる。


「うそだろマイ。アンタが本社を襲撃したなんて」

「え? あ?」


 怯えてみえるマイが突然豹変する可能性もある。

 だが詩音は彼女に対し身構えておらず、マイにそのつもりがあれば容易に八つ裂きにされて頽れるだろう。

 それを承知で、彼女はマイに警戒して腰を引かない。

 疑念を抱かず、真っ向に立ち、返事を待つ。

 マイを信じ、マイをどこか赦し、マイの返答を待つ。


「わたしはそんなこと……」


 その言葉だけで十分だった。ひるがえり、まさに今うしろから八つ裂きにされても後悔はない。自分の視覚センサーが節穴だったというだけのこと。

 ロボトイどもに正対して高々と宣言する。


「やだ!」

『は!?』

『ほう』

「だってこの子はなにもしちゃあいない!」

『したのだよ、実際に。貴君が知らぬだけ』

『あるいは、やはり仲間か?』


 憲兵は接触回線で。


(いかがします? あまりこじれるようですと——)

(見逃がすことには断固反対です。戦闘中に後ろから撃たれるわけにはいかない)

(面倒だ、ヤツもろとも)

(いや、やつは前次大戦で名を上げた暁の明星だぞ。フィギュアの身でありながら武勲機となった実力は確か。倒せたとて、こちらの損害も計り知れん)

(なれどたかがアジア圏のぬるい戦場のエース機、恐るるに足らぬ)


 それら懸念を団長は歯牙にもかけない。電脳に定められた優先順位こそがすべて。よって取りうる行動はひとつしかない。


『我らには自動人形同士の交戦権を認められてはいない。ただし相手に致命的な欠陥行動があると認められる場合はその限りでない。これに従い我ボルトロムの名において全機に発する。かばい立てする僚機もろとも賊を粉砕せよ。損害はどれほど出てもかまわん。たとえ最後の一機になったとしてもここで仕留めろ』

『了解!』

「それはアタシらにも当てはまるってことは覚えていてくれよなぁ……!」

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