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第三次スーパーロボトイ大戦  作者: おれごん未来


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第10話 ヘル・オア・ヘヴン改

 相対し激しく戦うマイに詩音が追いつく。

 突如正体を明かしたマイに詩音は質問が渋滞している。


「どういうことだ? どうしてアンタが“くれあまりす”!? マイ、なんだろ? どうしてコアに収まって?」

「自分でも何がなんだか? マルチプル・ドッキング・システムとかっていうらしいんだけど」

「まじでか。アンタにそんな拡張性が。だがしかし、やれんのか?」

「どうだろう、やってみる!」


 2機同時に突撃を敢行。だが甲蟲は寄せつけない。後ろ翅を爆発で失いはしたが、前翅を器用に姿勢制御のフィンとして使い、不規則な運動を生むことで的を絞らせない。地面にあってもこれほどの手強さ。


「っかー! あの図体であの動き。まるで追いつけねえ」


 以降は距離をとり、隙をうかがいつつ射撃中心で攻撃を継続する。


「関節に撃ち込めれば……!」


 マイのこの、自動人形とは思えない自然さ。物の知らなさ。


「何か武器はないの、内臓武器」

『前腕を飛ばす技がありますが、破壊されますと無くなります』

「だめじゃん。何かないの、わたしの方にも何か」


 まるで本物のヒトのよう。本当の温かさ。武器を持たせたらいつでも撃てるという、自動人形の本質的な冷徹がないのだ。それなのに今は戦えるという。


「そういやさっきから誰と相談してたんだ? ひとりごとか?」

「なんだろ? 内なる声? なんだか頭の中で別の子の声がするの」

「デュアルコアAIィ!?!?」


 詩音は大声にて驚嘆した。なぜなら身体の容積に対する格納場所が存在しえないのだから。

 

「ずいぶんと高価なモン載っけてんじゃねえか。いやしかし? こんな小せぇ身体のどこに2個もメインコアが入る? 大型ロボトイや合体メカならともかく、そのサイズで?」

「え、そんなジロジロ見ないで。近くだといろいろ見えちゃって恥ずかしいから」

「しかも一部電脳が物理損傷してんだろうに再起動できた、どちらも正常作動すらしてみせた、だと?」

「いいから詩音ちゃん、戦って!」


 ダイバン工場周辺には栄や梅田から駆けつけた兵が点在している。ヒトの活動が収まる時間にならねば組織立った移動ができないためだ。

 そのため待機する場所から戦いが見えた、あるいは振動を検知した、または救援を要請された部隊の流入がある。

 マイの戦いにも援護する者が現れた。


『星ノ宮少佐、こちらでしたか』

「いいところに来た!」

『頭を潰しても絶命しない甲蟲とは珍しい』


 駆けつけた応援は博多の部下たちの一部11機。


「そうだったな、アンタらがきてくれたのは心強い。じゃあ頼む、マイを援護してやってくれ。アタシはその間に超雷神と攻略法を」

『了解!』

『承知しました!』

「もちろん倒してくれていいからな!」

『了解です、少佐のぶんは残しません!』

「ああ、死ぬなよ——」


 もう二度と直すことはできないのだから、そう付け加えたい詩音であったが。不粋と感じやめた。

 味方の流入で敵の数は減り、指揮は上がっている。結果が伴うかはやらせてみなければ。だが感触として、彼らのもつ、現有兵器での撃破は困難と彼女自身も予測している。


「まさかAPFSDS弾が足りんとは。ったく、どうしてあそこまで硬く進化しちゃったかね!」


 博多の機動部隊に弾かれるかたちで、今度はマイが一時戦線離脱を。

 連携がとれず、同士討ちの危険があることからそのように提案され、飲んだ。


『では私が代わりに』

『頼む超雷神』


 実のところはマイの存在が疎ましく、邪魔になると判断してのこと。敵を討ち倒すのはいつでも自分たちロボトイでなければならない。彼らにとって詩音以外のフィギュアは見下す対象であり続ける。


「悪りぃなマイ、ウチの部下の教育が足りなくて」

「いいよ、気にしてない。それより、閃いたんだ必殺技」

「どんな」

「どんなって、難しいね説明が。とにかく接近できれば活路はある」

「ふぅん、言うじゃねえか。じゃあ隙さえあればどうにかなんのか」

「うん。でもうんと近寄んないと」

「? それってどれくらい?」

「キスできるくらい、かな」


 とんでもない方向からボールが飛んできて詩音の目がとび出た。表情は不変も、そう受けとれる所作だった。


「えっとね、説明すると隙と好きを逆にした——」

「ははッ! 言うじゃねえか! じゃあアタシが隙をつくる、あとは任せたぜ」


 詩音が戦場で舞う、部下とともに。

 超雷神が詩音に問う。


『星ノ宮殿? どうされるので?』

『なあに、こんだけ背負ってきてたってどうせ効きゃあしねえんだ。威力はぜんぶ合わせたってイレイザーカプセルよかずいぶん下。だったらぜんぶ一気にぶっ放すだけさ。マイがその隙になんとかしてくれる、はずだ。そう言ってる』

『しかし? クレアマリス殿は隊長からウルトラマシンを引き継いだのみで? スーパーツールも何も持たない状態ですが?』

『でもやるって言ったんだ、あの子が。だったらそれを信じてやるだけさ。やらせてダメならまた考えりゃあいい』


 マイもふたたび戦闘に混ざる。その間に味方は4機も落とされた。まごう事なき強敵にマイは気後れを。


「強い……! まさかこれほどまでとは」


 多対一、有利な状況ではあるが、攻撃が効かない側と、当たりさえすれば一撃の側。この中からまた1機でも欠けるようなことがあるなら、天秤は一気に傾くのは必定。


「飛ばさないいい〜、ブレイク・マグナム!」

「ただのパンチじゃねえか!」

「避けられた!? 心意気よ、心意気! だって替えが効かないんだよ? いま右手を飛ばしたら戻って来なさそうなんだもん、温存くらいするよ」


 そう軽口を叩いてはみたものの。


(あれでもまだ遠い、もっと近づかなければならないなんて……)

「どうすっか、ジリ貧だぞ」


 マイは、短い沈黙ののち決断した。


「そうだね、勝てると、当たると分かってないからって、やらない理由にはならないか! じゃあ詩音ちゃん、隙を作るやつ、お願い!」

「おおさ!」


 一か八かの一斉射撃である。

 持ちうる近接武器以外のすべてを放出して、敵の足どめと目くらましにかかる。その結果を見定めずにマイが必殺技の準備へと移行。


「もうひとりのわたしも、お願い!」

『承知しました。臨界まで110秒』

「見さらせ! これがライオタイガーに着想を得た、ヘル・オア・ヘヴン・改!」

「なんだありゃ!? マイの右手が輝いて!?」


 外骨格腕を体の正面で結んでの突撃、それはまさに元祖ヘルオアヘヴンと同じ体勢。その内側でマイの右前腕が密かに、淡く光る。

 一度受けた甲蟲は察知して退がるも、マイは増速して追いすがる。


「はああああああああああああああ!!!!!!」

「さっき通用しなかったんだが、他に選べはしねえか。行け! つっこめ!」


 不規則に後退しながら振り回すツノ無しの攻撃はまるで6脚の鞭。ライオタイガーの腕部で受け、すねで受け。各部を失いながらもマイは突撃をゆるめない。

 次に肉薄をするのなら四肢のいずれか、あるいは機能停止を覚悟して前に出なければならない。だからこれは勝機に賭ける一撃。

 そう、電脳で計算してはいるのだ。


「そんなァ! みんなが!」

『止まるな!』

『我らのことはいい、征け!』


 ツノ無しの苦しまぎれの一撃は、マイのみぞおちを捉えた刺突。


「……ごめん!」

『いいんだ、勝て!』


 半転して背面で受けた。

 その衝撃を斜めに受けたことから自然に体は半転し、正面を向く。

 相手のふところまで飛びこめた。


「だがどうする!? 武装がないぞ、マイッ!?」


 左腕を失ったライオタイガーの外骨格腕はもうヘルオアヘヴンを放てない、万事休す。


「はああァァァァァァァァッッッッ!!!!」


 轟いたのは盛大なソニックブーム。何かが音速を超えた。


『!?』

「なんだ!? どうなった!?」


 ツノ無しと、マイの動きが止まり。

 ほとんど組み合ったような態勢で地面へと落下した。

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