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神々はいっぱいいっぱい

宿屋の部屋は狭かった。

畳に寝転がると、天井の隙間から夜風が差し込んだ。

当然ながらユキは別の部屋にいる。

桑野はベッドで寝転び目を閉じていた。

ゆうたのことが頭を離れない。

あの巨体が空を舞った瞬間、彼の顔に浮かんでいた表情。

あれが本当に「改心」の瞬間だったのか。

話せば伝わったのか。

結局、誰も答えてくれない問いが枯れずに残る。


そのとき、頭の中に声が割り込んだ。

よく知った軽いノリの軽い声。

「お〜い、桑野ちゃ〜ん。寝てるのか〜?」

盗撮の神の声は、無遠慮に耳の奥で跳ねる。


「……お前はマー…!」

思わず僕は本当の名前(真名)を口走ってしまいそうになる。

「まずっ…!」

そう呟いたときには時すでに遅しだった。


炸裂する閃光。

部屋の中で爆発が起きた。

宿屋の壁が震え、窓から火花が舞い込む。

パリィイイン!

景気よく吹き飛ぶ窓ガラス。


「…次やったら殺しますよ」

冷たい声がその爆風と放熱を引き裂いた。

――ナ・ロウの声だ。

短いが、確実に「やる」とわかる鋭い脅しだ。


「…っ…!」

どうやら爆風に巻き込まれて背中を少し擦りむいたらしい。


無意識に背中をさする動作の最中にナ・ロウはどこかに消えていった。


「とりあえず初勝利おめでたさん。」

Mは引き続き陽気な声で言った。


「…あの、この爆発についてコメントは…?」

怒りを抑えながら言った。

「彼の言うところの「罰」ってところじゃないの?」

呆れて言葉が出ない、

とはまさにこういうことだ。


しばらくして落ち着きを取り戻した桑野は話を再開した。


「…で、初勝利って言ってたけどどういうことなんですか?」

思ったことを口にする。

「君、結構やるじゃん。村のヒーローって感じ〜?」

姿は見えないがたぶんコミカルな身振り手振りをしてるんだろうなと直感的に思う。

「勝ったのは鈴木だろ。俺は試合として技を決めただけだ。」

言葉は冷たくなった。自分の胸がざらつく。


「ま、細かいことはきにすんなよ。

君のおかげで僕にもポイント入るんだよ。アシストキルみたいなやつだな。」

Mは嬉しそうに言った。

「は…はぁ…。ということは神格も上がったんですか…?」

困惑しつつ言った

「まあ、そうだけど今回ばかりは神様的にあまり素直には喜べないよね…。」

意外だった。

鈴木がいうように神様は皆神格のことしか考えてないと思っていた。

「…なんか意外。」

「失礼だな、君。」

「優しい神様なんですね。」

「そうよ、僕はすごく優しい正義の神様なんだよ。

 だからね、罪と向き合う覚悟ができた子が死ぬのは忍びなくてね…。」

「…。」

ツッコミ程度のことしか考えてなかった僕は何もいえなかった。


「…どうしてあなたたちは転生者にこんなことをさせるんですか…?」

僕は気になっていたことをまっすぐにぶつける。

「…すまない。今は話せないんだ。

 でもいつか話せる日が来たら話すよ。」

「…はい。」

気まずい沈黙が続く。


「ハイハイ!湿っぽいの終わり!

 ところで君戦闘で能力使ってなかったけどなんでかな?」

急に明るくなるM。

「あんなもん戦闘でつかえるわけないでしょ!?」

僕もバカバカしくなり、あっけらかんと答える。

「桑野ちゃん。」

「なんですか?」

びっくりするほど低く優しい声になる。

「転生者同士の戦闘では何が大切だと思う?」

能力の強さ(パワー)とか…?それと格闘能力(フィジカル)の高さとか…。」

「半分正解だね。ただもう半分は不正解。

能力の強さ(パワー)格闘能力(フィジカル)も大切だけど、まだ正解じゃない。

正解は、普通と違う柔軟な思考をする力、だ。」

「柔軟な思考…?」

桑野は素っ頓狂な声を上げた。


「とにかく、能力を額面通り受け取るようなお利口さんなままじゃ駄目だ。

せっかくの能力なんだしちょいワルになってやろうよ。」

「ちょいワル…。」

ついにこの能力の使い方がわかるのかと思ったが、

話が変な方向に転がりつつあった。


「そう。ちょいワル。

例えば温度の神がいたとしたらその能力は相当強いと思うよ。

ただお利口さんで考えるとお湯を沸かしたり…くらいに思うよね?」

「…まあ…。」

「温度自体を操れるんだ、そこら辺の小石をドロドロになるまで熱してマグマ攻撃に使ったり、

大気を凍らせて呼吸を出来なくさせたりね。」

「…なるほど。」

自身では思いつかなったような活用方法が出てきて桑野は素直に感心する。


「というわけで超視力サプライズ・マレスターにはどういう使い道があると思うかな?」

「うーん…。」

桑野は頭をひねる

「…うーん…。」

「…思いつかないの?」

「思いつかないの。」

思ったとおりに答えた。


「…グダグダ考えても仕方ないな。

せっかくだしユキちゃんのところ覗きに行こうぜ。」

「…何を言ってるんだ駄目神!行くわけないだろ!?」

桑野は反射的に言う。

「…でもこれは修行の一環だぞ?」

「どんな修行だ!?」

「ちょうど今着替えてるだろうなぁ〜…」

「…。」


結局桑野は嫌々ながらもちょいワル修行に付き合うことになった。

あくまで嫌々なんですよ…?


「じゃあノゾキついでに能力の使い方を考えてみようよ。」

「ノゾキついでなのかよ。」


桑野は扉の前にいた。

「よし、ついたな。じゃあ桑野ちゃんは何が見たい?」

「…ユキじゃないんですか?」

「そう。それも正解だ。」

「はあ…。」

「ただそれだけじゃあまだまだ能力の正しい使い方とは言えないな。」

「じゃあ…」

「…キミは本当は何が見たい?」

「…。」

「質問を変えよう。キミはユキちゃんの裸をみたくないのかい?」

「そそそ…そんなことは…。」

「正直ユキちゃんを視姦してシコシコやりたいんだろ?」

「そんなことは言ってねぇよ!」

「じゃあどうしてキミはノゾキをしようと思った?」

「…異世界モノにありがちなライトなラッキースケベを期待してました…。」

「…逆に気持ち悪いなキミは。清純派AV女優を本当に清純だとおもってるクチだろ?」

「うるさいなぁ!」


「とりあえず、桑野ちゃんの理想の異世界エロイベントを想像してみるといい。」

「…はい…。」

「それはどこまで見えた?」

「胸が見えて…。」

「いきなり本命いくのね…。」

「うるさいよ!」

「じゃあ胸が見たいと念じながら能力を使ってみるといい。」


「…超視力サプライズ・マレスターッ!」


眼前には素晴らしい風景が広がっていた。

これはとても言葉に書き表せられない感動があった。


「…素晴らしい…!」

「…桑野くんもいけるクチだねぇ。」


「…イヤっ!なにっ!?」

ユキがこっちに気づいたらしく目が合う。

「あの…その…」

そして得意げなMの声が響く。

「そして完全視力サプライズ・マレスター第二の能力の発動だ。

「然るべき罰を受ける」。

当然神格が上がった分ユキちゃんの攻撃力も上がるよ。」


「…何が第二の能力だ!!ヤバいじゃん…!」

ユキが迫る。


ベチィイイン!!


ゆうたの張り手なんか目じゃないレベルの激痛が顔に走る。

ドゴオオオン!

桑野の頭が宙をまい、それに身体が引っ張られる。

土煙をあげて壁に頭から刺さる。


「…痛…ってぇ…。」

「ありゃりゃ、神格アップするとこんなに強くなるのね。」

「…しばらくそこで反省しててください!」


「…とまあこういう感じだね。」

「…助けて…。」

申し訳なさと顔の痛みで泣きそうだった。

「これで何かわかったんじゃないかな?」

「何かって?」

桑野は壁から頭を引き抜く。

「なんで異世界人のユキちゃんがあんな力を出せたのか、とかさ。

この世界の住民は転生者と比べてかなり弱いはずなのよ。

それなのにキミを吹き飛ばしてあまつさえ壁に突き刺すほどのパワーだ。」

「…そうか…!これはノゾキを成功させる能力じゃなくてノゾキの対象をパワーアップさせる能力なんだ…!」

「まだ秘密はたくさんあるけど後は桑野ちゃんが自分で探してみてね。

僕は神様の仕事だけでいっぱいいっぱいだからさ。」


こうして桑野は能力、完全視力サプライズ・マレスターについて知ることができたのだった。

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