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報恩感謝の投げキッスを100万回した令嬢は婚約破棄を乗り越える

作者: 山田 勝

「フロレーゼ、婚約破棄をする!」

「え、そんな。何故!」


「お前はつまらない女だ。それよりも平民のマリアはいつも笑顔が絶えない」


「その隣にいる街娘がマリアですか?」

「ごめんなさい。フロレーゼ様、これから私は侯爵令息の婚約者よ。様はつけてね」



 ・・・そんな。唐突に婚約破棄をされましたわ。これで私は傷物令嬢。

 ダーウィン様とは政略結婚。だけど、ここ10年の努力が無になった気持になる。


 平民の方がいいの?私は10年以上令嬢教育を受けて来たのに。


 部屋に籠もって泣いて暮らしたわ。


 お父様とお母様が慰めてくれるわ。


「フロレーゼ、すまない。相手は格上の侯爵家だ」

「・・・次の方を探すわ」


 しかし、来た釣書は高齢の男性ばかりだわ。

 どうしたら、良いのかしら。


「グスン、グスン」

「お嬢様、気晴らしに街でも出ては如何でしょうか?」

「ええ、そうするわ」



 街に出る。伴はメイドのケリーと従者は・・・いない。


「デービットは?」

「それが・・・」


 そうね。ケリーとデービットは婚約を結んでいる。気を使っているのね。それも、何か気に触るわ。


「お嬢様!」

「ついてこないで!」


 と独りで街をまわろうとしたのが、仇になったわ。

 路地で迷い。ゴロツキ風体の方々に囲まれたわ。


「ヒヒヒヒヒヒヒィ、おねーちゃん。ここでは見ない顔だな」

「ゲへへへ、その上等な平民服は貴族のお忍びってところだな」

「道に迷ったな。俺たちが案内してやるぜ!」


「大丈夫ですわ!強い護衛がおりますの!」


「あれれ~、おかしいな。ここら辺は酒場のお姉さんぐらいしかいねーな」


「嘘はいけないぜ!」


「ヒィ、お止め下さい。許して~」




 ・・・・・・




「さあ、ここまで来れば安心だ」

「今、お屋敷に使いを出したぜ」


 え、乱暴されない。市場に案内されたわ。


「俺は機織り職人のトム」

「古本の行商をしているサム」

「魚売りのハンスだい!」


 案内された場所は、市場の一角の占い師のスペースらしい。

 そこに女の子がいた。歳は12歳と言う。幼いが平民の子だ。髪はストロベリーピンクといよりもピンク、目がチカチカする。ダーウィン様のお相手のマリアを思い出す。


「サリーなのだからねっ!」


「フロレーゼです。あの、皆様、有難うございます・・」


「良いってことよ。それよりも、サリーの占いやってみないか?よく外すよ。閑古鳥が鳴いているから、やってくれたら助かる。異世界占いだ」


「まあ、そうでしたの?異世界・・・勇者の国かしら」


「大銅貨一枚だからねっ!」


 人払いをされて人生相談のように、何故か。婚約破棄をされた事を話したわ。



「私・・・どうしたらよいのでしょうか?」

「フン!まずは観察だからねっ!」


「観察?」


 話を聞くと、女心は男が望んだものらしい。


「異世界の話だからねっ!谷崎潤一郎の話だからねっ」


 何でも3度目の文豪の奥様になった方は、夫に怒ったことがあったそうだ。

 その時、旦那様の顔は輝いた。見逃さなかった細君は、以後、旦那様に対してまるで女主人のように振る舞い。旦那様も手紙に貴女の下僕と書くなど、それに答え。夫婦関係は良好であった。夫婦の年齢差20歳。


「・・・て、ヒィ」


「スパダリは8歳差までだからねっ!それ以上はゆがみが必要だからねっ!」


「は、はい」


「お嬢様!」

「ケリー、ごめんなさい!」


 家の者が迎えに来てから帰り。以後、お父様を観察することにした。


 ジィと物陰から見つめても、執務をされているお父様の心が分からない。


「フロレーゼ・・・」

「な、何でもありませんわ」


 ある日、休日の前に、お食事の時、お父様は、ナイフとフォークを置き方が若干ちがったわ。

 すると、お母様は顔を赤らめたわ。


 これは何かあると思ったら、就寝が早かった。

 お母様付のメイドが、夫婦共同の寝室を掃除していた。


 これは・・・


「お嬢様・・・お部屋へ」

「分かりましたわ」


 今日は夫婦生活の日ね・・・・・


 そうか、観察が大事だわ。



 また、市場に行って、サリー様に相談したわ。


「サリー様、次は何をすればいいですか?」

「投げキッスだからね!」

「投げキッス?」


「投げキッスを100万回したら、また、来るのだからね」

「はい・・」

「男も女に対しても、猫ちゃんもワンちゃんにも全てのものに感謝の気持を持ってするのだからねっ!」


 鏡の前で100万回投げキッスをした。


「姉上・・・がおかしくなった」

「フロレーゼ!」


「私が決めたことですわ!」


 と半年かかったわ。



「師匠、やりましたわ。やり遂げましたわ」


「次は動作をしないで投げキッスだからね。心を無にするからね。フラワおばさんの喫茶店でウェイトレスするのだからね。そこで感謝の投げキッスをお客様に心の中でするのだからねっ!」


「はい!」


 喫茶店を紹介してもらって賃仕事をした。お客様に、心の中で投げキッスするようにした。

 感謝の投げキッスだ。


「有難うございました」

「・・・・・・」


 顔は淑女教育の無表情の顔だが、マダムから、


「愛想が良い子だね。うちの息子の嫁にどうだい」


 と誘いをうけるようになった。


 すると、リピーターの客が増えたわ。

 女主人のフラワおば様からも褒めて頂いたわ。


「あんた、やるね。うちに就職しない?」

「ええ、本当に嫁ぎ先がなければ、お願いしますわ」


 楽しい毎日だわ。

 しかし、ある男性が毎日来るのが目立つ。


 メニューはパンに惣菜を挟むものがある。独身男性に好まれる。


「お嬢さん。紅茶とヤキソーバパンを一つ・・」

「はい、畏まりました」


「あの、お嬢さん。その、今日は天気が良いですね」


 話しかけられたわ。観察よ。服の生地は良い物、無表情な顔に筋肉質な体が服の上からも分かる。これは間違いなく上級騎士様だわ。


 こういった場合、サリー流恋愛術だと・・・


「まあ、殿方は天気の話題しか出来ないのかしら。フン!」


 と拒絶をしたわ。


「まあ、フロレーゼ、お客様になんて失礼なことを・・・お客様、フロレーゼを口説く方が多いので男よけに口調が素っ気なくなっています。ご勘弁を」


「マダム、失礼をする」


 スゴスゴと退散したが、毎日来るようになって。



 そして、家に釣書が来た。


「フロレーゼ!王弟殿下から釣書だ」

「若き王弟で、自らは前線で騎士として出ていたから、婚約者はいない」


 あの男性だ。


「まあ、何歳ですの?」

「24歳であらせられる」


 私は16歳、スパダリ8歳説を思い出した。


「まあ、お父様、是非、前向きに検討をお願いしますわ」

「わ、分かった!」



 王弟殿下は、クローリ様、今、私は王宮にすまい。王族の教育を受けているところだわ。


 私の令嬢教育で培った無表情と、時折見せるその秘めたる感情、クリーリ様の騎士としての名声で外務卿夫妻としての期待を持たれているわ。


 あら、王宮で怒号が聞こえるわ。あれは・・・


「マリア、公爵夫人の前で不機嫌な顔をださないでくれよ」

「だって、私を笑うのよ。ダーウィンも何で注意しないよ!」

「馬鹿、公爵夫人だぞ」



 あら、やっぱり、ダーウィン様とマリア・・・・の口げんかが聞こえてくるわ。



 お二人は真実の愛を全うして、王宮の執事とメイドして働いている。

 この喧嘩は、本当に仲の悪い喧嘩だわ。

 あまり、仲が宜しくないようだ。


 サリー様、私は青空を見上げると、ピンクの髪のサリー様が大空いっぱいに広がる。


 空に感謝の投げキッスをする毎日だわ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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サリー、人生の師。心の中で投げキッスは実行したい教えですね!
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