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逆境に励む者

「レイサ先輩ッッッ!」


 メノンちゃんがレイサから黒装束を引き剥がすためにM29を発砲する。

 それでもと突っ込んでくる黒装束を前に出て食い止める。


「邪魔なんだよテメェ!順番に殺してやるから待ってろゴミ!!」

「メノンちゃんはレイサを守ってあげて!」


 後ろの男が動かなかったのはこのため!

 レイサの能力にすぐに気づいて対応するため気を伺っていた。

 なにもしなかったのは敢えて、悟らせないためだ!


 くそっ!得体がしれない奴から潰すべきだった!

 脅威を理解していたのに、軽んじてしまった私のミスだ...


 保管庫を展開、酸化鉄粉とアルミ粉末、そして起爆剤のマグネシウムを取り出す。アルミと酸化鉄の酸化還元反応で爆発を起こすテルミット爆弾だ。

 私は爆弾が好きだ、だって爆発はいつだって未来への道をぶち開けてくれるからっ!

 投擲、着火!!!


「ぶっ飛べっ!!!」

「ッッッ!テェェン!」


 突如出現した壁に私のテルミット爆弾は防がれた。

 後ろの男の魔法は壁を作る魔法のようだ。


 っ!チャクラム!指が落ちるところだった、ギリギリ聴覚で対応できたが厄介。双節棍を失った黒装束は近づくと危険と判断したのか私に鉄球とチャクラムで攻撃を始めた。


 向かってくる鉄球の摩擦を減らし腕の上を滑らせ逸らす。 

 ...いつの間にかお腹にチャクラムが被弾していた、かなり深く斬られている。やっぱり速い。


 衝撃波で撃ち出すことで、それらは猛スピードで飛んでくる。

 そしてテンとかいう白装束が作る段差と壁のせいで足場も視界も悪い。

 さらには跳弾まで飛んで来る始末。全てを弾くことは不可能、致命傷以外は許容する。


 遠距離から削り合いはこっちが圧倒的に不利、道は一つしかない。

 ワイヤー展開、接近戦行くよ!鉄球をレミントンで防ぎながら距離を詰める。


「ガキのくせに生意気な目ぇしてるな、ガキらしく椅子に座って無意味なお勉強してろよ」

「へっ、幼卒ですか?道理で、配慮できずにごめんなさい」

「この野郎!!!」



 学歴煽りが効いたのか接近戦を挑んで来る、そう、これを待っていた!

 伸ばしたメジャーを巻き戻すように、展開したワイヤーを端から保管庫に収納していく。『摩擦』を付与したワイヤーが豆腐に箸を入れるように両の足を切断した。

 レミントンを構える、トドメの一撃を!


「『天井天下』」


 突如天井が近づいてくる。

 避けきれないっ、左足と左腕で他を庇え、傷は後で治してもらえる!

 テルミットを天井に投げ瓦礫を砕...かない。


「ここにあれ、光の盾」


 メノンちゃんの腕時計から盾が発射されて瓦礫を逸らした、その隙にダッシュ、照準を合わせる。買ってよかった腕時計、56万した甲斐があった。

 瓦礫が作った砂煙に紛れて撃つ、白装束に血のワインをこぼしてやった。


「はっ、クソガキが、しょうもない偽善に酔いながら死に晒せや雑魚っ!」


 黒装束!まだ生きていた!

放たれた鉄球をショットガンのストックで...違う!

 見た目が違う!ワイヤーを取り出して鉄球を絡めとる。

 案の定爆発、私が避けずに妥協していたことに気づいたらしい。

 このまま榴弾を打たれるとまずい。


「こうなったら必殺!」


 私は保管庫から砂を取り出す、固有魔法は例外はあるが基本的に自身と触れているものにしか発動できない。

 だが穴の空いたバケツに水を入れてもすぐには無くならないように、物体に魔力を込めれば少しの間は手から離れていても能力を付与できる。

 まぁ、ときたま消えない魔力を持つ人もいるが。


 私の必殺技は砂に最大限摩擦を込めて相手の体を抉り取る『摩沙抓』

 地味だけど範囲と威力に優れた優秀な技、まともに喰らえば原型も残らない。


 ...すでに切り傷と打撃で体は限界、魔力もこれ以上使ったら意識がもたない。レイサも首の骨は折れているけどまだ生きている、それでもいち早く応急処置をしないと危険な状態だ。


 早くこいつらを仕留めないとまずい、出し惜しみも油断も消し去る。

 砂の攻撃は魔力の性質上短射程になる、だから私の初見殺しの能力で近づいて確実に殺す。そう、私はキュートなキャット。

 ______quantity of heat_____

 私自身が熱であり、炎。限界のない熱意を持つ夢見る赤い猫。


 さぁ!全部出し切れ、残りのテルミット爆弾をぶん投げて点火。

 激しい光と炎が巻き起こり、私はその中に飛び込む。


「なんだぁこの火は、死ぬ前に一服しようってかっ!」


 前方に形成された壁に隠れながらバカが悪態をついていた、こんなやつに渡す慈悲や容赦はこの世界のどこを探そうとない。私は砂を投げる。

 摩擦力を増した砂は1700°に達する、赤に輝く砂塵は、駄肉を抉り溶かしこの世界から抹消した。


キュートなキャットを解除して炎の中から這い出る、もう立ち上がる力もない。


(けれど...まだ......まだ終わってない、まだ一人いる...二人を守....らなくちゃ)


 だが体を動かそうとしても動かない。

 私がもたもたしている間に、後ろの男とメノンちゃんが撃ち合いを始めた。そうなると当然手負いの私が狙われる。

 だが目の前に現れた光の壁に銃弾は止められる。

 その隙に私はメノンちゃんに引きづられて後ろに下げられた。


「見事だぁ。この何も無い世界で君は確かに在ったと記憶してあげるよ。まぁ、あと数時間でこの星は消えちゃうけどね」


 フードを下ろし水色頭を見せた男が気味の悪い薄ら笑いをして、感に触る高い声で何か言い始めた。


 メノンちゃんがレイサと私に体力と魔力を共有しながら叫ぶ。


「あなた方の目的は何なのですかっ!」

「僕らは何も知らない哀れで愚かな君たちを助けるために無償で働いてあげているんだよ、ボランティアってやつさぁ。まぁ、子供にこんなことを言っても仕方ないかぁ」

「っ!ここにあれ、光の盾!」


 再び天井が落ちてくる、メノンちゃんは光の盾を出して私ごと引っ張る。

 だが盾は崩壊、既の所で回避するが衝撃をそのまま受けてしまった。

 メノンちゃんは悲鳴を無理矢理飲み込んで私を後ろに放り投げる。そして『共有』を使用、直様私は『摩擦』をメノンちゃんに渡した。


「私は先輩方のように戦闘が得意ではありませんが、この頭脳がありますので、舐めないでくださいね」

「いびっ!かわいいねぇ、けれど調子に乗らないことを勧めるよ」


 二人の戦闘は私を置いて激化する。

 私も立ちあがろうとするが宙に浮くような感覚と共に転倒してしまった。

 メノンちゃんは私達を守るために、全力で戦っている。

 なのに役立たずの私の体は言うことを聞いてくれない。

 血も魔力もすっからかんだ、それでも、戦え!クソ猫が...こんな手の届く範囲にいる、大切な人も救えないで私は...っ!!!


(動かないでトコちゃん、とっくに限界超えてるでしょ)


 不意にレイサからテレパシが来る、よかった、意識が戻ったみたいだ。


(レイサは何もしないで...っ!その状態で動いたら本当に死んじゃう!)

(トコちゃんも限界でしょ。今度は私が気張る番だよ、このまま全滅なんてまじ萎えでしょ。それは面白くない、二人は生きなきゃいけない)

(だったら私が死ぬ!私の炎で頑張って道連れにして…)

(もう!私は怒っちゃったよ、許して欲しいなら生きて帰ってみんなを巻き込んで幸せになってね!)

(どうして...そんなに思ってくれるの...?)

(...ふふ、言わせないでよ恥ずかしい...私の初めての人の癖に)

(...へっ?私何かやらかした!?)

(あっはは⭐︎! じゃあね、悔いも未練ありありだけどとっても楽しかったよ!そ・れ・と、メノンちゃんにみんなのことも頼むよ、ばいばいトコちゃん!...... 私の真友)


 レイサは笑いながら首を押さえて起き上がり、水色頭に飛びかかる。

 止めないと!なのに、なのに、体が動かないっっっ!!!


「紅玉の亡骸を呼び覚ましこの星の核を穿つ、それが僕たちの理解者…人類の救済主、エルがっ...!なんで動けるんだよ、お前えええええ!!!」


 『瞬発』、レイサは男を巻き込んで底の見えない穴に落ちていった。

後悔疑念憤怒臆病

悪辣屈辱恐怖軽蔑

失意喪失決裂残酷...滅亡...ぷちょへんざ?


0i0F0W0f委R0c0_0n?


「.....ごめん、お父さん」


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