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有能な後輩は先輩の立場を脅やかす

 お店の外に出て蒸し立ての紅玉まんじゅうを食べていた二人と合流した。

 この後どこに行こうかと二人に尋ねると、メノンちゃんがオムライスを食べたいらしく、レイサがおすすめの店に案内してくれるらしい。

 誰も通らないような路地に入って、建物から屋上に登ってまた降って...


「迷った!」


 習字の授業で白い服を着てきて、すずりを洗う時にバシャってなって汚れても、悪いのは白い服を着てきた自分だよね。だからレイサが道に迷ったとしても、それはレイサに任せた私が悪いよね!


「なんて言うと思ったかー!!跳べ、レイサァ!」

「アイアイサァー!」


 バレーのアンダーハンドパスの要領でレイサを打ち上げる。

 ! 今の一瞬で靴を脱ぐという配慮まで、流石私の親友だ。


「オッケー!道の写メ撮れたよ!」

「先輩〜!これをどうぞー」


 メノンちゃんが靴を上空に投げる、レイサなシャチホコのように体を曲げて靴を履く。そしてスマホに通知、今の一瞬でこれをやったの!?さながら大道芸人だね。


「ではここからは私が案内します」

「出発進行⭐︎ 行くぞー!」

「せんぱーい、私について来てください」


 メノンちゃんに着いていくと三分ほどで到着、古めかしい雰囲気のカフェだ。

 木の味がする空気、吊るされた観葉植物、大量の古いポスター、そして似つかないエアコン。素晴らしい、お手本のような喫茶店だ。


 レイサとメノンちゃんには先にニ階のテラス席に行ってもらい、私は少しお手洗いに行く。その道中にドンキーコングのアーケードがあったのでついやってしまった、私はこういうのをやらずにはいられないタチだ。


「やっと座れた〜」

「どうトコちゃん、遠回りしてみると案外面白いものを発見出来るんだよ⭐︎」

「これはただの無駄道でしょ」

「そうともいうとも我が友よ」


 くっ、このニコニコ笑顔をサムズアップされると私は弱い、この笑顔は私に効く。とまぁ取り敢えずひと段落したので、私は袋からプレゼントの入った小箱を取り出す。


「注目〜!オムライスよりも私を見て〜メノンちゃん」

「もう食べ終わりましたよ?」


 へ? わお!デミグラスソースがかかっていたオムライスがお皿までピカピカだ!このお店に入ってからまだ十分ちょい、食べるのが早い。


「メノンちゃん、お皿舐めるのはお家だけにしようね」

「家でもしませんよそんな事!一緒に頼んだピザの耳で拭き取りました!」


!!!ピザまで食べてるよこの子!ていうか提供も早いなこの喫茶店。


「ごほん、気を取り直して」

「トコちゃんは一体何を買ったのかな」

「にへへ、多分これが百点満点の答えだよ〜」

「へ〜!なんだ...なんですか?」


 メノンちゃんはリラックスしてくれているのか敬語が消える。

 私達は敬語じゃなくてもいいのに、尊敬していますからと頑なに敬語を外してくれない。まあそれは置いといて、お袋から宝箱の見た目をしたケースを取り出す。


「私の買ったプレゼントは、腕時計だよ」


 紅玉のカバーの中に針と機構を入れたもの、ベルトの部分もネイビーの革製だ。


「時計ですか、今までつけたことはなかったですね、どうしてこれを?」

「そうだよトコちゃん、nowなyoungに腕時計なんて」

「ふっふっふっ、私がただの時計をあげるわけなかろうて、この時計にはいろいろな特殊能力がついているんだよ」

「特殊...能力...」


 メノンちゃんの口が綺麗な三日月になった。三日月超えて二十六夜だね。

 やはり私の直感は当たった。


「この時計には光学迷彩が付いているから、見せたくない時は隠すことができるの。他にも射出発信機、録音、映像投影、1680万色のライト、モバイルバッテリー、そして極め付けは〜」

「極め付けは...?」

「光の盾を作れるのさ」

「トコナ先輩流石です、一生友達でいてください、恋人にしてくれてもいいですよ」


 よし勝った! 人にプレゼントするのは本当に難しい、まあメノンちゃんのための苦労ならいくらでも引き受けるんだけどね。


「流石だねトコちゃん!任せてよかったよ、はいよしよし!」

「サボってただけだよねぇ?」

「のんのんのん、適材適所というやつさシスター、私はメノンちゃんと遊んで、トコちゃんはプレゼントを選ぶ。素晴らしいチームプレイなのさ!」


 確かに、レイサがメノンちゃんと遊んでくれていたから私がプレゼントを選ぶ時間ができた。そこは感謝だね。


「それでねトコちゃん、聞いてほしい事があるんだけど。メノンちゃん、紅玉の亡骸の頂上に行ったことないらしいんだよ」

「ああ〜それは勿体無いね」

「そうなんですか?」

「あそこ...いや実際に見て欲しいなこれは、よし一緒に行こ〜」


 私も二ヶ月に一度は頂上に行く。約440mにもなる紅玉の亡骸の頂上からの景色は絶景でね〜。あそこでまったり銃のお手入れやお昼寝するのが最高なんだよね。有名な告白スポットにもなっているから甘酸っぱい青春を目撃することもあるけど。


 けれど行くのは少し大変、紅玉の亡骸自体の大きさは350mほどでそれより上は大樹だ。だが大樹の部分までいけばエレベーターで上がることができる。

 亡骸部分にはエレベーターをかけることはできないらしく、道の舗装もできないから険しい道をいく必要がある。それに亡骸は入り組んでいるとこもあり、人が寄りつかない場所で残滓が発生していることもある。

 そのため頂上に行こうとする人は限られる。


「私たちなら楽勝だったけどね⭐︎」


 あからいを言う間にエレベーターの近くまでたどり着いた。険しいと言ってもただの高低差や斜面、普段から訓練をしている私たちなら楽勝だった。


「こんな長いエレベーター初めて見ました!学校にあるものと比べ物になりません!」


 メノンちゃんはもう盛り上がっている、でもこのエレベーターの先にはもっとすごい景色が待っているよ。私たちはエレベーターに乗り込…


「...?トコちゃん?」


 思考に割って入ってくるこの匂い。

 ...嬉しくない匂い。この匂いがする時は大抵ロクなことがない。

 これは、血の臭いだ。

「この時計、機能が多いので説明書を読まないとですね」

「メノンちゃん説明書読めるんだ!私は3行以上書いてある文は読めないよ!」

「...先輩、稀代の賢才たる私を頼ってくださいね、友達なんですから」

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