決闘したのか、私以外のやつと
高校生って忙しい
英検2級がんばるぞい、ぞいぞい
5月24日 11:37 (水)
お姉ちゃんのせいで職質されて交流戦開始7分後。
つまり天国地獄大遅刻、冷や汗が止まらない。
目的地についたのでブレーキ、一年生控え室と書かれた扉をノックする。
ノックって何回ぐらいすればいいんだろ?まっ、多ければ多いほどお得だよね!
トントントントントントントントンっ!
「うっさいわアホ!しばくぞ!」
「ごめん、しばかないで〜!」
中から出てきた小さい、僕より小さい女の子に謝罪を入れつつ、ちゃっかり中に入る。
凄く良くないことだけど、僕は少しホッとした。
ここにいるってことはこの子も選手、なら遅刻したのは僕だけじゃない。そして親近感も湧いた、まずは自己紹介。
片足を上げて猫の手にした両手を顔の近くまで持ってくる。
これぞ一撃必殺、メノンちゃん直伝猫のポ〜ズを決める。
「初めまして、1年C組の猫又エマです!にゃんにゃん♪」
「そんなポーズ取っている場合かよ、8分の遅刻だ」
そう言ったその子はベンチに両手を支えにしてよっかかっている。自分の荷物を準備しながら、どうして動かないのか不思議に思ったので聞いてみた。
「お前と一緒に入場するんだよ、お前を身代わりにすれば仲間に怒られなくて済むだろ」
「うわひどい、逃げられると思わないでね!」
腰のホルスターにvectorSMG、左腿のホルスターにさっきお姉ちゃんから貰ったばかりのワルサーP99を仕舞う。
その他一式を感覚を頼りに装備して準備完了!
どうしてわざわざ装備しているかというと、この交流戦では保管庫の仕様が禁止なのだ。昔巡航ミサイルの部品を保管庫で大量に持ち込み、それを組み立てて参加者が全滅したのが原因らしい。
だらだらしてるその子の手を引き、入場ゲートの方に歩く。
フィールドは控え室直通なのですぐそこだ。
そしていざ入場、しようしたら後ろから肩を掴まれた。
「これだけはしっかりな、死んじまうぞ?」
「ありがとう、頑張ろうね」
命を守るための脱出装置、簡単にいえば残機を増やすことができるバンドを装着。
これをつければ本当に準備完了だ。
自分の血で銃が滑らないための掌だけの手袋を下に引っ張る。
「だな、けどなぁエマ」
「まだ忘れ物してたっけ?」
「10分遅刻で失格、残り4秒だ」
「バンジィー!!!」
気分はTORE!の壁の間、ぐるりと回ってフィールドに入る。
環境はコンクリート壁や高台などのある程度の遮蔽が用意されたいつも通りの室内グラウンド。地面は芝生で衝撃の吸収をしてくれる。
そして目の前には丸い銃口が二つ、口を揃えて並ぶ。
「これ知ってる、リスキルだ!」
「よっ身代わり、なんとかしろ」
「うん、終わったらお話ししようか」
別に銃を向けられているこの状況は大丈夫、でもあの子にはお仕置きが必要だ。
銃弾を避ける、こともできなくはないけど加速していないとたまにミスる。弾だけに!!
……ぽっぷ、ぽっぷ、ぽっぷ、小さな血球を泡のように拡散させる。
僕だってこの街に来て1ヶ月ちょいだ、少しは魔法も使えるようになった。
「『翡翠・溺死』」
これが僕の新技だ、キラキラしていてかっこいい。
血球は衝撃を受けると同時に、弾丸ごと紅玉になって地面に落ちる。
銃声が止んだところで僕もvectorSMGを構える。
「お姉ちゃんが言ってました、強い人は全員銃への答えを持っている。そうじゃない人は死んだ。先輩方はどっちですかね、それじゃあ行きますよ!!」
地面に転がった紅玉を蹴り飛ばす。そして爆散、赤いミストで先輩方の視界を奪う。
闇雲に撃ってきたものが当たらないよう地面に伏せ、下は霧の密度が低いので僕からは位置が丸見えだ。さらに伏せているから反動制御も容易い。
vectorで足を撃ち抜き地面に倒したあと、p99で判定をとる。
「よし、早くチームの人たちと合流しないと」
5人×3学年、計15人のバトルロワイヤル。今倒したのは二年生の人だ。
今の先輩たちは結構簡単に倒せたけど、やっぱり基本は数の暴力。
ああいう風に1人で突っ走ってくるのは違うのだ。
「こちらから勝利の匂いがする!」
「硝煙だと思います!」
第一印象はデカい(筋肉)、そしてデカい(声量)、さらにデカい(髪型)
一瞬車が走ってきたかと見間違う迫力があった。
もちろんそんなことはなく、多分人の先輩が一直線に走ってくる。
「では敗北を、この銃口から!」
銃剣のついた木の銃片手に、走りながら撃ってきた。
それなのに一切体幹がブレることもなく弾丸が顔の直近に迫る。
でも木の銃古いからか少ししか撃ってこない。
さっきと同じように防ごうと血球を拡散。
しかし弾丸の勢いを消しきれず、紅玉が勢いそのまま額にヒット。
咄嗟に手で顔を覆うけどこれはミス、相手を見失った。。
状況としては最悪だけど、ミツルさんの訓練のおかげで落ち着きは保てている。
前方を血のビームで薙ぎ払い、ここで空くスペースは左右上の3か所。
そして僕は右に銃を持っている、だから右に運任せの速射だ!
けれどうめき声も目視での確認も先輩を発見できない。
不意打ち警戒のため場所を移動しようとしたとき、すぐ右隣から爆発音がした。
顔を向ければ、グッドサインで笑う先輩が地面に収まっていた。
僕は移動のために右に踏み込んでいたから反応が遅れる。
その隙を逃さず先輩は格闘を打ち込んでくる。
しかしここでチャンス、先輩は最後の締めで柔道をしかけてきた。
柔道はお姉ちゃんがよく僕に使ってくるから対処法は体に刻まれてる。
『相手の関節の摩擦を減らしてさ、柔道でツルっと外してあげるの~』
大外刈りを最小限の動きで空かし、釣腰で地面に叩きつける!
「自分より小さいのに投げられた~!!」
そんなことを言っているが背中に土をつけられたのは僕の方だ。
先輩は左足で踏ん張り、力比べで勝てない僕はもたもたしている間に足を払われて転んだ。おまけに崩れ袈裟固めをかけられて足をバタバタするしかできない。
「あぁあぁ、抜けない~!!」
「病は筋肉から、3年B組、五鱈サフライだ」
「なにその自己紹介~!?」
足を絡めようにもナイフで刺そうにも全然ほどけない。
お姉ちゃんといいこの人といい、筋肉でナイフを止めるの意味がわかんない。
弾丸避けるとか車を持ち上げるとか、筋肉って凄いね!
ゲーム機だったらレバーが捥げるくらい、必死に踠くけどやっぱり抜けない。と思っていたら遠くから銃声が鳴り響く。
「あいたっ!」
「よいしょい!」
拘束が弱まったところを力任せに投げ飛ばす。
ホルスターからP99を取り出し射撃、しかし投げ飛ばされた勢いそのまま転がるサフライ先輩には当たらず遮蔽の裏に隠れた。
しかしもう一つ警戒するのは先輩を撃った狙撃手だ。
幸いにも銃声で位置は分かっている。あの高台だ。
あそこまで接近するには至難の業、なのでここで工夫をひとつまみ!
先輩が隠れている壁に手りゅう弾をぽーい、爆散☆
狙撃音を聞いてから飛び出す、先輩にはおとりになってもらう。
ていうかう〜ん、一つ凄いかなりとても非常に気になることがある。
僕の視力は5だから、50mの距離にあるあの高台にいる人の顔が全然鮮明に見える。凄い見覚えのある顔だ、5分ほど前に見た気がする。
一年生で、目つき悪くて、鋼色の髪で、虹色の目で。
......あれは八重歯だ、笑っている時だけ八重歯が見える。
八重歯=古堂カイリ うわぁああ出たあー!!
「木の銃でできた銃は全部古い!銃は全部30発入る!リボルバーは6発!新しい銃ほど強い!!」
「うわ〜んメノンちゃん、エマの銃教育が難しいよ〜」
「先輩、撃つと肩が外れる銃をメインにしてる私に言わないでくださいね」




