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可愛い私達は旅に出た

ボーリング場を出た私達は外に出るための準備をする、個人ロッカー施設にボーリングシューズとファイアーバーストを片付けて、ショットシェルとスラグ弾、ホローポイント弾に消火剤、消耗品を補充する。

 今日はただボーリングをしに来たわけじゃない、私達の今日一番の目的はメノンちゃんにプレゼントを買うこと、そのために都市の外に行く。外の世界は危険がいっぱいだ、たとえこの平穏な首都の近くであっても。


 この世界に憑く呪い…邪神の残滓。


 どこから現れたのか、何が目的かその全てが一切合切正体不明の存在、獣や虫の形をとることもあれば、人や植物にもなる。分かっているのは生物という生物を襲い捕食することと全ての個体に黒い羽が生えていることだ。

 そんな脅威に対抗するために、そして『あの事件』以降、一般人も免許を取得してを武器を持つことを認められている。


 みんなが武器を所持していて治安は大丈夫なのかって?

 この国の銃の所持率は五割であり一般人は700J以下の銃しか持てないというルールもある。

 それに人間の体は一般人であっても小さい頃から魔力で強化され、強靭になっているため銃弾一つで致命傷にはなることは少ない。つまりお互いが銃を持つ抑止力と脅威度の低下で銃は生活の一部に溶け込んでいる。


「先輩方、そろそろバスの時間です」


 お弁当よし、レーションよし、兵糧よし!

 メノンちゃんに促されロッカールームを出て、私達はバスに乗り目的地に向かう。

 あれこれ言っていたが今日向かう場所は比較的脅威度が低い、今向かっているのはこの国随一の観光地。

 ヴァストスに住む人間なら人生の中で一度は必ず訪れるほど有名な場所であり、その知名度は国外でもとても高い超人気観光地。


「メノンちゃん、これがキツネさんの手の形だよ⭐︎」

「ぎぎぎ...薬指が動きません」

「そしてこれがスベスベケブカガニだ!」

「なんと珍妙な名前の生物ですね」


 レイサがメノンちゃんに影絵を教えて遊んでいる、レイサは影絵が好きなのか私によく見せてくれる。私は影絵をするレイサと不器用なメノンちゃんを眺めて癒されていた。


 そんなこんな二十分、街の中とは違って信号もないからスルスル進む。残滓にも多少の知能があり、人通りの多いところを襲ってもすぐに退治されることを理解している。故にこのあたりで残滓が出現することはとても珍しい。


「と、トコナ先輩は考えていたと賢妻であり賢才の私は予想します!」

「典型的なフラグだね⭐︎」


 あれ、猫は幸運を呼び込む動物だと思っていたのに、赤猫は例外なのかな。

 赤い毛の動物なんて見たことないから多分オンリーニャンの猫なのに。


 呑気に考えている頭を切り替え、窓を開けて少し体を出す。

 恐竜型一枚、でかい石一枚、鳥型二枚、あと小型戦車一枚、護衛に第三騎士さんが三人いるけど荷が重そうだ。


「レイサ...」

「レイサ先輩なら先ほど窓から飛んで行きました」


 六発の銃声、そしてバスに衝撃が走る、鳥型が落ちてきたようだ。私も窓から飛び出す。

 保管庫...自分を異空間と解釈し魔力で拡張して物を収納できるようにする魔法、大きさは個人の魔力の質と量で決まる、私は大体冷蔵庫くらいの大きさだ。魔力が多い人、メノンちゃんとかはコンビニのドリンクケースくらいの大きさがあるらしい。


 私は保管庫から盾を取り出す、私の保管庫が嵩張る原因ナンバーニャン。

 戦車は騎士団の人たちが頑張っているから恐竜に向かう、このトカゲに頂点捕食者たる猫の爪を見せてあげる。

 

 恐竜の口から放たれた火球を盾で上に弾き飛ばす、そして加速!

 盾で牙から身を守って首の下に入り込む。短い前足を健気に動かしているが無駄無駄、おばあちゃん家にある和室の電気の紐を避けるくらい容易い。

 前足を盾で殴り捩じ切る、後足で攻撃してくるのを避けて手に魔力を纏わせる。魔力で爪をイメージ、腹を掻っ捌きそのまま胴体にも引っ掛けて背中に乗る。

 さてと、バスには乗客も大勢乗っている、私の固有魔法を使えば簡単に殺せるけどちょいと刺激が強い、それに服に血をつけたくない。

 だから狙うのは脳、スマートにカッコよく決めてみよう!


 保管庫から愛銃、赤きレミントンショットガンを取り出す、スラグ弾を装填、私を振り落とそうと転がる恐竜に一発、少し大人しくなった。そのまま背中を歩いて頭の上に向かう、振り落とそうと体をぶんぶん降っているがそれは私に通用しない。 

 頭に照準を合わせ返り血が付かないように跳躍、三発を連続して発射、恐竜は大きな音を立てて倒れる、作戦成功!後ろを見てみると、石と戦車と戦っていたレイサと第三騎士さん達も無事みたい。


 バスに戻ると乗客さん達から盛大な拍手と歓声を貰った。

 少し恥ずかしくなりながらも席に戻り、みんなでメノンちゃんが持ってきていたUNOで楽しく遊んだ。へへっ、この+2を連続で出せた時が一番楽しいぜ。

 なに、結果?メノンちゃんに勝てるわけないだろっ!

 私の手札は赤いカードだけ、レイサは青いカードだけになるように仕向けられた上に一人抜けされた。


 そして3人でワイワイしているとバスは無事目的地に着いた、少し乗り物酔いをしたメノンちゃんを支えながらバスから降りる、そして目の前に広がるのは巨大な大樹と勇猛な獣、ここがヴァストスの超有名スポット、紅玉の亡骸だ。

 70年前、ヴァストスの英雄達が力を合わせて倒したとされる獣の死体が長い時間をかけ自然と一体化した。これだけの時間が経っても白骨化せず、当時のままその勇猛さを表している。


「いつ見ても大きいね〜」

「はい、初めて訪れましたが...この大きさ、そして迫力には圧倒されます」


 この大きさと自然と調和した姿だけで観光地になりそうだが、もう一つここを語る上で外せないものがある、それは紅玉、ルビーとも言う。

 原理はよく分からないがここはたくさん紅玉がとれる。この紅玉はヴァストスの特産品であり魔法研究にも用いられヴァストスの命と呼ばれている。


 今日ここにきたのはメノンちゃんに私(推薦)とレイサ(引き抜き)も通うヴァストスアルマ国立総合学院、通称アルマ院への入学祝いとして、紅玉のアクセサリーを買いにきたからだ。


「お金の心配はしなくていいよ、なんせ私の親はお金持ちだからね」

「道徳の授業受けてください、先輩」

「道徳の授業は大喜利大会なんだよメノンちゃん、みんな頭ではわかっているけど面白い回答をしようとしているんだ、特に男子」

「そうなの...っ!?」

「あっ!メノンちゃんの敬語が取れた〜、この敬語は私がもらうでざます、おっほっほ!」

「もう、からかわないでください!」


 レイサとメノンちゃんの漫才が始まった。それは一旦置いといて。

 今日は一緒にきたと言ってもメノンちゃんに選ばせるのも違うと思う訳、なんせプレゼントなのだから、ですので〜メノンさまのために〜私が選びます。


 うーん、プレゼント、例えば私とレイサは髪飾りをつけている。私は花の髪留めを、レイサはなんか星やら丸やらの記号たくさんつけている。だからメノンちゃんに髪飾りを渡すのもいいけどメノンちゃんの髪色は濃い紺色だ、主張の激しい紅玉をつけるのは水と油のコロシアムになる。


 それともう一つメノンちゃんにプレゼントするときに考慮しないといけないことがある、それは『機能性』

 メノンちゃんと一緒に冷蔵庫を買いに行った時、消臭や収納スペース、手入れの良さ、霜つき防止とか機能性ばかり気にしていた。

 だか最後には虹色の照明が決め手となって冷蔵庫を買っていた。

 つまり!メノンちゃんはただの機能性重視勢ではなく、面白便利機能が大好きな子供の感性も持っているのだ。


 故にここで買うアクセサリーは...


「店員さんこれこれこういうのを探していて」

「これは...奥の部屋へどうぞ」

「ふん、貴様は何を望む。金か、力か!!!」

「えっと、友達にプレゼントを渡したくて...」

「あっ、ごめんなさいね学生さん、最近そういう仕事が多くて...」

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