アホとはつまりピンク髪のことをいふ
『銃人十色』十の銃を収納、カスタム、維持、操作、譲渡。
あとはイメージ次第で融通も効く戦闘特化の固有魔法。
『色調補正』は魔法ではなく体質、後天的に身に付いた能力だ。
ともかくこの二つが私の武器、東ヴァストス7位の傭兵が持つ力だ。
「私は今生今一生一番調子がいいです!ドーンとヴァストストップの傭兵である私に任せてください!」
「ならカイリちゃん、一位の傭兵について知ってる?」
一位、一番強い人。ミツルさんは騎士だから傭兵内のランキングは関係ない。
ならトコナ先輩、と思いつくがあの人は傭兵登録をしていない。
故にランキングにはいない。スイミも同様だ。
そして次に思いつくレイサ先輩は5位だ。しかし1位の人物と私に接点はない。だから書類に書かれてるくらいしか情報を持っていない。
「1位の人の名前は橘カオルさん、剣を扱う不思議な人です 」
「私はカオルンって呼んでるの、なんだかオカ…」
「連載中の人を出すのはよくないですよ!!」
これは本当によくない。学生気分でこういうのを使うと学生でもしょっぴ引かれる。
使用自体に問題はなくともリスクは避けるべきだろう。
ここは話をすり替えた方がいい、私はわざとらしい咳払いをする。
「ごほん…」
「ときたら龍角…」
「先輩ー!?」
一度ふざけると辞められない止められない…はっ!?
私は歩くペースを三倍にして目的地に向かう。
このままだと敵にやられる前に社会的機構にやられる。
尊敬する人であっても、時には厳しく接しないといけないのだ。
「雑談は終わりです!女子トイレに着きました」
「じゃあ接近戦つよつよ族の私が前でいいよね!」
「はい、後ろからカバーします」
レイサ先輩からはさっきのおちゃらけた雰囲気が少し消えている。
ここにいるのは本物の『ワールズアコード』構成員。
油断していたら死ぬのは私らだ。最初から本気で行く。
短機関銃PP-91を装備、CQBに適した小型軽量銃。
「うしっ、テンションアゲミザワタカシで行くよー!!」
「了解です」
『共有』で情報交換をして引き戸を引きトイレ内に侵入。
不意打ちで殺されるのが一番しょうもない。角、天井、用具入れ、個室、隠れられそうなところを徹底的に洗い出す。
(こっちはオッケ丸!二重丸!花丸!)
オールクリア、残るはメノンからの情報通りここだけだ。
体制を崩さず扉の前に立ち、共有で作戦を伝える。
(音圧を強めで個室内に脅しを掛けてください)
(音圧…分かったよ!)
私は声を低くしても可愛い可愛い言われるからな、ここは先輩に…
ボゴンッ!!
「あのさ!空気呼んで速く出てきてよ!!」
「!! 先輩、それを音圧じゃなくて語気です!」
「えっ!ごめーん!」
「いえ、ツッコんでる場合じゃなかったですごめんなさい!」
この個室に敵がいる可能性が高いんだ、漫才してる場合じゃない。
室内にフラバン投下。鍵を力づくでこじ開けご開帳。
「あわー!目が見えないです!!何も聞こえないですー!!」
蓋の開いてない便器から落ちそうで落ちないように悶え苦しんでいる派手ピンクのチビ。なんかキュートアグレッションを感じて自分を殴る。何考えてんだ。
ていうか誰だよこいつ、やるにしても便器あげてやれよ。
(どういうことだメノン)
(個室には確かに敵がいました、私も確認しました。ですがこうして入れ替わっている、おそらく敵のなんらかの魔法で入れ替えられた生徒です)
そうか、コイツはアルマ院の生徒だ。制服を着ている。
だがそれも必然か、偶然か、コイツが敵の可能性も拭いきれない!
そう考え銃口を向けていると、レイサさんに手を置かれ銃口を下げられた。
そして派手ピンクの手に触れ便器から立たせる。
「安心して、私は泡沫レイサだよ!あなたの部活の先輩!覚えてる?」
「レ、レイサ先輩ですか? 一体何が起きたんですか?」
「これがうっかり八兵衛、私の手が滑ってここにフラッシュバンを落としちゃったの」
「あはは!こいつはうっかりだ……じゃないですよー!!」
凄まじく和やかな空気だなおい、マジ状況がわけわからん。
この二人適応力が高いから一瞬で馴染んできやがった。
その後の展開に悩んでいるとメノンから通信が飛んできた。
(カイリちゃん、時間が厳しいからその子を監視しつつ動いて欲しい)
(ポイントはどこだ?)
(一年C組の教室、エマのクラスに二人いる)
おいゴラなにしてくれとんねん、エマをぶん殴るのはこの私だ!
銃をしまい、イチャつく二人に大声で声をかける。
「レイサ先輩、派手ピンク!次行きますよ!」
「派手ピンクって私のことですか!?」
「お前以外にピンクキャラ出てきてねぇだろ!!」
モエ「誰か忘れてないかっていっての!」
ピンクにも『共有』接続してもらって事情を説明。
(実行委員長が言ってた悪魔の噂は本当だったんですか!?)
(噂に流されるな情弱派手ピンク)
(初対面ですよね私たちー!)
「通信じゃなくて喋ろうよ〜」
それもそうだ、あまり使いすぎてもメノンの負担になる。
いやならんか、コイツの同時発動数400人とかいうバケモンだからな。
聖徳太子も全裸逆立ち大回転で鎌倉時代に逃げ出すレベルだ。
ごほん、変な妄想してないで派手ピンクに武器を渡してやるか。
雑魚でも扱いやすく強いやつならこれ一択だ。
ピンクの肩をちょいちょいと叩きこちらを向かせ、銃口をこちらして渡す。
「雑魚情弱派手ピンク、これを受け取れ」
「凄いカッコいいハンドガンですね!これを使っていいんですか?」
「MP-443だ。見た目はパンクな雰囲気だが仕組みは昔ながらの信用ある設計で優秀。9x19mmパラベラム弾を使用するから反動も弱い、しっかり当てろよ」
「銃は学校の授業でしか使ったことないんですけど…」
「当てろよな?」
「はい!」
「仲いいね〜!これは一年生の絆だね!」
私は引き続き短機関銃PP-91を使用、接近戦だとコイツほど優秀なのを今は持ち合わせていない。シプカとかPPSもあるが全長、重さ、使用弾、レートを見てもこいつが頭一つ抜ける。
「私もそろそろ使ったほうがいいかな」
そう言うとレイサさんが保管庫を展開してケルテックRFBを取り出す。
昔はセミオートライフルを使っていたがどういう心変わりだろうか。
銃としては最近発売されたばかりの排莢システムが独特な銃だったはず。
新型だがらあまり詳しくはないが、見てみるとポリマー製ボディを採用して軽量化。全長も他の小銃にしてはかなり短くサイトが載っていないことから接近戦用にある程度カスタムしているらしい。
あとフォアグリップを装着していないのか。走りながら撃つ時あれがないと私でもブレブレになって当たらない。それをどうやって解決してるのか気になるところだ。
「順番は長女の私から先頭で次にカイリちゃん、わふちゃんでいいよね?」
「団子三姉妹ですね、了解です」
「あわわ、誤射だけはしないように気をつけます!」
コイツ怖えぇ、うっかり脳とか急所ぶち抜いてきそうだ。
後ろと前、両方を警戒してレイサ先輩のハンドサインを受け取る。
「3・2・1・ゴーシュート!」
「マカロニウェスタン劇場にようこそお客様!!」
「あっ、3人で」
「3名さまご案内ですー!」
しかし3人は忘れていた、この教室も出し物をしていたことを。
それにマカロニウェスタンって渋いなおい、教室の雰囲気が妙に1800年代っぽいのはそのせいか。
「よぉ嬢ちゃんたち、そんななりでやる気があんだな!」
「怪我しないうちにお家に帰りな、ここは男と世界だぜ」
カウボーイハットを深く被る二人のウェスタンに声をかけられた。
咄嗟に私たちは銃を背中に隠し保管庫にしまう。ミイラ取りがミイラ、テロリスト狩りがテロリストに間違われるのもよくない。ここは一旦客として振る舞う。
「あなたたちは何者?」
「俺たちは賞金稼ぎさ、ここには仕事しにきた」
「仕事ってなにをなさっているんですか?」
「もちろんこれだぜ嬢ちゃん、はっはあー!」
SAAをカッコよく魅せる二人のウェスタン。いちいちキザったい。
「しっかしこの荒野を歩くってのに武器の一つも持ってねぇのか」
「これは?」
先輩がケルテックRFBを二人に見せつける。
ウェスタンどもは流石に動揺していたがすぐに持ち直し、再び役にハマる。
「おいおい、こんなのが19世紀にある訳ないだろ」
「西部開拓時代にはSAAしかないんだぜぇ〜」
「たくっ、かわいそうだからこれをくれてやるぜ」
レイサ、カイリ、わふはSAAを手に入れた。
「これで空飛ぶ鳥を撃ち抜いてこい!」
「小さい鳥は1点、大きい鳥は10点です」
「制限時間は2分間、現在の最高得点は157点です!」
…いつになったら『ワールズアコード』に辿り着くんだろな〜
「SAAは男のロマンです!」
「メノンちゃんは女の子でしょ〜」
「ですが使ってみたら分かりました、これは弱いです!」
「こんなリロードが長いくせに六発しか入らない銃なんて誰も使わないよ〜」




