空飛ぶ灼熱のぬこ
タングステン製の直径15cm、長さ50cm折りたたみ式の筒を二本手に取る。
ガンショップの窓を開けて跳躍。キュートなキャット発動、ワルサーp99をそこらの木に一発撃つ。爆発した火薬の温度300°に変化、筒に最大出力で注ぎ込む。
簡易のジェット噴射だ、さらに保管庫から亜酸化窒素のボンベを取り出して筒の中に噴射すれば時速320kmに到達する。
一緒にいたレイサは一旦置いていく。
レイサも高速移動する手段はあるがあれは危険、どうしようもない時にしか使わせたくない。
今回は緊急事態だがレイサという戦力の必要性が薄いから禁止した。
到着までおよそ20秒、状況を整理する。
私はエマにプレゼントする銃を選ぶためガンショップにレイサと訪れていた。
するとレイサの電話が鳴った、掛けて来たのはガクト。
内容は、何者かの襲撃でエマが瀕死の状態になったとのこと。
エマは既にガクト達によって保護されて命に別状は無いとのこと。
今すぐにでも方向を変えてエマに会いたい気持ちを抑え込む。
「私のミッションは襲撃者の正体と目的の特定、そして排除か拘束すること」
もしここで襲撃者を取り逃がしてしまえば交流会の中止は確実、メノンちゃん達が進める計画は失敗してしまう。それだけは止めなくてはならない、姉としてエマの未来のために。
炎を逆噴射してブレーキ。劇場に着地、窓を開け侵入する。
耳と鼻に全神経を回す。
事件現場の衣装室に到着、黄色いテープを跨いで中に入る。
「ん?君は誰だ、立ち入り禁止と書いぐっ!」
「悪いけど事件現場ではお静かに」
「お前止めなさ...はぁぁ」
片方はボンベ缶を口に突っ込んで外に放り投げて、もう片は銃を向けたら自分から出て行ってくれた。切り替え、調査の再開だ。ひとまず音はしない、匂いを確認。
エマ、ガクト、知らない人間が四人、灯油、煤。
出入り口以外の場所から出入りしている人間の匂いがする。
敵が逃げたのは人が入れない程小さな換気用の窓だった。
ワルサーで窓を割り、保管庫からマッチを出して火を窓に投げ入れる。
熱移動、熱は温度の高い方に流れる性質を利用して小窓から外に出る。
キュートなキャット...長い、キャットを解除して匂いを嗅ごうと思った刹那、頭が痛い!
「くっさ!なにこの匂い!」
この刺激臭は自然のものじゃない、ケミカルなやつ、つまり!
「罠っ!!」
「好奇心は猫を殺すっ!!!」
頭上から落ちてくる白髪の女と謎の液体。
毒ガスが流れているから息を止める。そしてキャットの炎を周囲にばら撒けないっ!
この周りは木が多い、燃え移られると対処しきれない!
『摩擦』発動、魔力で腕を限界まで強化。地面をひっぺがして防いだ。
「ぶっ飛んだその膂力、判断力。いずれ人類に害をなすであろう、やはりお前はここで始末する!」
「保管庫、グレネード!」
と一緒に私もダッシュ、愛武器レミントンを今日は持って来ていない。
私のチビ保管庫に普段から銃を入れるスペースはない。それに銃はないなら奪うだけだからそこまで影響もない。
武直前のガンショップで買ってきたワルサーp99を発砲、まずは相手の魔法を看破する。
敵はグレネードを液体で弾き、弾丸をっ!そのまま敵の体に当たった。
いや、わざと防がなかったように見えた。
そして今度は相手のターン、流体が襲ってくる!
手元付近で炎を放出してシールド形成。流体は蒸発する。
今のうちにリロード、残りマガジン2個。
「私はアポ無しの戦いを受け付けるほど暇じゃないんだけど!」
「罪人に自由などあるものか、貴様には死あるのみ!」
敵は自分の体をナイフで切って変な色の体液を地面に垂らす。
すると地面からパックマンみたいなのが生えて来た。スマブラじゃなくてアーケードの方!
「キラーT細胞、ぶち殺せっ!」
細胞は三体、発砲。
弾丸は細胞ほど体を突き抜ける。だが空いた穴はすぐに埋められた。
敵は全員再生、物理ダメージ無効持ちらしい。一撃で仕留めるしかない。
『摩沙抓』、敵は消滅。一定以上肉体を消滅させたら復活できないようだ。
タングステンの筒を保管庫から取り出して加熱。
突っ込んでくる二つの細胞をメッタ殴りにして蒸発させた。
「あなたは私を倒そうと研究してきたんじゃないの?」
「研究して任されたんだ、君を倒すのに最も適しているのは私の魔法『体液』だと」
「任された、やっぱり『ワールズアコード』なんだ」
「その通り!醜い人間を消してこの星を正そうとする神のご意志なのだ」
足の裏で地面の石を加熱する。
発砲、発砲、確実に敵を倒すための準備をする。
「怖気ついたか、ならこの戦いはもう終わりだ」
相手は再び体液を地面に落とし細胞を召喚。
適当に撃ったり筒で殴ったりして対処、触手みたいな攻撃は炎で蒸発させる。
「なぜ私の攻撃が当たらない?それに毒ガスだって撒いているのに」
「シンプルに遅いし弱いよあなた、毒ガスは少しズルして防いでるけど。単純に魔力の出力が低い、本人の戦闘センスが低いから眷属の細胞も弱い。本当にあの『ワールズアコード』なの?前の人は私に擦り傷くらいなら沢山作ったけど?」
「っ!!ならとっておきをくれてあげるわよ!真髄発露『セルリキッド』!」
ドス黒い赤の液体が敵の口から溢れていく。
液体は地面にどんどん広がっていき、眷属の細胞に触れると膨れ上がり内側から爆発した。
何をするか知らないけど、隙だらけなのは直した方がいいと思う。
「大きな口開けて何を期待しているのかな!」
敵の足下に転がる最初に投げたグレネードを撃って起爆させる。
左足がなくなり前のめりになって液体の流出が止まる。
その隙に保管庫から盾を取り出し全力で蹴り飛ばした。
盾は彼女の口にヒット、お口をチャックした。
ここまでやっても敵は別にダメージを受けていない。
種族の性質か魔法かは知らないが、敵は肉体を液体に出来る。
物理攻撃は全て無意味になる。
だからこれだ、1000°の鉄球ならぬ1000°の石!
『摩擦』、石に掛かる摩擦を減らしボーリングのように転がす。
うーーストライク!!!足を弾き飛ばした所で再び『摩擦』、支えをなくした液体の肉体が石の上に落ちていく。
「いやあぁ!!ごめんなさいごめんなさい!殺さないでください猫又トコナ様!」
「いいよ、でもただで助けるなんて虫がいい話だよねぇ」
「知っていること全部話すのでお願いしまずー!!!」
「そっかー、まぁ約束破ったら蒸発...ずっと瓶詰めにして冷蔵庫に入れるからね♪」
砂を握って加熱、手の形をした瓶を作ってこいつを入れた。
「さて、尋問はミツルさんかお母さんに任せよう。それよりも」
レイサが来ない、いくら私がレイサの三倍に近い速度で飛んだとはいえ遅すぎる。
それにさっきから屋上にいる子が双眼鏡で私を見ている。
屋上の子に目線を向ける、あっ逃げた。
けど顔は覚えた、一応容疑者として頭に入れておく。
(トコナ先輩、応答してください)
突如メノンちゃんから『共有』が届いた。
(いえ〜い、メノンちゃんどうしたの?)
(私は今レイサ先輩に誘拐されて学校にいます)
(流石だねレイサ、やっぱり捜査と言ったらメノンちゃんだもんね)
(どやどや!ガチ有能ムーブかましたのでは!)
(誘拐してきたことを反省してほしいとこですが、私を呼んで正解でしたね。先輩、一度衣装室に来てください)
(オケ丸!)
(ちょっ!どこいくんですか先ぱ...レイサ先輩ー!!)
「いいよね、たまにはこうやって七輪をつつくのも」
「一人用を三人で囲う、粋だね」
「メノンちゃんや、豚肉を一気に置くと煙が凄いから止めてね」
「モエ、煙のない焼肉なんて...最高の焼肉だね。目痛いもん」
「そこは共感してくれるんだ」
「...メノン、後ろにいる人を無視しないであげたまえ」
「最近肩が凝るんだ...ですよねー」




