自由ちょうのめいろ
あなたにとって大切なものは何ですか?
ある人は命が大切と言いました、上を目指す事を諦めた人は。
ある人は友情が大切と言いました、挑戦から目を背けてきた人は。
ある人は空気が大切と言いました、再び武器を取れなかった人は。
私の両親はお金が大切と言いました、私達を残して消えた二人はそう言っていました。
私は馬鹿だから分かりません、一番大切なものが何か。
命も友達も健康も、お金も強さも権力も全部欲しいから決められません。けれどそうだ、大切な物、いや者がいました。7歳になる弟のキューブと4歳の妹のアルです。だとしたら、私が場合一番大切なのは家族なのかもしれません。
けれど幸せは歩いて来ません。自分の手で掴み取るしかないんです。
両親はいなくなったからお金は私で稼いで、二人を露頭に迷わせない様に...既に路頭に迷っていましたね! 全くどうしましょうか? 生活保護や孤児院などは使えません。あの事件からまだ4年、みんな自分のことで精一杯です。
でも知っています! お父さんがこれをして大人からお金をもらってたのを。
「何のつもりだガキ」
「お金ください!」
床に座って頭を地面に付けてお願いをする、お父さんはこうやって大人からお金を貰ってました。
「幼女趣味はねぇんだわ、帰れ」
...痛いです、たくさん蹴られたり踏まれたりしました。
けれど諦めません、痛いけど頑張ります。
次はあの緑の屋根のお店に行きましょう、緑は目に優しい色です。きっと店主さんも優しい人に違いありません!
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「そうか、お前の魔法...いいぜ、テメェを雇ってやる!死んでも働け!」
「あ、ありがとう...ござい、ます!」
頼み続けて2日間、遂に雇って頂けました。何も食べずお願いを続けた甲斐がありました。やはり継続は力です。
店主の名前はジュドー様、宝石加工のお仕事をされています。
ジュドー様は私だけでなく、弟と妹に部屋を与えてくださいました。
騒がしくしたり邪魔したら殺す、それだけが条件でした。
そしてお仕事が始まりました。
毎日紅玉を小型魔力保管庫という道具にするための加工をしました。
何でも需要が安定しているから稼ぎやすいとの事です、難しいですね。
お願いをしていた時に使える様になった固有魔法『現像』を使い宝石を成形。
ジュドー様の身の回りの世話、工房の整理整頓、宝石や部品の配達。
忙しいですけど、泥棒やお願いをしていた頃よりはずっと楽しい生活でした。
「なぁモエ、俺を様付けで呼ぶな。次言ったら殺すからな」
「分かりましたジュドー様!.....あっ」
「そんな泣きそうな顔になるな!殺さねぇから!けど様付けはやめてくれ」
本当に楽しい生活です、まだお母さんとお父さんの仲が良かった頃を思い出します。
いなくなった二人の代わりに、私がキューブとアルを幸せにしてみせるから。だから天国から見守っていてください。
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「姉ちゃんさ、辛くねぇのか?」
「ん、何が?」
ジュドーさんに拾われて三年後の夏、キューブからそんな事を言われた。
「姉ちゃんは13歳じゃんか、中学校に入れる年齢でしょ」
「私は馬鹿だからな〜入っても意味ないよ」
「けれど、友達を作るとかさ」
友達、仲良く話したりする人。
キューブとアル、ジュドーさん、仕事を通して仲良くなった職人さん。
青い髪の子、あとお医者さんの先生もいる!
「同年代の奴は?」
「......」
職人さんの高齢化は社会問題でさ、仕方ないよねぇ。
うわ、キューブの顔が凄く怖い!三白眼の圧っぅ!
「俺は唯一、姉ちゃんのそれが大っ嫌いだ」
「...えっ?」
「自分を殺して、何のために生きてるのかも分からないような人生。その原因が目の前にいるっていうのに、どうしていつも、そんなニヤついた顔できるんだよ!」
「原因...?」
原因...?友達が出来ない原因...私が悪いってことなのかな?
「違うだろ...違うんだよっ...」
「あぁ、泣かないでキューブ」
まずい、私のせいでキューブを泣かせてしまった。
急いでキューブの横に座って背中を撫でる。
「ごめんね、不甲斐ないお姉ちゃんでさ」
「...謝るのは俺だ、急に変な事を言ってごめんな」
キューブは俯いたまま立ち上がりどこかに出かけてしまった。私はその背中を、黙って見る事しか出来なかった、許されなかった。
馬鹿な私には分からない...
「違う!私はいつもいつもそうやって、自分を馬鹿のままにして諦めて!」
いつからだっけ、こんな諦め癖がついたのは
(ランドセルなんて要らないわよね)
分からない
(あぁ誕生日、いつだっけね?)
分からない
(お母さんとお父さん、どっちが好きなの?)
分からない
(モエはどっちに着いて来たいの?)
分からない、馬鹿だから分からない。
(お姉ちゃん!いちごのジャムパンと小豆パンどっちがいい?)
(私はどちらでもいいです、好きな方を食べてください)
何も分からない私は、いつもみたいにそう言った。
(...ねぇ、お姉ちゃんてさ)
いつもどっちでもいいって言うよね
銃弾の避け方講座 先生:猫又トコナ 泡沫レイサ
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