メノンちゃんは知っている
状況を整理しよう。
『ヴァストスアルマ国立総合学園』ヴァストスの中で最も頭のいい学院。
全てに置いて高い能力が求められ、入学の難易度はとても高いらしい。僕は頭が良くないからそんなところ入れないと思ったが、お母さんのコネ?を使って入学できた。
何はともあれ無事入学できた僕はみんなと同じ学校に通えるとウキウキだった。
しかしお姉ちゃんとレイサさんは2年生。それでもメノンちゃんは僕と同じ一年生らしく安心したのも束の松。
アルマ学園は3つの32人クラス、僕はCクラスでメノンちゃんはAクラス。運命は僕らを残酷に引き裂いたのだった。
それに僕の対人経験はお姉ちゃんの家族とその友達、ミツルさん、そして商店街の優しいおじさんおばさんだけなんだ。
つまり! 友達の作り方とかわかんない。うわーん助けてミラ〜!
ていうかなんかおかしいんだよ!みんな僕のことを横目で見てコソコソ話してるくせして僕が見ると目を逸らしちゃうんだから。失礼しちゃうよ、プンプン。
...うう、一番前の席だから黒板しか見えないし。
もう!勇気を出すんだ僕、自分から声かけに行くぞ。僕の英雄譚はこんなところで終わらない!いざ、尋常に勝負!
「おはよう! そして初めまして、あなたが猫又エマちゃんかな?」
僕が勢いよく椅子から立ち上がろうとした瞬間、後ろから声をかけられた。少し浮いた腰を元に戻す、恥ずかしい。
後ろを振り向くと二人の女の子がいて、僕の机に肘を置いてリラックスし始めた。
一人は桃色で赤い目の子、頭に白い花飾りをつけている。優しそうだけど目が少しだけ怖いのはたぶん気のせい。
もう一人は白髪青眼の子だ、頭の後ろに大きな蝶々型のリボンをつけている。あとアホ毛がくるくる動いていてかわいい。
「う、うん僕の名前は猫又エマだけど…」
「おーそなたが我らの新しい友人か、歓迎するぞー」
「えっ!友達になってくれるの!? やった〜!」
「超高速理解したね、気に入った。私のアホ毛を触らせしんぜよー」
アホ毛がぐるんぐるん動く。この子は髪を動かす魔法なのかな。
触ってみるとひんやりしていて髪の毛のような、スライムのような癖になる感触がある。
「私の一族には自分のアホ毛を触った相手と生涯を共にするっていう掟があるんだよ」
「そうなの!? でもわかった。一生懸命君を支えるよ、友達として!」
「すごい笑顔でフラれたーしくしく」
すごい、もう二人も友達ができた。僕には友達を作る才能があるかもしれない。さっすが僕、これが英雄になる人間の風格ってやつなのかな。
「まだ私たちの名前は知らないよね?私の名前は柑橘モエ。特に人に自慢できることはないけど、これからよろしくね」
「そーして、私は東雲スイミだーよろしくー」
「あとあと、Aクラスにも大切な友達がいるからいつか紹介させてちょ」
「ちょー」
どんどん友達が増える。友達の作り方はわからなかったけど、友達はできたからいいよね。もしかして僕のことをチラチラ見ていた人達はみんな僕と友達になりたかったのかな。友達作りを学んだ今の僕にはそれがわかる。
「そろそろ定刻だ、席にもどれー」
「ぐぬー、アイドルの握手会だ。あっ、また後でねエマちゃん。なんなら放課後遊び行こうよ」
「本当!?もちろん行きたいな!」
「しゃー!推しの持ち帰りもがもが」
「さらばー」
スイミちゃんに後ろから制服を引っ張られて退場するモエちゃん。
ちなみにこの学校は制服と私服の選択制なんだよ。
僕は制服を選択した。理由はお姉ちゃんに半強制的に決められた。
まぁ、制服もカッコ可愛いし着る服に悩まないからいいんだけど。
そんなどうでもいい事を考えて時間を潰していると、教室に誰か入ってきた。
第一印象はなんだか声が大きくて、元気な人だと思った。
その人が大きい机の所までゴツゴツと歩いて、これからの事を話し始める。
のを僕は7割聞き流しながら聞く。と急に話に僕の名前が出てきた。びっくり。
「それと猫又エマ!猫又フィールカ団長の娘だからと言って特別扱いはしない、いやお前はコネ入学してきたんだからな、他の者より厳しくするが構わないなっ!」
「はい!」
「ふん!気丈に振る舞いおって」
その後連絡を終えた先生は教室を出て行った、初日は授業もなくこのまま放課後とのこと。なんだか目線がきつい人だったなぁ。
そのまま自分の席で初めての学校を思い返しているとさっき二人が近づいてくる。
「エマ、一緒に遊び行こ!」
「今日はスイーツを食べに行こー、私はさくらんぼのパンナコッタを出す店が気になるー」
「スイーツ好きだよねスイミ」
「パンナコッタ...初めて聞いた、行きたい行きたい!」
「あっでも先にカイリに挨拶しようか、エマ」
「わかった!」
僕たちは別クラスの友達、古堂カイリさんに会うために学校のいろんな場所を散策した。だが見つけることができずカイリさんと会うことはお見送りになった。
そうして僕たちはスイーツを食べに街に繰り出す。
途中スイミが迷子になる事件が発生したけど無事、さくさくパンダのパンナコッタのお店に着いた。
初めて食べたパンナコッタはすっごく美味しくて、でもそれだけじゃなくて心まで満たされて、とても楽しかった。
「あっ、そうだエマ。私の作った宝石はどうだった?何か直して欲しいとこある?」
「ん、宝石って?」
「あれ、メノンちゃんから貰ってないの?」
もしかして、短剣につけてた宝石を作ってくれたメノンちゃんの友達ってモエのこと!?
驚きながら保管庫を確認する。
たい焼きグレネード、お団子の串、チョコの包み紙、vector smg、スマホの充電コードと絡まった鎖。あったサファイアと...ない!
アメジストの短剣壊しちゃったんだったーっ!!!
「すごくころころひょーじょー変わるねー、ルービックキューブか!」
「スイミ...?じゃなくて、もしかしてなくしちゃった?」
「違うんだよ...別に落としちゃったとかじゃなくて、その森の中で変態に襲われた時に壊されちゃって...」
ヒッ...モエとスイミの目が鋭くなった。どうしようせっかく友達になれたのに嫌われちゃったかもしれない。
「あの二人とも、無くした宝石は弁償...」
「エマ、体は大丈夫なのか?」
「えっ?体はなんともないけど」
「よかった、エマ、今度何か辛いことがあったら私たちを頼りたまえ。君の友人として快く力を貸そう」
「私も私も!宝石も気にしないで、知り合いの職人さん達を頼ってもっといいものプレゼントするから!」
「あっありがとう...?」
よくわからないけど怒ってないのかな、これからも二人は友達でいてくれるらしい。こんな楽しい時間が一日限りにならなくてよかった。
ていうか知り合いの職人ってなんだろ?
「ねぇ、あの宝石ってモエが作ったの?」
「そうだよ、私は装飾品の作成を仕事にしてるの」
「モエ学生なのに会社で働いているの!?」
「そのとおり、自分で会社を作ってね」
速報、モエさんすごい人だった。
すごいな〜僕が学生の頃は.......僕学生だった!
「持分会社宝石加工コーセキー、社員2名。もちろんもう一人は私だ〜」
「お前だったのか」
「「暇を持て余した神々の遊び」」
「???」
「16歳のうら若き少女に通じるわけないだろモエ、君は馬鹿なのかい」
「なんで私だけ!?一緒にやってたよね」
「私は経理を担当している、モエはこの通りバカだからお金の計算ができなくてね」
「話を逸ら、逸らそう。そして私は魔法を使って加工するの、こういうふうに」
バナナシェイクがなくなっちゃった。さてモエの魔法はなんだろ。
モエが保管庫からガラスの球を取り出す。
それにモエが触るとあら不思議、淡いピンクの光を放ちながらガラスの形がどんどん姿を変えていく。
白い点がたくさん増えて何かの形を作る。
数秒後、だんだん形が鮮明になっていく。
「すごい!ガラスの中にドラゴンがいる、まるで生きているみたい!」
「ガラスの中に立体の柄を作る、それがモエの魔法だー」
「違うから、私の魔法は『現像』頭でイメージしたものを現実に持ってくる魔法だよ」
「へ〜すごい面白い魔法だね」
「うん、これで家族を食べさせれる。神様には感謝してるよ」
「モエが?お母さんとお父さんは?」
「…死んじゃってね。11年前のもがもが..スイミ?」
「今日はもう随分と長く話した、そろそろ帰ろうか。エマも初めての学校で疲れただろう。なに、明日から毎日会えるんだ、お別れじゃないよ」
そのスイミの言葉を皮切りに私たちはそれぞれ帰路についた。
...とても楽しかった、愛に溢れた、幸せな一日だった。
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相変わらず埃っぽい、よくこんなところにいられるものだ。所詮は下劣な生物だ。
長い長い階段を降りる。なんとも憂鬱、煙草を吸いながら自転車に乗っている人間の煙に撒かれた時のように気分が悪い。
そして怒りが収まらない、何度あいつの顔を切り刻んで、そこから引きずり堕としたいと思ったことか。そもそも私は人の下にあるというのが嫌いだ、私のことを支配するのも殺すのも私だけのはずなんだ。
...全てはイノリのため、心を消して挑もう。
無駄に飾り付けた扉を足で蹴って開ける。
「何度そうやって開けるなと言いましたっけ」
「お前の戯言を覚えるくらいなら、蟻の巣に何匹蟻がいるのか数える方が有意義だ」
「全く、相変わらず釣れないですね」
嫌われている人間は嫌われていると気付けないというやつか、それとも対人経験が少ないのか。
「それではあの子について聞かせてください、あとあの女の状況も」
「猫又エマは特段と変わった点はない。日々の猫又トコナ、泡沫レイサとの訓練で実力をつけてはいるが大したことはないと考えます」
「感想ではなく事実のみを言いなさい、戦時でしたら顔二発ですね、ふふっ」
死ね
「沙根金ミツルも変わらず強いです。試しに三大隊の残滓を襲わせましたが一掃、映像はディスクにしておきました。」
「boundaryXは〜?」
「チッ、シュシュという新メンバーが加入しました。魔法は『集中』、沙根金ミツルと似た魔法です」
報告も終わりとっとと帰ろうとすると扉が開いた。
でかいだけの馬鹿ゴリラ、気持ち悪いキメラの完成だ。
「ふん、偏屈奸悪ネズミが何の用だ」
安い挑発には乗らない。
通りすがりに引っ掛けてきた足を蹴る。
『時短』お返しに梅干しの種を服の中に入れる。
「神、ルシラワの盾を汚染してきました」
「流石だサーキュレイター、あの子と違って貴様は有能だな」
「お褒めに頂き夢見心地でございます」
きも、死ねクズども、私は扉を閉めた。
でも世界のためと言い訳して協力する私も、クズの一人だ。
「モエ、さくらんぼの木に生える、持ち帰っても育てられない。そしてエマ、種を食べちゃダメだ、ぺっしなさい」
「「そうなんだ〜」」
「私がツッコミになるのか...?




