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呪いの腕  作者:
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呪い

 午後、春人は住職に呼び出され、ついに呪いの正体について聞かされることになった。


 春人を蝕む呪いは、未だその全貌を現していない。どうやらそれは、古くから日本の地で封印を守り続けてきた一族が途絶えたことで、その結界が破られ、現世に顕現したものらしい。最近、全国各地で原因不明の事故や事件が頻発しているが、警察は表向きには沈黙を守りつつ、裏では研究者や僧侶を集め、その原因究明に躍起になっているという。住職もまた、その極秘調査チームの一員として召集されていた。


 春人の呪いは、その中でも類を見ないほど強力だと住職は告げた。通常の人間であれば、この呪いを受ければ一日と持たずに命を落とすだろう。しかし、春人の祖父である太郎が、彼が眠る傍らで強力な回復魔法を施し、奇跡的にその命を繋ぎとめていたのだ。太郎はかつて、この寺で住職と共に若い日々を修行に費やした旧知の仲だったという。彼がこの世を去る前に住職へ託した手紙には、春人の未来を案じる切実な願いが綴られていたそうだ。


 住職は、今後、こうした奇妙な事件がさらに増加していくだろうと、静かに、そして重々しく告げた。その言葉には、未来への不穏な予感が込められているかのようだった。


 黒田一平と千田さきについて。

 住職から、黒田一平と千田さきのことも聞かされた。


 黒田一平は、幼い頃から強力な呪いの影響を受け、精神が不安定になり、やがて引きこもりとなっていた。彼の祖母が藁をも掴む思いでこの寺の存在を知り、住職に懇願したことで、一平は除霊の儀を受け、ようやく精神の安定を取り戻したという。しかし、彼にかけられた呪いはあまりにも強力なため、大人になるまではこの寺で暮らし、生活を送る必要があるとのことだ。寺は、一平にとって呪いから身を守る聖域であり、同時に彼が社会と隔絶された場所でもある。彼の未来は、この寺での生活に大きく左右されるだろう。


 一方、千田さきは、原因不明の病に倒れた父親の治療費を捻出するため、この寺へと辿り着いた。インターネットで「後継者になれば多額の金銭が得られる」という情報を知り、父親を救うため、迷わずこの寺を訪れたのだ。しかし、住職はさきと対話する中で、彼女の人間性に深く感銘を受け、後継者となるかどうかに関わらず、父親の入院費や彼女の生活費を支援することを決断したという。


 千田さきは、絵の才能に恵まれ、その作品は生計を立てられるほど売れているらしい。住職が彼女の絵を見てすぐに気づいたのだ。彼女の絵には、父親への愛情や、逆境の中でも前向きに生きようとする彼女自身の強い意志が込められているのかもしれない。さらに驚くべきことに、彼女はわずかな手ほどきを受けただけで、除霊の力をも発揮するという。彼女の才能は、絵画に留まらず、この寺の異界との繋がりにおいても重要な役割を果たす可能性を秘めている。


 春人、一平、さき。異なる背景を持つ三人が、呪いをめぐる運命の糸に引き寄せられるように、この寺に集まった。彼らの行く末は、そして増え続ける奇妙な事件の真相は、一体どこにあるのだろうか。

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