第一話 過ち
僕達は人間だった。
こんなはずじゃなかった。
僕達はただ遊んでいただけだった。
僕を含めた六人で、いつも通り遊んでいた。
僕達は気づくことができなかった。だから間違えた。
そのままでよかったのに。
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あの日はとても暑かったんだ。
今年の春に地元の中学校に進学した僕達は夏休みに近所の川へ遊びに来ていた。
日も暮れてきてそろそろ帰る時間になった時、少し変わった人と出会った。その人は僕達に言った。
「君達、神になりたくないか?」
僕は困惑した。この人は一体何を言っているんだろうと、もちろん冗談だと思った。でもその割には目が笑っていなかった。
僕が困惑していると、僕達の中でリーダー的存在である山下太陽がその人に笑いながら答えた。
「なれるもんならなってみたいね。」
「そうか、ならばならせてやろう。」
「ハイハイ、お願いしまーす。
どうせ無理だろうけど。」
その瞬間あたりがまばゆい光につつまれた。
光がおさまり視界が開けると、少し変わった人はいなくなっていた。そのかわり思わず見惚れてしまうほどの美男美女達が目の前にいて、他の五人はいなくなっていた。
少しの間沈黙が続いたが、やがて赤髪の美男子が口を開いた。
「もしかして、お前らって………」
間違いなく太陽の声だった。
僕は驚いて聞いた。
「お前、太陽なのか?」
「う、うん」
「お前は誰?」
「え?」
「僕だよ!忘れちゃったの!」
「いや、僕だよって言われても俺にはお前は見たことない金髪のイケメンにしかみえないんだが……」
「ん?待てよその声、雷斗か?」
「そうだよ!って、ん?」
(どういうことだ?金髪のイケメン?僕は黒髪だし、お世辞にもかっこいいなんて言えない顔のはずだけど…)
自分の顔を触ってみると、明らかな違いがあった。
潰れていた鼻は高くなっていて、ニキビもない。
そもそも髪の色が違う。金髪だ。
言葉が出なかった。
唖然としていると、みんなが次々と口を開けた。
「え!どういうこと」
「お前、太陽!?こっちは雷斗!?」
「え、マジ」
「は、えー!!」
しばらくして、みんな落ち着いた頃、赤髪のイケメンもとい太陽が言った。
「えー状況を整理すると…
そこの金髪のイケメンが大空雷斗、茶髪のイケメンが森大地、緑髪の美女が山口花、青髪の美女が砂野渚、そして俺が山下太陽。」
「さっきの人の話的に神になったってことかな?」
大地がみんなに問いかけた。
誰も答えない。みんな暗い顔をしている、だが、そうとしか考えられない。
「……ということは」
「何かしらの特殊能力が使えるようになったんじゃないかな?」
「僕の予想では雷斗が雷で、太陽が炎、大地が土で、花が植物、僕が水かな。」
渚の話に笑いがおき、少し雰囲気が和んだ。
「ワンチャンあるかもな。」
「やってみようぜ!」
太陽の言葉に頷き、みんなふざけて手に力をこめる。
もちろん何も起きないと思っていた。
が、そんなことはなかった。渚が言った通りになった。
みんな目を丸くして驚いている。
「マジか…」
信じられない光景を前にしてしばらくみんな唖然としていた。しかし、まだ子供である僕たちは、事の重大さに気付けなかった。
ましてや、こんなことになるなんて思いもしなかった。