奏への誕生日プレゼント決め
短め2話で申し訳ないです。
6月下旬・昼休み──
体育祭が終わってしばらく経ち、夏至を越えて日が伸びた頃。じわりと汗ばむ気温に、扇子やうちわを手にする生徒が増え始めた季節。 1年3組の教室では、昼休みのざわめきがいつも通りに満ちていた。
蒼太は、教室の窓際でコンビニのおにぎりをかじりながら、ふと隣の席の奏に声をかける。
「そういえば奏って、誕生日いつなんだ?」
何の気なしに投げかけた言葉に、奏はきょとんとした顔をしたあと、やわらかく微笑む。
「……7月7日です。七夕の日、なんですよ」
「へぇ、七夕って、なんかいいな。覚えやすいし。……って、もうすぐじゃん、それ」
「はい……あと、何週間かしたら…」
蒼太は口にしかけたおにぎりを一瞬止めて、計算するように指を折る。
「……マジか。あと2週間で誕生日……」
本人の前ではそれ以上深く聞けず、蒼太はそのまま話題を変えたが、心の中では落ち着かなかった。
──プレゼント、どうしよう。 ──ていうか、なにあげれば喜ぶんだ……?
放課後・帰り道──
「なぁ、樹……ちょっと相談乗ってくれ」
いつもの帰り道。蒼太は村上樹に声をかけた。 後ろには少し距離をとって坂口雛もついてきている。
「ん? どした。珍しく真面目な顔じゃん」
「奏の誕生日、もうすぐなんだよ。7月7日……って、あと2週間くらいで」
「は? それ、もう目前じゃん! 今さら気づいたの?」
「知らなかったんだよ……てか、誕生日ってどうするもんなんだ? 何かあげた方がいいのか?」
「当たり前だろ。気になってる子の誕生日なら、何かしら渡さないと“普通のクラスメイト”のままだぞ」
その後ろから、雛がひょこっと顔を出す。
「蒼太、ちゃんと考えてるの偉いじゃん。……でも、奏ちゃんって物にこだわるタイプじゃなさそうだし、変に高いものより、ちゃんと“自分のために選んでくれた”ってわかるものの方が嬉しいんじゃないかな?」
「……なるほど。っていうか、そういうの全然わからない……」
「なら、実用的なものにする? 文房具とか、本とか」
「それっぽくなりすぎると“友達感”強くなりそうじゃね?」と樹。
「じゃあ、ちょっとしたお菓子と何かを組み合わせる感じは? 甘いもの、奏ちゃん好きだよ?」
蒼太は、ふたりの言葉にうなずきながら、小さく息を吐いた。
「うーん……どうしようかな。まだ時間あるけど、なんか焦る」
「いや、あと2週間だろ? 焦っとけ、むしろ」
「うんうん。そういうのって、準備し始めるとどんどん迷うしね」
「……だな。ありがとな、ふたりとも」
そう言って、蒼太は小さく笑った。 頭の片隅で、奏が「七夕の日が誕生日です」と微笑んでいた声が、ふわりと響いていた。
──彼女の笑顔が少しでも長く続くようなものを。 そんなふうに考える自分がいることに、蒼太は気づき始めていた。




