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異世界に住む、女の子を僕は好きになりました

魔王組の遠足 【 異世界に住む、女の子を僕は好きになりましたシリーズ】

作者: もち雪

魔王とその魔王に敗退し、青い鳥に変えられた元勇者(武者)は、両親が亡くなった少女フィーナとおもしろ、おかしく暮らしてましたが、月日の移り変わるのは早いもので、年頃の娘になったフィーナは元勇者の生まれた世界で恋をしました。

しかし恋人は、こちらの世界へ何者かに勇者として送り込まれてしまいました。

    ーーここまでが前提です。ーー

 暗闇の魔王城は日が昇ると、白銀狐の当主となるべくしつけられた娘が、全ての窓を開けてしまうので、今日も朝から眩しい。


 俺が城の中を飛び回ると、何人もの魔王の崇拝者が行き交う。


 これは、いい兆候だった。フィーナが、事務作業を完璧に行い、崇拝者達に仕事をちゃんと振り分けられているという事だ。


 あの娘。…………フィーナは、最近好きな男が出来たらしい。しかしそれは、ある日を境に一変した。


「で、今日は、お前がお膳立てしての逢い引き、いや、お前が居たから見合い? だっただろう。だが何故、あんなにフィーナは落ちこんでいるのだ? もしかして振られたか? ちょっと頑固で、結構、子どもぽいところが悪目立ちしたのか?」


「そうではない……。その若者は、フィーナとの結婚を許せば、小躍りしてお前の事も、お義父さんや小鳥のお義父さんと呼びだすほどのフィーナにべた惚れだ」


「俺は、まだ結婚もしてないのにか!?」


「お前にはそこが重要なのか……?、まぁ、そうだ結婚してないのにだ」


ーーやはり、魔王には幼かった弟や妹が、「結婚する事にしたから」という言葉や気持ちを、受け入れる側の気持ちはわからないらしい……。フィーナの時には、人生の先輩として魔王に、俺の背中を見せてやらないとなぁ……。


「だが、突然アポストロフィは現れ、フィーナの想い人をこちらの世界の人間界へと送りこんだ。後は……しばらくは向こうで修行するのだろう?」


「あぽすと??……それは誰だ? いきなり第三者を登場させるな!? ビックリするわ」


「彼は言わば月だ。しかも禍々しい方のな。月は、その存在で海を満ち引きさせ、人の生き死にも関わるが、多く者は月の美醜だけ見る。お前もその程度……彼が関わった程度の把握と、これ以上の詮索は絶対にしてはならない。と、だけわかっていれば良い」


「その男は、お前を苦しめる存在ではないのか?」


「我もこの歳になれば、世界をすべて知るのは、我の手に余るという事をもう知っている。そして嵐自体を防ぐより、最低限の備えをして、過ぎ去るのを待つ方が早いと知ったわ」


 そう言って魔王は笑った。


 というわけで、俺には後輩の勇者……いや、俺をもう勇者と言っていいのかわからないが……今はとりあえず、この世界への移転者の後輩。


 その後輩の異世界へ来てからフィーナは、落ち込んだり、ぼーっとしてやがった。


 しかしその気持ちもだいぶ回復しているのなら、可愛らしい鳥の俺の出番だろう。


 そのためには俺を引き立てる最良の場所を用意し、フィーナを元気づける事にした


 そのために俺はここへやって来た。


 俺は可愛いだけで十分ではあるが、準備に関して魔王に手伝って貰わなければ……。


「と、言うわけで、山へ行くか」


 それを聞き、玉座のひじ掛けに、肘を付き、頬を支えてるヤーグが3つの目で、俺を見る。


 「どうした? よしの……山へ帰るのか?」と、言いやがった。


「そんなわけあるか! フィーナが少し元気を取り戻しつつある、今。可愛いらしい小鳥の俺が、フィーナを元気付けるための、最高の舞台となる山へ行くぞって言ってるんだ」

 

 俺は、ヤーグによくわかる様に目の前に飛んで言ってやる。

 

「お前が行きたいだけだろう……だが、いいだろう、付いて来い」


「わかった」と、言って、立ち上がる魔王の肩に俺はとまった。


「お前は最近、鍛錬をおこたり過ぎていないか?」


「おまえは、シルエットを部下しておいてよく言うな!」

 魔王は、いきなり怯んで目を泳がせる。


「あやつにもいい所は、あってだな……、行くと所がないと言うし……」


 魔王は、行き場のない奴を集める趣味らしい、まぁ思い当たる節しかないがな。


「なに? こんな所で……、大きな声を出して、寝られないわ……」


 シルエットが、柱の横に立っていた。濃い紫の髪に、赤色の瞳、ウェーブのかかった髪で、まぁ色っぽい吸血鬼のねぇちゃんだ。


「すまん、寝ててくれじゃあな」


「怪しい……」唇に、人差し指を添わせるようにして「うんぅん」と甘い吐息のをもらす。


 そのまま髪を弄ぶ様にしながら、手首を斜め上に引き挙げる。


 手は大きく空を切る。(くう)に彼女の紫の髪と黒いマントが、広がりひるがえる。


 そしてそのまま、俺達の先頭をねぇちゃんは、肩で風を切り歩き出す。


「おい、待てどこへ行く気だ?!」


「フィーナの所よ、もちろん、そうでしょ?」


「ああ、そうだ」魔王は、馬鹿正直にしゃべりやがる。


「なんでねぇちゃんに、正直にしゃべる!?」


 ねぇちゃんの後を追いながら、俺は、魔王にしか聞こえない様に詰問した。


「お前はいつも、内密に行動しょうとするが……結局ばらしているのは、お前だぞ。それに……あやつはシルエットで、お前のねえちゃんではないぞ」


「だぁ――。おい!魔王!」


 俺は、魔王の耳を翼で抑え問いかける。すると、翼の先から痺れ出した。この攻撃はフィーナのものである。


――あの娘は、魔王を巻き込むとか考えないのか?! 自信過剰か、うかつ者なのか?


「おっと」


 魔王が肩から落ちる俺を掴む。


 すると、あっけなく痺れは切れた。たぶん一瞬だけ、しびれさせるだけの予定だったらしい。


「よしのさん何度、魔王様に無礼な口をきいては、いけませんと、言ったのか覚えてますか?」


 フィーナが、微笑むシルエットに肩に手を置かれ、その上に顔を少しもたれかかられながら立っている。


 フィーナの操る周りの黒いバラは、シルエットへ付かずく前に、枯れてしまうようだ。


「7回か?」俺がそう言うと、「覚えていませんがいっぱい言ってますよ」とフィーナが答えた。


「そうか、すまなかなったな……じゃ――山へ行くか!」


「なんで、そうなるんですか!?」


 フィーナは何故か怒りながら、そう言うと俺は、痺れて落ちた。


 目が、覚めると荷馬車の上で、急勾配を登って行ってようだった。


 寝起きは最悪だ……。ほろ付き荷馬車という暗がりに、目が慣れると…… フィーナが、少し照れながらシルエットにお菓子を「あーん」されていた。


「ささっ魔王様もあーん」と、魔王にもお菓子をあーんさせようとしているシルエット。


 この不埒な女から菓子をかっさらうべく、お菓子を猛烈につつく。


「うそっ凄く美味しい」


 俺は、とても旨い菓子に感動すらした。


「うむ、シルエットが言うには、この菓子は、あーんして食べると美味しいらしいのだ。素晴らしいなぁ……」


「そんなわけあるか! この純粋培養、魔王が!」


「むぅう」フィーナの周りにバラの蔦が広がるが、ヤーグそれを払いのける。


 フィーナは驚き顔を上げるが、魔王がフィーナの肩に手をやり、フィーナを制する。


「魔界では、何でもそう事を荒立てれば、敵を作るだけだぞ……相手を、調査し相手の弱みを掴む事も大事だ。それからでも遅くはあるまい」


――いい事言ってるのどうか、わかんね――?!


 そんな混乱の渦の中にいた俺に、美しい声が聞こえてきた。


「そろそろ着きますわ」


 シルエットは風を受け、風で髪が乱れぬ様にと、紫色の長い髪を抑える。しかし彼女の髪は美しくたなびいて美しい曲線を描く。美しい光景だ……。


――だが、最初の原因は、お前だからな? 涼しい顔をしているが!?


 目的地に着いた馬車から降りると、森の小道を通る……。

 小さな小川を越えて、遠くで鳴く鳥の声を聞く。他の仲間呼ぶように、楽しさ、嬉しさ、生命の喜びを伝える様に……。


 その声は近くまで、やって来て……やってき……俺、目がけ、爪を!?


 その刹那、呪いは解け人の姿になった俺は、その猛禽類の鳥をはたき落とすと、縦横無尽(じゅうおうむじん)に生えて来る、フィーナの蔓とシルエットの爪を避けなければならなかった。


「フィーナは、ともかくシルエット、お前は明らかに俺を狙ってたよなぁ?」


「何の事です? でも、わたくしに挑戦したければ受けますわ」


 ドーン!シルエットは、大見得をきって空に、こうもりの翼を広げ飛んでいる。


 ある日、寝てる俺の呪いを勝手に解除し、難癖をつけて攻撃を仕掛けて来たのを皮きりに、毎晩これだ。


『魔王城』は、戦いが推奨されているが、その輪から外れていたのに……おれは、人間なんだぞぉ、鳥だし300年はゆうに生きているが……。


「まぁ待て、弁当を食べてからでもいいではないか? お花見弁当だぞ」

 

 魔王が、そういうので俺も、シルエットも戦闘をやめ、我にかえる。


 森の中を進んで行くと、森の中に丸く光のさす空間と、可憐な花々の咲き乱れる花畑が広がっている。


 少し薄暗い森の中で、そこだけ美しい世界、蝶は花々の中を飛び回り、少し甘い香りが通り抜ける風と共に流れる。

 

 魔王の計らいで、少し花から浮いた空間に座る。


 花見弁当は、コックの自信作で、その中にフィーナの焼いた甘い卵焼きもあった。


「おぃふーぃ」シルエットが甘い卵焼きをほおばり、フィーナと魔王は、本当の親子の様に横にちょこんふたり並んで、食べ、時々話をする。


「魔王様、あーん」


 そしてシルエットの箸から、俺が食べる。


「よしのさん、あーん」


「フィーナ、それ普通の食べ方じゃねぇからな……どっちかと言うと、恋人にやる奴だから」


「そっ、そうなんですか? こっ恋人……」フィーナは顔を赤らめて、思いにふけっているし……。


 それを、見て魔王は、少し黄昏ているし……。ちっ、めんどくぇなぁ……。


「シルエット食後の運動で、木の上から落ちた方は負けの戦いするぞぉ!」


「知らないんですか? わたくし飛べるんですよ」


「それは、ハンデーだ!」


 そうして片ひざを、踏ん張って立とうとすると……魔王が「我も久しぶりに戦うか!」と、立ち上がる。


「魔王様、ごめんなさい……わたくし蹂躙するのは大好きですが、蹂躙されるのは嫌いなんです……」


「フィーナの為に来たのだから、主人はフィーナをもてなすべきじゃねぇか?」


 シルエットと俺の言葉に魔王は、あえなく座った。


 今、俺は鳥の様に空を飛んでいる(物理的な意味で)


 そして俺たちはいつまでも、飛んでいくのだ。(比喩的な意味で)


           終

 

見ていただきありがとうございます。


この話は、シリーズものなので、他の話しも良かったら読んで見てください。連載中の話には、あまり魔王は出ないですが……。では、またどこかで!

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