結婚初夜に失敗して、三年の日を待ち望んだ
結婚して後一ヶ月で三年。
私は夫、オーベンにばれないように少しずつ荷物を運び出しているところ。私の部屋には毎日着る数着の衣装が残されるのみになった。
三年の時が過ぎることをどれほど長い間待ったか解らない。
何度も危ないことがあった。
それをなんとか今日まで乗り切ってきた。
夫はまた新しい女性に夢中になっていて、ここ一週間は全く帰ってきていない。
一日をなんとか無事にと毎日祈りながら今日まで来た。
夫の両親には毎日「本当に役に立たない嫁だこと」と嫌味を言われ一部の使用人には鼻で笑われる。
鼻で笑う使用人はほぼと言っていいほど夫と楽しんだことのある人達だ。
その人達にもバレないように、わたくしは今日まで頑張ってきた。
廊下を歩いていると目の前から義母が歩いてきて「またまたオーベンは新しい女のところに行ってるのね?いつになったら孫が見れるのかしら?」
わたくしはただ謝罪すること以外は認められていない。
なにか言おうものなら何十倍にもなって、わたくしを苦しめようとする。
私は目を伏せて、義母に膝を折る。
「申し訳ありません」
義母は公爵家の娘だということを自慢にしているが、既にその公爵家は廃爵されている。
跡を継ぐ者がいなかったからではない。
陛下の不興を買って廃爵されたのだ。
義母の両親は陛下の両親の伯父だった。
本来なら王となるべき人だったはずが、酔っ払って裸で町中を走り回り「この国の次代の王である」と言って道の真ん中で女性を襲ったのである。
跡継ぎから外され、なんとか公爵家にしてもらったにも関わらず、公爵の失態はそれだけでは収まらず、数年に一度はお酒で人生の失敗を繰り返して、義母が嫁に出たと同時に廃爵されてしまったのだ。
そんな義母が「私は由緒正しき公爵家の娘です」と言っても、失笑しか買わないだろう。
義父は、夫と同じで女にだらしなく家に帰ってくるのは数ヶ月に一度あるかないかだ。
一度義父に襲われかけたことがあり、義母の所に逃げたために義父からも義母からも嫌われることになった。
嫌われてもそれで身の安全を買えるのなら安いものだ。
夫も、義父も、義母も一体誰がこの家の仕事をしていると思っているのだろうか?
使用人に給料を払っているのが誰か解っている使用人は私に逆らったりしない。
わたくしはこの家、侯爵家の資産をギリギリまで絞り上げている。伯爵家のほうがよほど良い生活をしているのではないだろうかと思う。
この後のために私の資金を稼ぐために、侯爵家のお金とわたくしのお金を分けて、侯爵家のお金は増やすこともなく、ほんの少しずつ減らしていった。
わたくしがいなくなったら、数ヶ月で破産するように。
だって夫に言われたんですもの。
「女のお前が何をしたって、損するに決まっているから余計なことはせず、入ってくるものだけでやりくりしろ」と。
だから、領地から入ってくるお金だけで予算を四人で分配して、私は私の資産だけを増やしてきた。
名義はわたくしの名前にして、全く別にしている。
私の旧姓で、小さな屋敷も買った。
そこへの荷物も運び終わった。
出て行く日に手ぶらで出ていけるように。
後十七日という頃になって夫が振られたのか、飽きたのか、帰ってきた。
こういう時は手当たり次第に手を付け始める。
それもわたくしの前で他の人と交わるのが好きだ。
そして気が向いたらわたくしに手を出そうとするのだ。
けれど今回は違うようだった。女の人を連れて帰ってきて、その女の人はお腹が膨らんでいた。
とうとう外で子供を作ってきたのか。
その相手は子爵家のご令嬢らしい。
「おめでとうございます」
わたくしが夫と義母に伝えると夫は嫌味を言われたように聞こえたようで、わたくしに傍にあった花瓶を投げつけてきた。
ああ、夫にとって不本意な妊娠だったのだろうか?
でも、我が子ができたなら大喜びすると思っていたんだけど、わたくしの勘違いだったかしら?
ご機嫌斜めなのはありがたくないなと思ったけれど、子爵令嬢の部屋を用意するように言われて「客室ですか?それとも夫婦の寝室をご用意しますか?」
そう聞いたら夫はそれは楽しそうに「夫婦の寝室を用意しろ」と言った。
「かしこまりました」
私を客室の一番出口に近い所に移動させて、子爵令嬢を夫婦の寝室へと案内した。
子爵令嬢はオドオドしていて常識のある子に見えた。
「またどうして夫のような人に・・・」
「私、本当に違うんです!!」
「違うとは?」
「ご主人の子供ではないんです!!」
「それは主人は知っているのですか?」
「・・・はい。当然知っています!!」
「わたくしの想像ですが、夫には子種がないのだと思います」
「えっ?」
「よほど上手に遊んでいるのなら別ですが、これだけ好き勝手に女性と遊んでいても子供を作った人はいないんですよ。だから多分子種がないんじゃないかと思っています」
「だから奥様ともお子様がいないのですか?」
「それは想像にお任せいたしますわ」
「こちらが妻の部屋です」右を指して「夫婦の寝室です。どのような話でこちらに滞在されるのか知りませんが、色々と覚悟されたほうがいいでしょう」
「覚悟って・・・?」
「私が教えるようなことではありませんし、追々解るでしょう」
夫は夫婦の寝室に子爵令嬢を入れたにも関わらず、子爵令嬢には手を出している様子はなく、メイド達に手を出して満足していると報告があった。
子爵令嬢はなぜか私に付いて回り、邪魔で仕方ない。
執務室で仕事していると「お茶にしませんか?」とやってくるし、私が居室とした客室にも「ご一緒に刺繍でもいたしませんか?」とやってくる。
私は一度話を聞くために時間を作ったけれどもじもじしているだけで、肝心な話は何もしなかった。
「話をする気になったら来てください。私は忙しくて貴女の相手はしていられません」
私はこの家が後数ヶ月で潰れるようにする為の確認作業に忙しいのだ。
私は不要な書類を全て一纏めにして、焚き火を始めた。
枯れ葉と一緒に燃えていく書類を眺めながら、お茶を飲むのはこの世の至福だった。
この屋敷も一年前から抵当に入っている。
執務室の片付けを完璧に終えた時、いよいよ明日が待ちに待った三年目になる。
私が部屋にいるとノックの音がして入室の許可を出すと、子爵家のお嬢さんだった。
「聞いてもらえますか?」
「どちらでも。私には興味がありませんが」
使用人がお茶を入れてくれ人払いがされる。
「信じていただけないかもしれませんが、私は本当にご主人とは関係は持っていないんです」
「そう。私にとってはどうでもいいことだわ」
子爵令嬢は目を一度伏せ、私に視線を合わせてきた。
「ご主人は奥様のことを愛していらっしゃるのだと思います」
「それは奇っ怪なことを聞きました」
「出だしで失敗したと聞いております」
そう、私達は出だしで失敗した。
緊張しすぎた夫は役に立たず「お前のせいだ」と言って振り回した手が私に当たって、その力があまりにも強かったためにわたくしはベッドから落とされ、運悪くナイトテーブルで腕をぶつけ、落ちるのを助けようとした夫が私の足をつかんだために足がねじれて骨折して、その場で昏倒した。
三ヶ月の治療が必要な大怪我になり、私はそれから二度と主寝室を訪れなかったし、夫から逃げ回っている。
それは、謝罪が一度もなかったことと、夫が私以外の女性に手を付け始めたからだった。
初夜がうまく行っていれば仲のいい夫婦になれたかもしれない。
でも、実際はうまく行かず夫婦仲は最悪。
「ご主人は奥様とやり直したいと苦しんでいらっしゃいます」
「それが、いろいろな女性に手を出して、妊娠した女性を連れ帰ることなのですか?とても、愉快なお話ですね」
紅茶に口をつけながら、吹き出しそうになってしまう。
「確かにご主人はやり方を間違っていらっしゃいますが、今度こそ奥様と失敗のない夜を過ごしたいと思っていらっしゃるのです」
「ああ、そのための女性との経験を積みかさねていらっしゃるんですね。面白い話だと思いますわ」
「解っていただけましたか?」
「馬鹿らしい。・・・本当にやり直したいと思っていたのなら、怪我させたことを謝罪してそこから始めるものでしょう?わたくしに何かを求めるのには時が経ちすぎました」
わたくしは少しぬるくなった紅茶を二口飲んで「で、あなたの話はそれだけですか?」
「私がこちらのお屋敷に厄介になっているのは、私の父が私の好きな人との結婚を認めてくれなくて、子供をおろせなくなるまでの時間稼ぎをしているだけなのです」
「そうですか。そのやり方で上手くいくといいですね。あなたのお相手はよく私の夫のような人間に自分の愛する人を預ける気になりますね。本当にその方に愛されているのですか?わたくしなら確認をとりますね」
怒りに滲んだ子爵令嬢が「どういう意味ですか?!」と私を睨みつけてきた。
「だってわたくしの夫の巷の噂、知っています?どんな女でも手を出すことで有名なんですよ。本当か嘘か知りませんが」
「だから何だと言うんですか?」
「わたくしなら自分の大事な人を夫のような人に預けたりしません。お父様は、そのあたりのことも調べてその相手とは駄目だと言ってらっしゃるんじゃないですか?」
わたくしは今度は紅茶を全て飲み干して「お話はこれまでですね。あなたは、あなたの状況を調べる必要があるんじゃないですか?わたくしの夫と夫婦の寝室に寝泊まりしていらっしゃるんですもの。夫に問いただすだけでも新しい事実が出てくるんじゃありませんか?」
青ざめた顔で子爵令嬢は私の部屋から出ていった。
それからは扉の向こうから騒がしい音や怒声等が色々聞こえてきましたが、三十分もすると静かになりました。
わたくしは明日辞める使用人達の退職届をまとめて執務室へと紐で括り執務机の上に置きました。
必要な書類全てが、綺麗に並べられた執務机というものは本当に美しいわ。思わずうっとりしました。
執務室から出ると子爵令嬢が屋敷から出ていく所に出くわしてしまいました。
「あなたの夫は本当に最低ね!!」
「ええ。知っているわ。自分のまずい状況が理解できたのかしら?」
子爵令嬢は唇をかみしめてドアを開けて大きな音を立てて閉めて出ていった。
わたくしが想像するに、付き合っていた男は私の夫と同類の男だったのだろう。
子供が出来たと言われて、慌てて夫に相談して両親に反対されているなら中絶させられたら困るからとか言って、夫に預けたのでしょう。
夫は女性と見れば誰にでも手を出す人だから、自分の子かどうかも怪しいと言って子爵令嬢を捨てるのでしょう。
さっさと中絶させればいいのに、子爵令嬢が認めなかったのでしょうね。
まぁ、わたくしの勝手な想像ですが。
ついに三年が経ちました。
わたくしは朝食が済むと「少し仕事があるので出かけてきます」と言って数枚の書類だけを持って出かけます。
わたくしが出ていくと同時に使用人たちも一人二人と屋敷からいなくなるでしょう。
そしてわたくしの小さな屋敷へと移動することでしょう。
わたくしは神父様に白い結婚の届け出を出し、その場で未通であることを認められ白い結婚であることが認められ、婚姻撤回が認められました。
婚姻撤回書を一通は夫へ送り、一通はわたくしが保管しなければなりません。
わたくしは自分が用意した小さな屋敷へ帰り着きました。
今日からはここが我が家です。
侯爵家から連れてきた使用人と、新たに雇った使用人に「おかえりなさいませ」と迎え入れられました。
わたくしは執務室へといき、執務机の椅子に腰掛け感嘆の声を上げました。
わたくしは侯爵家で仕立てていたドレスの用意をしてもらい、友人の屋敷の夜会へと今夜参加しなければなりません。
わたくしの両親と兄は、私が夫に怪我を負わされた時に急いで駆けつけようとして馬車が山肌を滑り落ちてしまい、三人とも亡くなってしまいました。
私は動かない体で担架で運ばれながら、葬儀に参列しました。
私が怪我しなければ死ぬことはなかったのです。
我が家の伯爵家は私が預かることになり、私の子供が出来ればその子供が継ぐことになるでしょう。
そのためにわたくしはこれから婚姻相手を探さなければなりません。
学園時代の友人達にオールドウェイ伯爵家の娘として招待されています。
領地は今までも私が面倒を見てきていました。
両親と暮らした屋敷に戻るには、まだ心の痛みが取り除けていなくて、帰れませんでした。
もう少し経てば帰る気になれる日が来るかもしれません。
数は減らしましたが、屋敷には元々いた使用人たちに任せています。
執事もそのままです。
今わたくしの背後に立っている執事は、オールドウェイ伯爵家の執事の孫のスールです。
夜会で元夫がわたくしを探していると聞かされました。
一体何の用があるというのでしょうか?
今宵も夜会を楽しみながら結婚相手を物色しています。
学生時代に一つ上の先輩がいらっしゃいました。
挨拶をして当たり障りのない話をします。
婚姻撤回の場合も元夫と言っていいのか解りませんが、先輩にも「元夫が探していたよ」と言われてしまいました。
「白い結婚で婚姻解消した女に一体なんの用なのでしょうね?」
笑って受け流します。
「君、消息不明なんだって?」
「それは知りませんでした。どなたもわたくしが夜会に参加していると教える方はいないのかしら?」
「君の婚姻は酷いものだったからね、だから誰もが口をつぐんでいるんじゃないか?」
「皆様お優しいのですわね」
「優しいだけではないだろうけどね」
「フフッ。そうですね。まぁ、どうでもいいことです」
「君さえ良ければ私を婚約者候補にしてみないかい?」
「先輩の噂は色々聞いてますからね」
「若い時に遊ぶのと、婚約者が出来てからとは変わるものだよ」
「そうなのですか?なら、わたくしに一途だと信じられたら、婚約しましょうか?」
先輩はとろけるような笑顔で「喜んで」とわたくしをエスコートする権利を勝ち取りました。
それからの夜会は先輩にエスコートされて出席することが増えました。
ですが、良い夫を探すのはまだ止めていません。
先輩にはそのことは伝えてあります。
わたくしが結婚相手を探していると言っても、二の足を踏んでいることは解っているのでしょう。
先輩も無理に踏み込んではきません。
ある友人の夜会に参加しようとしたら入口で「今日は帰ったほうがいいよ」と知らない人に言われました。
「元夫が来ているから」
「まぁ、ありがとうございます」
わたくし達はその場から引き上げることにし「観劇に間に合うようならそちらに行ってみよう」と誘われ観劇へと向かいました。
ギリギリ間に合い席につくとすぐに始まりました。
内容はありがちな公爵家のゴタゴタを面白おかしく脚色したものでした。
休憩時間になりわたくしは花を摘みに行き、先輩は飲み物を買ってくださって待っていてくださっていました。
「先輩。お待たせいたしました」
飲み物を渡しながら「そろそろ先輩を卒業したいんだけど?」とわたくしにだけ聞こえるようにこっそりと言いました。
「我が伯爵家に婿入りする覚悟が決まったのですか?」
「初めて君に声を掛けた日から覚悟は決まっていたよ」
「大きく出ましたね」
「アウィストと呼んで欲しい」
目を見つめられそう言われても受け入れていいのか迷ってしまいます。
わたくしには両親も兄もいません。相談する相手がいないのです。
何もかも自分で決める怖さを今、強く感じています。
私が調べられる範囲では先輩のことは調べ尽くしました。
でもまだ、後一箇所だけ報告が上がってきていないのです。
先輩のことが好きなのだと思います。
結婚相手としても何の不足もありません。
でも婚姻解消した結婚の時も、夫のことが好きで結婚しました。
「先輩、わたくしは怖いわ。本当にあなたにすべてを預けていいのか判断がつかない」
先輩はわたくしの頬に口づけ笑顔を向けて「席に戻ろうか」と言ってくれた。
それから十日後、最後の調査書が届いた。
先輩の一生のすべてが載っている調査書になる。
王妃様が私のために徹底的に調べてくれたのだ。
わたくしはその書類に目を通して先輩の恥ずかしい過去から悲しい過去まで知ってしまいました。
先輩は今まで誰とも婚約してこなかったので、清廉潔白とはいかない。
それなりに遊んでいるし経験している。
はっきり言って私では物足りないのではないだろうかと思ってしまう。
それらを知った上で、わたくしは先輩に懸けてみようと決断した。
これで駄目なら私によほど男運がないんだわ。
先輩に次の夜会に一緒に行けるか尋ねる手紙を出して、同行が決まった。
少し早い時間に迎えに来てもらってお茶を一杯一緒に頂いた。
「わたくしと婚約していただけますか?」
「喜んで」
私の両親がサインする場所は陛下と王妃のサインだった。
それを見て先輩はとても驚いていた。
「王妃様とお母様が御学友なの」
「ああ、そう言われれば聞いたことがあるよ」
「アウィスト様のご両親に私が認められたらいいけれど・・・」
「大丈夫。既に許可は取ってあるから」
アウィスト様は自分のサインをして「すぐに両親の所に行こう」と言って、夜会ではなくアウィスト様の家へと急遽向かうことになった。
ご両親とご挨拶をして婚約届書にサインをくださった。
その足で届け出を出して、夜会もそろそろ終わるというころになって夜会へと参加した。
友人に「遅いじゃない!!」と言われ「ごめんなさい。ちょっと婚約していたもので・・・」と言うと一瞬黙って、それから笑って「おめでとう」と言ってもらった。
「でも本当のことを言うと遅くてよかったの」
「なにかあったの?」
「元ご主人がいたのよ。愚かにも未だにあなたを探していて本当に驚いたわ。私は今まで会ったことなかったのだけど人相が変わっていたわ」
「えっ?」
「目なんか落ち窪んでいて、痩せ細っていたわよ」
「あぁ・・・侯爵家の人達がちゃんと領地経営をしていなかったら侯爵家は潰れることになるころね」
「え?どういう事?」
「あの家で仕事をしていたのはわたくしだけだったから、もう誰も何をどうしていいのかも解らないのだと思うわ。余計なことはするなと言われたから、不味いなと思うことも何度もあったけど手を出せなかったのよ」
友人とアウィスト様は驚いた顔をして「侯爵家が潰れるのか?」と聞いてきた。
「あのまま手を入れず、放置していたなら間違いなく。今日、明日でもおかしくないと思うわ。わたくしの三年間と両親、兄の代償はしっかり払ってもらわなくては」
「君って人は・・・素晴らしいね」
友人に奥へと連れて行かれ全員の注目を集めた上で、アウィスト様と私の婚約が成立したことが報告された。
驚くほどその噂は駆け巡り、元夫も知ることとなったようだ。
アウィスト様の所に元夫が訪ねたらしい。
私の無事を聞き、ホッとしたところで侯爵家をどうしたらいいのかをアウィスト様に聞き、わたくしに会わせろと言っていたらしい。
アウィスト様のご両親と、王妃様が結婚を急ぐように言い、ドレスの完成とともに結婚式を挙げることになった。
たくさんの友人達に祝われて素敵な結婚式を終え、わたくしはオールドウェイへと居を移すことになった。
お父様、お母様、お兄様。ただいま戻りました。
元夫が訪ねてくるかと思っていたけど、侯爵家を廃爵して一家離散したようだった。
わたくしは人払いをして一人になった時に声を上げて大笑いした。
笑いを止めることが出来なくて苦労するほどだった。
後はわたくしが幸せになってオールドウェイ伯爵家を盛り立てるだけ。