シーガラスと海星は見つかった
漁村の海辺にはいろいろな物が流れつく。ただのゴミや珍しくないものが多いけれど、ときどき宝物が混じっている。私は子供の頃、幼馴染と海辺を探索するのが大好きであった。……そう、小さな頃は探索が日課だった。
「見て! 見て! でっかいヒトデ!」
幼馴染のリンが、星形のヒトデを嬉しそうにつまんでいる。
リンのほうへ振りかえるときに、わたしは色あせた花火を踏んだ。
「これ手裏剣にするの好きだったわ~」
私のほうに向かって投げる素振りをする。嫌そうな私を見て満足したようで、別方向にヒトデを投げる。リンは都会に出て派手な格好をするようになったのに、やんちゃな所は変わっていないようだ。
私はずっと実家にいるが、大人になってヒトデが苦手になった。匂いや吸盤が生理的に受けつけない。それに、食べられないし。
「ヒトデなんて珍しくないのに。気分あがるの?」
「結構あがる。50点」
リンはさっきから、漂流物に点数をつけている。リン的に気分があがるものには高得点が叩き出される。青いシーガラスは100点。
「うそ。巻貝には40点って言ったよね」
「ヒトデのほうが上。海の星だもん!」
高い山、深い緑の海、潮風。
「あーあ。ボトルメールとか見つからないかなー」
「昔、一緒に投げたよね」
「潮の流れで戻ってきたよね……」
「投げなおしたやつは、返事なし」
潮風。古い瓦の日本家屋。
「中身入りは無理でも、いいガラス瓶は見つかったよ?」
「でかした。200点!」
足場の悪い海岸で、楽しそうに笑う幼馴染。
この日もボトルメールなんて見つからなかったけれど、ぜんぜん悪くない。
リンには内緒だけれど、私はとてもいい気分だった。
「お、ナマコ」
「嘘? 私、モリ取ってくる!」
「ナマコ好きだよね……ヒトデ、苦手なくせに」
(終)