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異世界転生した男、ほのぼの人生計画に夢を見る  作者: 黒月一
【第二章】魔法学校編
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【第二十話】問詰

「で? どういうことなんですか? 先生」


 ロントくんが怒気混じりの声でそう言い放つ。

 リハード先生は下手な口笛を吹いて場を凌ごうとした。


 ちょっと脅してみようかな。


 僕はダンッ! と大きな音が出るように足踏みをする。右手には杖を持ちながら先生の方へ向けるだけで、評価ポイントはあがる。


「いや、あの、違うんだ。私のせいじゃない、いや私のせいも入っているだろうが、違うんだ」


 先生は必死に言い逃れようとしている。


「違うって……何がですかぁ?」


 ハーミルくんが純粋な笑顔を作ってそう言った。

 しかし、状況が状況だからか、ハーミルくんの笑顔がとても怖いものに見える。

 笑顔で怒る人が僕は一番苦手だ。ハーミルくんはできるだけ怒らせないようにしよう……。


「ああいや!? 何も違くない……違くないから許して……」


 リハード先生もハーミルくんの笑顔を見て怖気づき、言い訳は無駄だと判断したのか、僕たちに許しを請うようになった。


「そうだ! 片付けを手伝ってあげよう! いくらでも掃除用具ならある!」


 まるで悪者貴族が自分だけ助かろうとするシチュエーションみたいだな……。


「ちょっ、先生が何をしたっていうの!?」


 ルラーシアちゃんが僕たちと先生の間に入ってそう言う。

 

「ウワン、ルラーシアチャン、コワイヨー」


 先生はバレバレの棒読みでそう言った。

 しかし、ルラーシアちゃんは先生の棒読みに気づかずに、勇ましい顔をして僕たちの目の前に立ちはだかっている。

 

 あれ? 僕たちが悪者みたいに思えてきたぞ……?


 一方、状況がよく分かっていないフィモラーちゃんは、僕たちの方に付くか、ルラーシアちゃんの方に付こうかと迷って、あわあわしている。


 君はそのままでいてほしいな。


「一度僕たちの寮の内装を見てみるといいさ! その光景をしかと目に焼き付ければ、嫌でも僕たちのほうが正しいと分かるよ!」


 ロントくんは熱くなってそう言う。

 相当あの寮が堪えたんだなと思えるほどにロントくんは感情的で、目には涙が浮かんでいた。


「それとこれとは別でしょ!? 先生は何もしていないんじゃないの!?」


「何もしてないから問題なんだ!」


 半ばロントくんとルラーシアちゃんの喧嘩になっている所で、リハード先生がごほん、と咳払いをした。

 何をする気だ……。


「こらこら君たち、喧嘩はいけないよ」


 リハード先生は、ルラーシアちゃんとロントくんの狭い隙間の間に入って、そう言った。

 やりやがった。


「…………」

「…………」


 喧嘩をしていた二人の間に静寂の空気が流れた。

 二人は顔を見合わせ、ほぼ同じタイミングで先生の顔の方へと視線を移す。


「……あれ? 敵が増えちゃった?」


 先生が遅くもそう勘づいた瞬間、ルラーシアちゃんとロント君が同時に口を開き、叫んだ。


「「誰のせいだと思ってるんですか!!」」


 その後、見事にルラーシアちゃんがこちらに寝返り、それを見たフィモラーちゃんもこちらに付くことになり、リハード先生はこっぴどく叱られた。


 あなたは生徒の住む部屋も管理してください! だの、もうちょっと空気を読むことはできないんですか! だの、色々と言われていた。



 一通りの説教が済んだ後、今日はこれから習う魔法の授業の内容についてや、学校内の探索で今日の魔法学校の授業は幕を閉じた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 僕たちは動物のように先生を縄でくくり、クラス全員で男子寮に来ていた。


「これは酷い……」


 ルラーシアちゃんが、荒んだ状況の寮内を見てそう言った。

 フィモラーちゃんが隣で信じられない……と言いたげな表情をしている。


「な? 言っただろ?」


 ロント君がルラーシアちゃんにそう言った。

 ルラーシアちゃんは静かに頷き、部屋内を歩き始める。


「なんて乱暴な言葉を……。あっ、カーテンが……」


 ルラーシアちゃんは部屋の内装を見ては、そのあまりの凄惨さに驚愕している。

 まるでこの世のものじゃないみたい……と彼女は漏らし、ロント君が、だろ? と言う。

 

 雨降れば地固まる。喧嘩をした二人は前よりも仲良くなっていると僕は思った。


「これでも少しは片付けたほうなんだ」


 ロントくんがそう言うと、ルラーシアちゃんは「嘘!?」と口を抑えて叫んだ。


「昨日は三人で一日中寮を掃除してたよ」


 ハーミルくんがそう言うと、「だから昨日は食堂に来てなかったのね……」とルラーシアちゃんが漏らした。


 ん?

 食堂?

 そんなの誰からも聞かされて無かったが。


「先生?」


 僕は後ろにいるはずの先生に向かってそう言っても、反応がない。

 僕は後ろを勢いよく振り返る。


 そこには、先生にくくっていた縄が落ちている地面に落ちている光景しか見えなかった。

 

「逃げたぞ! 追えぃ!」


 僕がそう叫んだ瞬間、フィモラーちゃん以外の人間が、リハード先生が逃げたであろう方向へ走り始める。


「ちょっと待ってよー! みんなぁー!」


 後ろからフィモラーちゃんの声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。

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